校長室より

(校長室より)  「校歌」(3/16)

 先日、今後のことを考えるために、自分の過去を振り返ってみました。その際に思い出した校歌を3つ紹介します。

 

A赤城が見える大空に、ひとすじの光、わたらせ川

ああ、明日をつくる正しい教え

ここは館林一小、みんなの学校

 

B赤城の山は堂々と、夕日に萌ゆるそらにたち

坂東太郎はそうそうの、響きをあげて地を走る

かかる処よわれどちが あれにし郷の館林

 

C緑さやかに山並み添えて、いらかつらねし学びの園に

高鳴る意気の若人こぞる これぞわれらが誉れの母校

 

Aは館林市立第一小学校、Bは館林市立第一中学校、Cは栃木県立足利高等学校の校歌です。これらは私の出身校で、校歌は全て歌うことができました。

 

 今年度は、始業式、終業式、卒業式等で、生徒による校歌斉唱ができていません。本校の校歌は、本当に素晴らしいものです。コロナウィルス感染が終息したら、大きな声で歌ってほしいと思います。

(校長室より)  「卒業式、ライブ配信」(3/3)

 3月1日、本校の卒業証書授与式が開催されました。例年、1、2年生及び3年生の保護者、来賓を招き、盛大に挙行される卒業式ですが、昨年度に続いて今年度もコロナウィルス感染の影響を受け、2年続けて在校生の出席を見送ることとしました。なんとか在校生に卒業式の様子をみせることができないか、と検討した結果、動画投稿サイト「YouTube」でライブ配信を実施することとしました。前半に音声の不調があり、音が聞こえない部分がありましたが、後半は、卒業生の声や送辞、答辞、生徒の表情などを4台のカメラで配信することができました。現在もその動画は、アーカイブにて、在校生、卒業生及び保護者は見ることができます。

 

ここに校長式辞の一部を紹介します。

 

 「常に挑戦し続けることは、たしかに難しい。しかし、自分と戦うことから逃げなければ、それによってきっと道はひらける。人間にとって成功とはいったいなんだろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。」by岡本太郎

「人生の成功は、他人にどう思われるか、お金持ちになるかどうか、などということは関係ないことがわかります。人生の成功の基準は、自分がやりたいことに最後まで挑戦したか、ということです。ただ、本当につらく悲しいことが自分の人生に訪れた時、その時は周りの人に助けを求めてください。また周りの人が苦しんでいるときは手を差し伸べてください。誰もが自分の人生と戦っています。一人で戦うのが苦しくなったとき、時には助けてもらうことも必要です。」

 

卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。

(校長室より)  「本の著者が、学校を訪ねて授業」(2/18)

 本の著者が学校を訪ねて特別授業をする「オーサー・ビジット」(朝日新聞社主催、出版文化産業振興財団協力)が、2月13日付朝日新聞に紹介されています。今回は作家今村翔吾さんと、ジャーナリスト池上彰さんでした。

 今村さんは、新潟市立五十嵐中学校の図書委員35人と生徒会役員に授業をしました。今村さんは、「小説家には何歳でもなれる」と授業を始め、自分自身が、30歳までダンスインストラクターをしていた経験を話しました。実家が営むダンススクールの講師になり、子どもたちに「夢をあきらめるな」と説きながら、自分は全く小説を書かなかったそうです。教え子の一人に「先生だってあきらめてるくせに」と言われた翌日、講師を辞め、1日の大半を執筆に費やす生活を始めました。今村さんは「夢をかなえるのは難しい。でもあきらめなければ近づくことができる」と、生徒たちに話しました。

 

 教員は、「夢をあきらめるな」「挑戦することをおそれるな」「主体的に生きよ」「深く学べ」などと生徒に指導します。そのように話した時、教員自身が夢をもっているか、挑戦しているか、主体的に生きているか、深く学んでいるか、ということが問われるのです。指導する教員の姿を、指導される生徒は見ています。教員自身が深く学んでいるかどうかを、生徒は見ているのです。

 

 ジャーナリスト池上彰さんは、昨年12月、館林市立第二小学校の6年生に、疫病を追い払う妖怪アマビエのオブジェを見せ、「アマビエの言い伝えがあるように日本にも疫病で苦しんだ歴史がある。奈良の大仏も天然痘が流行した時、聖武天皇が仏教に救いを求め作らせた、とされています。」と授業を始めました。コロナウィルス感染の経験から、世界をどう見るべきか、どんな知識が必要かを考えながら勉強に取り組んで、と子どもたちに話しました。子どもたちは、何故勉強することが必要なのか、ということを池上さんの授業で学んだと思います。

(校長室より)  「はじめての人生、楽しまなくちゃ」(2/12)

 「人間、生きていれば誰でも、事故や病気にブチあたる可能性があります。日本にも近い将来、大きな直下型地震がやってくると言われていますね。明日かもしれないし、30年後かもしれません。しかし、実際はみんなほとんど気にせず生きているのだと思います。病気は突然やってきます。まさに、地震と一緒。しかし、毎日、死や病気への恐怖を感じながら生き続けるのでは、自分が何のために生きているのか、まったくわからなくなります。」

 「病気になったからといって、心の中まで病気に伏せる必要はないのです。己の心を元気にし、『幸せだ』と感じて生きられるようにするのは、医者の仕事でも周りの誰かでもなく、自分しかありません。」

 上記の言葉は、2月4日付朝日新聞に掲載された、つんく♂さんの言葉です。つんく♂さんは、6年前に喉頭がんで声帯を全摘出し、現在声を出すことはできません。そんなつんく♂さんが、坂本龍一さんと組んで、小児がんの子どもたちを音楽で元気づけるイベントのテーマ曲をつくりました。子どもたちが元気であれば、日本も元気になる、そんな思いで音楽を作ったそうです。その歌詞を紹介します。

 

感謝が湧き出てくる 君を見てると

笑顔があふれてくる 君に触れると

困らせていいよ 怒っていいよ 休んでいいよ 続けていいよ

出会えたことが 奇跡の奇跡

一度きりの人生だし 楽しまなくちゃ 欲張らなくちゃ

それでこそ

My Hero My Hero

See you tomorrow

 

 明日、何があるかわからない、だからこそ、子どもたちには、今という時をめいっぱい楽しんで生きてほしいと思います。

(校長室より)  「校長の仕事」(2/3)

 「誰もが、自分の人生と戦っている。誰もが、10代に様々な悩みを抱える。そんな時代を生きる高校生を応援する仕事につきたいと思います。」

というようなことを、30年以上も前、教員採用試験の面接で答えたと記憶しています。2月4日、高校3年生に授業をすることになり、なぜ私が高校教諭になったのか、ということを話そうと考えています。

 

 その授業では「校長」とは何をしているのか、という話も考えています。学校の教育目標を考える、校内の授業を見てまわる、式辞の内容を考える等々、たくさんの仕事がありますが、法律(学校教育法第37条4項)によれば、

「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」と定めてあります。

「校務をつかさどる」とは、学校教育の内容に関する事務、教職員の人事管理に関する事務、生徒の管理に関する事務、学校の施設・設備に関する事務など一切の事務を掌握し、処理(調整・管理・執行)する権限と責任を持つことです。学校が素晴らしい業績を残した時、それらは、生徒・職員の功績です。しかし、学校で大きな問題が起きた時は、校長がその責を負うことになります。

 

 教員の仕事は、「人(生徒)を育てる」ことです。そして校長の仕事のひとつに、「教員を育てる」ことがあります。あたりまえのことですが、一人前の教員になるためには時間と労力がかかります。まして若手の教員が「プロ」になるためには時間がかかります。教師の仕事は、他の職業にない感動ややりがいを感じられる素晴らしい職業であることを、生徒・職員に伝えたいと考えています。

(校長室より)  「ロナウドの言葉 胸に」(1/29)

 第99回全国高校サッカー選手権大会の決勝戦、山梨学院高校VS青森山田高校の試合をTV観戦しました。試合は2-2の同点で90分を終え、延長戦でも決着がつかず勝負はPK戦になりました。当初は青森山田が有利とされていましたが、必死の守りをみせた山梨学院が、PK戦を制し、第88回大会以来2度目の全国制覇を達成しました。

 上記タイトルは、山梨学院高校3年生のMF岩崎遼太君を取り上げた、1月27日付毎日新聞記事のタイトルです。

 岩崎君は小学校6年生の時、健康美容器具のPRの質問者に選ばれ、サッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウド選手に質問する機会を得ました。一生懸命練習した、たどたどしいポルトガル語で質問しましたが、緊張で言葉が震え周囲の人に笑われました。ロナウド選手は「なぜ笑うんだい、彼のポルトガル語は上手だよ」とかばってもらい、言葉をかけてくれたそうです。岩崎君は、その時の感謝を原動力に努力を重ね、いつかはプロの選手になり、ロナウド選手と同じピッチに立ちたいと考えています。

全国大会1回戦はベンチ入りの20名から外れましたが、2回戦の鹿島学園戦では終了間際に出場、3回戦の藤枝明誠戦で先発出場しましたが、後半7分に右足を打撲して交代、その後の試合ではベンチに入れませんでした。晴れ舞台の出場機会は限定的でしたが、長谷川監督は、彼をこのように賞賛しています。「非常にまじめで信頼が置ける。(中略)彼はチームにとって本当に必要。気が利くところがプレーにも出て計算ができる選手」

 

小6の時、彼のポルトガル語を笑った人たちに対して、真摯に対応したロナウド選手は一流の人だと思います。人の努力を笑ったり、人の夢を笑ったりする人は、自分のやりたいことや好きなことに挑戦することをあきらめている人たちかもしれません。岩崎君の夢はプロになることであり、まだまだ時間がかかるかもしれませんが、彼の挑戦を心から応援したいと思います。

(校長室より)  「紙の教科書、知の基本」(1/15)

 「GIGAスクール構想」が、本県でも進んでいます。GIGAスクール構想とは、「児童生徒向けの一人一台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想」です(Global and Innovation Gateway for All)。本校においても今月末には校内Wifi(無線LAN)の工事が予定されています。その後、全校生徒及び全職員へノートPCが配布される予定です。ICT教育が本格始動します。

 

1月12日付読売新聞に、上記タイトルのインタビュー記事が掲載されました。回答者は、テレビにも出演している明治大学教授 齋藤孝氏です。齋藤氏は、教科書のデジタル化に対して、デジタルだけでは学力低下を招く、と紙の教科書を廃止することに反対しています。

「紙の教科書の利点には、学習のしやすさがあります。(中略)紙をめくりながら本を読むことが脳への刺激になるという研究もあります。」「暗記や記憶を軽視する風潮があります。しかし、記憶が創造性を阻害するという考えは、まったく間違っています。たとえば、法則や原則を知らずに、物理を語ることはできません。教科書の内容くらいは、きちんと記憶しているべきなのです。」

「デジタルの利点は、情報の更新が速く、大量の情報を補充できることです。教科書では1行、2行しか書かれていない事柄でも、デジタルで情報を検索すれば、知識欲を膨らませていくことができます。情報収集のツールとして、授業でどんどん活用すべきです。」

 齋藤氏は、一人一台のパソコンやタブレット端末の配備に、全面的に賛成しています。ただし完全に身につけるべき知識は、紙の教科書で学び、派生的な情報はデジタルで調べればよい、と述べています。

 3月末には、全ての県立学校、小中学校で、一人一台端末の配備がほぼ完了する予定です。今後、生徒や職員がどのようにノートPCやタブレット端末を活用していくのか、今から楽しみにしています。

(校長室より)  「ふりかえり」と「挑戦」(1/7)

 新年、あけましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いいたします。

 昨年末2学期の終業式に、1年をふりかえることの重要性を、生徒のみなさんに話しました。1年間の自分の行動をふりかえることで、これから自分は何をしたいのか、これからどのように生きていくのか、そんなことを1年の終わりに考えてほしかったからです。

 

 そして本日、始業式を無事終えることができました。今年、みなさんは何に挑戦しますか? そして何に力を尽くすか、明確になりましたか?

今日の始業式では、芸術家・岡本太郎さんの話をしました。再度この言葉をみなさんに贈ります。

「挑戦した不成功者には再挑戦者としての新しい輝きが約束されるが、挑戦を避けてオリてしまったやつには新しい人生はない。ただただ成り行きにまかせてむなしい生涯を送るにちがいないだろう。」

 岡本太郎さんの言葉から学べることは、人生の成功は、いかに自分の信念を貫いたかで決まる、ということです。他人にどう思われるか、お金持ちになるかどうか、ということではありません。自分のやりたいことに挑戦したかどうか、ということだと思います。

 

 令和3年、みなさんが自分の夢にむかって、挑戦し続けることを期待しています。

(校長室より)  教育と新聞(12/23)

 教育に新聞を活用する方法を考える「第25回NIE(エヌ・アイ・イー)全国大会」が11月22日、東京都内で開催されました。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、今回は初めてオンライン開催となり、配信された講演や実践発表を教育や新聞の関係者が視聴しました。本県からも関係者15人が参加し、本校の大津幸信先生も参加しました。(大津先生はNIEアドバイザーとして参加し、その感想が12月13日付上毛新聞に掲載されました。)

 記念講演は、ハゲタカシリーズなどの社会派小説で知られる作家の真山仁さんが行いました。

「新聞を読めば自分は複雑な社会にいて、知らないことがたくさんあり、それを知る努力をしなければならないと気付かせてくれる」

「疑問があっても事実に基づいて反論しないと駄目」

「誰でもできるのは、新聞を疑い続けること。『100%本当か』と『うそだ』とはぜんぜん違う」

「『本当にそうなのか』という気持ちを子どもたちに持たせ想像を喚起させることが、これから新聞を用いた教育で一番大事になるのではないか」などと参加者に問いかけていました。

 

 話は変わりますが、新聞やマスコミが、新型コロナウィルス関連のニュースを数多く取り上げています。様々な情報が流れる中、私が当初から疑問に思っていたことは、感染者数だけでなく、検査した総数の情報を何故掲載しないのか?という点です。最近では、検査総数から導き出だされる陽性判定率も提示されるようになってきましたが、当初は全く公表されず意図的に隠しているのではないか、との感想を持ちました。新聞記事だけで、全てが明らかになるわけではありませんが、他人の考えを鵜呑みにするのではなく、自分自身で考えるために、新聞から様々な情報を入手することが必要です。高校生たちも、新聞から社会の課題を見つけ、自分で考える習慣を身に付けてほしいと思います。

(校長室より)  一度読んだら絶対に忘れない世界史(12/18)

 「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書」山崎圭一著(SBIクリエィティブ)を読みました。この本を読み、私たちは何故、歴史や地理などの社会科を学ばなければならないのか、ということをあらためて実感しました。

 

 この本の著書、山崎圭一先生は、福岡県の公立高校で社会科を教えていました(2020年3月退職)。教師時代に歴史や地理など500本以上の授業動画を公開し、再生回数850万回以上を数える人気ユーチューバーとなっています。

(山崎圭一チャンネルhttps://www.youtube.com/c/HistoriaMundi/videos

 

 山崎先生がYouTubeを始めたきっかけは、転勤だったそうです。公立高校の教諭は5年~10年ほどで学校を異動します。異動前の高校2年生に、世界史を教えていた山崎先生の転勤が決まったとき、当時の2年生から、「3年生になっても世界史を教えてほしい」と言われたそうです。新しい学校での仕事がありますから、前任校で教えることは不可能です。その際生徒から、「それならせめてYouTubeでやってほしい」と熱望され、始めてみたところ、高校生だけではなく、不登校の生徒や、海外留学中の生徒、社会人など、予想もしていない人たちが、授業動画をみて勉強していることがわかったそうです。

 

 山崎先生の歴史は、年号を扱いません。歴史は暗記するものではなく、ストーリーを楽しむものというのが先生の主張です。そして、歴史や地理などの社会科という科目は、社会に出てから必要になる教科である、ということも述べています。確かに社会人になってから、歴史や地理、政治や経済が必要になる場面が、たくさん出てきます。歴史から、自分の人生を見つめ直すことができます。社会人になってから、学び直しをする人が多いことからも、それがわかります。本校の図書室に、山崎先生の著書の購入をお願いしました。多くの高校生にこの本を読んでほしいと思います。

(校長室より)  マラソン(12/14)

 先週末、本校でマラソン大会が実施されました。天候にも恵まれ、ゴール後、生徒たちのさわやかな笑顔をみることができて、幸せな気持ちになりました。

 

 さて、人は何故走るのでしょうか? 日本では、週1回以上ランニングをする人は、約549万人いるそうです。また本年秋から2021年春にかけて、開催予定のマラソン大会が、約460レースあり、それらが中止・延期された場合の経済的損失額は推定計7100億円に上るそうです。私は毎年12月に開催されるホノルルマラソンに参加したいと思っていたのですが、本年は中止となりました。一方、ランナーが大会で集まることなく、スマートフォンのアプリで自分の好きな時間に走る「オンラインマラソン」の大会も広がっています。先月群馬県で開催された「ぐんまマラソン」も「ぐんまウェブマラソン2020」というオンラインマラソンでした。

 

 人は何故走るのでしょうか? 鹿島アントラーズ地域連携チーフマネージャーの吉田誠一さんは、11月30日付日本経済新聞紙上でこんなことを述べています。

「農道や川沿いをのんびり走りながら、私は自然の中で溶け込んでいく。自分が独立した存在ではなく、周囲と融和していく。そのとき、取り巻く世界のすべてが一つの命であるように感じる。自分の収まりのよさを感じる。そこにある安寧が私を走らせ、登らせるのかもしれない。」

(校長室より)  人生の成功(12/4)

 人生の成功とは何でしょうか。お金持ちになれば成功なのでしょうか。プロスポーツ選手や芸能人やユーチューバーとなって有名になることでしょうか。仕事をせずに遊んでくらすことでしょうか。何をもって成功というか、その答は人の数だけあると思われます。先日、天才芸術家・岡本太郎氏の著書「自分の中に毒を持て」を読み、太郎氏の考えに感動しました。

(岡本太郎氏の代表作は、1970年の大阪万博博覧会でテーマ展示を依頼され作り上げた【太陽の塔】であり、国際的にも話題となり永久保存されています。)

 

 太郎氏が若い頃、自分の作品に対して「そんな落書きは通用しない」と芸術界の大御所たちに馬鹿にされた時、こう思ったそうです。「だから何だ、上等だよ、俺は他人に評価されるために作品を作っているわけじゃない、作品を命がけで作っている、この生き様こそが美しいんだ。自分が本気でやって、それで野垂れ死ぬなら本望だ。」「挑戦した不成功者には再挑戦者としての新しい輝きが約束されるが、挑戦を避けてオリてしまったやつには新しい人生はない。ただただ成り行きにまかせてむなしい生涯を送るにちがいないだろう。」

 

太郎氏の言葉から学べることは、人生の成功は、いかに自分の信念を貫いたかで決まる、ということです。人生の成功に正解はありません。しかし他人にどう思われるか、お金持ちになるかどうか、ということではありません。人生の成功の基準は、自分がやりたいことを最後までやりぬいたか、ということです。これからの人生で価値があることは、他人の人生の正解をなぞる人生ではなく、自分の人生の正解を作っていける人です。大事なのは他人がどう思うかではなく、自分がどう思うか、ということだと思います。

太郎氏はこんなことも言っています。

「【成功は失敗のもと】と逆に言いたい。その方が人生の面白さを正確に言い当てている。」

(校長室より)  デジタル指導力(11/30)

 「全教員にデジタル指導力」11月23日付日本経済新聞の1面にこのようなタイトルの記事が掲載されました。記事の一部を紹介します。

 

 「政府はデジタル活用の能力を備えた小中高校の教員育成に乗り出す。授業でのICT(情報通信技術)活用法を各教科で示すとともに、来年度からICT関連企業OBらを学校に最大9千人派遣。将来は全教員が遠隔授業などを実施できるようにする。新型コロナウィルスの感染拡大も視野に入れ、世界的にみて出遅れている指導力の底上げを急ぐ。」

 

OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、デジタル活用スキルが高い学校に通う生徒(15歳)の割合は、参加した79カ国・地域での平均が60%を超えていますが、日本は最低の27.3%でした。また校内ネットワーク環境整備においても、端末への接続が十分であるOECD加盟国の平均67.2%、米国や北欧諸国は80%を超えていますが、日本のそれは36.5%となります。

海外から大きく後れをとっている状況をうけて、今年度、文部科学省は全ての小中高の児童生徒全員に、学習用端末(タブレット、あるいはノートPC)を配布する予定です。また校内ネットワーク環境整備(Wi-Fi)も計画されています。こうしてハード面が徐々に整備される予定ですが、デジタル人材の育成には全国約100万人いる教員全員がICT活用や指導法に習熟する必要があると思われます。

本校においても、年度末までに全生徒・全教員にノートPCが配布される予定です。この端末をどのように活用するか、生徒にどう活用させるかなど、我々教員は学ばなくてはなりません。ICT教育に限ったことではありませんが、教員が学ぶことをやめたら、教えることもやめなければなりません。

(校長室より)お笑いジャーナリスト「たかまつなな」さん(11/24)

 お笑いジャーナリスト「たかまつなな」さんが、11月3付朝日新聞に紹介されています。
 たかまつななさんは、横浜市にある中高一貫のフェリス女学院中学校・高等学校を卒業し、慶応大学総合政策学部に進学、その後、サンミュージックプロダクションに所属し、お笑い芸人になります。2016年に慶応大学を卒業後、NHKにディレクター職で入局、本年退局し、お笑い界の「池上彰」を目指すことにしたそうです。たかまつさんは、子どもたちや若者たちに、「お笑い」で社会問題を伝えようとしています。
 たかまつさんが、中2の時、爆笑問題の太田光さんと思想家・人類学者の中沢新一さんの対談「憲法九条を世界遺産に」という本と出会いました。自分が思っていた憲法とまったく違う視点で書かれていたことに感動して、「お笑い」というのもありだと考え、中3の時、新宿区の「新宿ちびっこ漫才グランプリ」に出場、その後「ハイスクールマンザイ」に高校3年間出場し続けたそうです。
 現在、たかまつさんは、時事ユーチューバーとして活躍しています。【たかまつななチャンネル】(YouTube)が最近取り扱っている題材は、「アメリカ大統領選、ついに決着」「アメリカの若者のリアル」「石破茂氏との対談」「野田聖子氏との対談」「いじめ認知した学校、過去最多」などのニュースやレポートです。
 たかまつさんは、中学生の時から、政治や社会の問題を、同世代や若者たちに伝えたいと考えていました。NHKを退局したのも、自分で番組を作ることができるまで、あと何年かかるかわからない、と考えたからだそうです。これから若い世代と社会を変えていこうとしている、たかまつななさんに注目していこうと思います。

(校長室より)  「世界のドメイン、251」(11/2)

10月25付朝日新聞の全面広告欄に、世界251の国・地域のドメインが紹介されています。

本校webページアドレス(URL)は、http://www.nc.oizumi-hs.gsn.ed.jpとなりますが、このアドレスの最後にある「.jp」がトップレベルドメインと呼ばれ、本校が日本国に存在することを示しています。ちなみに「.us」アメリカ合衆国、「.ru」ロシア、「.cn」中国となります。「sekai-domain.jp」にアクセスすると、3D地球儀があらわれ、そこに表示されている色分けされたポイントをクリックすると、その国・地域のドメインやエピソードを見ることができます。

 

話は変わりますが、オリエンタルラジオ中田敦彦氏がyoutubeにて、約3000万人のフォロワーを持つ世界的クリエイター、NasDaily氏と対談しているのを見ました。NasDaily氏は、イスラエル/パレスチナ出身で、アメリカ合衆国のハーバード大学を卒業しています。卒業後ソフトウェア・エンジニアとして働きますが、自分の人生の過ごし方に疑問をもち、会社を辞め、世界に旅に出ます。そして世界を旅しながら動画を配信し、その動画コンテンツがFacebookで人気を博し、今ではたくさんのフォロワーが彼のページを見ています。そんな彼に興味をもった中田氏が自分のチャンネルで彼を紹介したことが縁で、この対談が実現しました。中田氏が最近学び始めた英会話で通訳なしの対談を試みたことも素晴らしいのですが、NasDaily氏の動画について、世界中のニュースが発信している内容と、NasDaily氏が発信していることの違いや、日本が世界からどう見られているか、といった内容の話も、興味深く聞くことができました。

 中田氏をはじめ、多くの日本人がyoutubeSNSを活用して動画配信を行っていますが、NasDaily氏のように、世界中に自分の意見を発信している日本人はいるのでしょうか? 再生回数や登録数を競うだけではなく、世界251の国・地域に対して自分の意見を発信できる日本人の活躍を見たいものです。

(校長室より)  「白石康次郎さん 海洋冒険家」(10/27)

10月24付朝日新聞フロントランナーのコーナーに、海洋冒険家の白石康次郎さんがとりあげられました。白石さんは、少年時代に船で海を渡る、という夢を抱き、神奈川県立三崎水産高等学校(現、海洋科学高等学校)に入学します。在学中に第1回単独世界1周レースで、日本人の多田雄幸さんが優勝したニュースを見て感動し、自分もヨットで世界1周をしたいと思いました。その後、多田さんに弟子入りをし、レースをサポートしながら修行を積み、無補給の世界一周に挑戦するも2度連続失敗、26歳になった1994年、3度目の挑戦を176日間で成功させました。当時の史上最年少記録でした。

2016年、どこにも立ち寄らず地球を1周する、最も過酷とされる4年に一度のヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に初挑戦しました。だがフランス西部を出て1カ月後、南アフリカ沖でマストが折れて途中棄権。1.7億円で購入した中古船の老朽化が原因だったそうです。

「夜中に突然、計器が全部ゼロになって。外に出たら・・・・。涙が枯れ果てるまで泣きました。」ただ夢にみた舞台から転げ落ちても、下は向かない。「またやる。すぐ決めた。俺はあきらめないよ。なぜ? やりたいから。」

白石さんは現在53歳です。来月11月8日、このレースに再挑戦します。「レースは連続2千時間。何が起こるかわからない。命が懸かってるから、最高に面白いよ。生きてる実感がある。」「先が見えないから楽しいんだよ。あなたの一生はこうです、なんて嫌だ。好きなことをやらないと生まれてきた意味がない。」

この特集の最後に白石さんはこう述べています。「人間の最強の力は好きなことをやること。笑顔で幸せになれる。『好きなことばかりやってちゃダメ』なんて言っている大人の顔を見て下さい。だいたい、つまらなそうな顔をしてますから。」

一生をかけて好きなことに挑戦する白石さんのメッセージは、我々大人にも響いてきます。高校生のみなさんも、一生かけて挑戦し続けることができる、自分の好きなことを見つけてほしいと思います。

(校長室より)  「キャンプ芸人 ヒロシさん」(10/23)

10月21付朝日新聞のBSテレビ紹介欄に、「ヒロシのぼっちキャンプ Season2」という番組が掲載されました。記事によれば、この番組は2018年に15分番組として放送され人気を博し、今回は1時間(回によっては30分)に枠を拡大して再スタートするようです。この番組の伊藤プロデューサーは、こう述べています。

「キャンプのノウハウを提示するのではなく、ヒロシさんが自分の時間を自分で満たす姿をドキュメンタリータッチで描きたかった」「これが好き、これが嫌いと自分本位で決めていくヒロシさんの姿を通じて、『自由にいきましょうよ』というメッセージが伝われば」

 

ヒロシさんは、2003~2004年、芸人として成功し、最高月収は月4千万円だったそうです。売れる前は風呂なしのアパート(家賃3万円)に住んでいましたが、売れた後、家賃48万円の大きな家に引っ越し、外車ジャガーを手に入れました。成功してわかったことは、自分の時間がない、自分にとってこれらのお金、でかい家、外車等は必要ない、自分の時間を自分の好きなことに費やしたい、という思いでした。

ソロキャンプは、趣味で始めたそうです。ブームが来る前に始めた動画作成サイトyoutube“ヒロシちゃんねる”も、スマートフォンで好き勝手に作ったそうで、これほどブームなるとは想像していなかったようです。

ヒロシさんが、楽しそうにキャンプをやっている姿をみると、自分まで楽しい気持ちになります。彼は、このようにテレビで放映されるキャンプを「ビジネスキャンプ」といいます。好きで始めたキャンプが、仕事になっていることはうらやましい限りですが、大事なことは、好きで始めたことや夢中になれることは、長く続けることができる、仕事になるかならないかは別として、自分の好きなことを自分流に楽しむこと、それらの大切さをヒロシさんは教えてくれます。

(校長室より)  「メモワール(記憶、思い出)」(10/13)

先週、「モーニングノート」について記述しましたが、今回は「メモワール」について書きます。これは先に紹介した著書「いくつになっても【ずっとやりたかったこと】をやりなさい」ジュリア・キャメロン著(サンマーク出版)で推奨されていた4つのツールがありましたが、そのうちの④になります。(①モーニングノートを書く、②週1回、楽しいことを探すために新鮮な体験をする、③週2回、何も持たずウォーキングをする、④週1回、自分自身の過去について振り返ってみる)

みなさんは、過去を振り返ったことがあるでしょうか。日々の生活に追われていると、過去を振り返る時間を作ることは、なかなか難しいことだと思います。この本では、年齢を12分割して考えることを推奨していますが、高校生の場合は3年おきくらいがちょうどいいのではないかと思います。そして、その期間がどうだったかを思い出す、どこに住んでいたか? どんな音を聞いていたか? 印象的だった匂いは? その時誰をなつかしく思うか? その時好きだった人は? 助けてくれた友達は? あの時やった遊びは? 夢中だったことは? 何に挑戦していたか? そして自分自身の過去について敬意をもって振り返る、自分自身の人生を誇らしく思う、こんなにも愛されてきた、こんなにもがんばってきた、意味のある面白い時間を過ごしてきた、そうしたことを振り返っていると、今の自分が何をしたいかが見えてくると著者は述べています。もしかすると新しい自分を発見できるかもしれません。

 このことは、高校生だけでなく、我々大人も、時々自分自身の過去を振り返ってみることが大切だと思います。

(校長室より)  「モーニングノート」(10/5)

みなさんは、日記というものをつけたことがあるでしょうか。私も昔、毎日食べたものを記録したり、運動内容を記録したりしたことがありますが、長くは続きませんでした。そして、先週から、「モーニングノート」というものを書き始めました。これは、「日記」とは別のものです。

「いくつになっても【ずっとやりたかったこと】をやりなさい」ジュリアキャメロン著(サンマーク出版)という本を読みました。この本には4つのツールが示してあり、①モーニングノートを書く、②週1回、楽しいことを探すために新鮮な体験をする、③週2回、何も持たずウォーキングをする、④週1回、自分自身の過去について敬意をもって振り返ってみる、ということを推奨しています。この中の①を、私もやってみました。

日記というと、その日の出来事を記録する、といった内容になりがちですが、この「モーニングノート」は、毎朝A4のノートに手書きで書く、というルールがあります。1日は始まっていないので、とにかく考えたことを何でも書いてみる、ということです。今日何をするか、何をしたいか、本当にやりたいことをやっているか等々です。自分に対して正直に考えたことを記述していきます。あくまで自分自身を見つめるために書くので、誰にも見せる必要はありません。自分に正直に、自分の考えを記述するだけです。

 

 今年の高校3年生は、10月16日から就職試験が始まります。大学や専門学校のAO入試や推薦入試はすでに始まっています。将来の進路が着々と決定していくと思われますが、みなさんの本当にやりたいことは何でしょうか。このことは、高校生だけでなく、我々大人も、時々自分自身を振り返って考えてみることが大切だと思います。

(校長室より)  「ソロキャンプ」(9/24)

キャンプが人気です。日本オートキャンプ協会によれば、オートキャンプ場に宿泊した人は、2012年約720万人だったのが、2019年には約860万人(推定)に増加したそうです。

9月17付上毛新聞で、キャンプの様子を撮影した、動画投稿サイトyoutube【ヒロシちゃんねる(お笑い芸人ヒロシさんのサイト)】を紹介しています。この動画はソロキャンプの魅力を伝えるものとして、登録者数が100万人に迫るほどの人気だそうです。

先日、人気アイドル嵐のメンバー、大野智さんが、ヒロシさんと一緒にキャンプをする動画を、youtubeでみつけました。大野さんが楽しそうにキャンプを体験している姿が、とても印象的な動画となっています。何故このようなキャンプ動画が人気なのでしょうか。

新型コロナウィルスの影響で、密な行楽や旅行に行くことが困難となっています。密にならずソーシャルディスタンスを保てる等の理由も、キャンプに注目が集まる理由のようです。

さきほどの新聞記事に、「ぼーっと“たき火”をみているだけで時間が過ぎる。」「日が傾くにつれて団体客は減り、谷間は川のせせらぎと虫の声に満たされた。たき火で鉄板を熱し、奮発した和牛のステーキ肉を乗せると、ジューッと食欲を誘う音が。(中略)絶え間なく変化する炎を見つめる。」などの感想が書いてありました。このような非日常を味わえることがソロキャンプの魅力なのかもしれません。久しぶりに“たき火”をやってみたくなりました。

(校長室より)  「オンライン授業の長所」(9/18)

毎日新聞に「香山リカのココロの万華鏡」という欄があり、精神科医である香山リカ先生が連載しています。9月16日に「オンライン授業の魅力」というタイトルの文章が掲載されました。香山先生は、教員として立教大学で仕事をしています。4月からはすべてオンライン授業で、大学の教室を使っての講義はしていないそうです。

立教大学が経営学部600人超の学生に対して、オンライン授業に関するアンケートを行った際、「オンライン授業の満足度は対面授業よりも高い」「大人数、一方向型の授業でオンライン継続を望む割合が高い」という調査結果が出たそうです。

また「リラックスして授業に参加できた」「自分のペースで学習することができた」「服装に気を使わずにパソコンに向かえるのがいい」「まわりに人がいないので先生の話に集中できる」「秋からもオンラインならたくさん授業を受けられそう」等の意見もあるようです。

本校においても、6月にオンライン授業を試行し、7月には普通科2年生を対象に外部講師(横浜桐蔭大学溝上教授)によるオンライン授業を実施しました。そして昨日17日、NPO法人DNA(代表.沼田翔二朗氏)の協力を得て、普通科1年生の総合的な探究の時間にオンライン授業を実施しました。将来の自分の仕事について、「仕事は動詞で考えよう」「仕事は広がりに気づこう」「仕事は定義を捉えよう」という3点について各自が考え、他者と意見を交換しながら、仕事に対する理解を深めました。(9/18付上毛新聞に掲載されました)

オンライン授業は、どこからでも授業をすることができ、どこにいても授業をうけられるメリットがあります。また、教室で発言するのが苦手な生徒も、チャット機能を活用して発問したり、相談をしたりすることが可能となります。リラックスできる、自分のペースで学べる、オンライン授業の魅力を、教室で顔を見みながらの対面授業(オフライン授業)でも発揮できるような授業改善に取り組んでいく必要があります。

(校長室より)  「よい授業とは」(9/7)

よい授業とは、どんな授業でしょうか? 本校は、昨年度から、「Find!アクティブラーナー」というwebページの学校会員となっています。そのページを開くと、授業動画・講義等のさまざまな動画が3000本以上みることができます。最近はオンライン授業動画も増加しています。全国の先生方が様々な工夫をしながら、「主体的・対話的で深い学び」を目指して授業を公開しています。生徒が主体的に参加している「よい授業」は、先生方が試行錯誤を繰り返しながら作られることがわかり、大変勉強になります。

(参照webページ https://find-activelearning.com/ )

 

私が考える「よい授業」とは「面白い授業」です。いかに生徒の知的好奇心や学習意欲を高めることができるのか、という視点が重要です。面白くなければ、生徒は興味を持ちません。面白いと思えば、生徒はその教科に興味をもち、主体的に学ぼうとします。そうなれば理解が深まり、気付きが増え、さらに未知なるものにチャレンジしていきます。

さらに、学校の授業が、先生の一方的な知識の伝達だけであれば、これからの未来を生きる生徒にとって、必要な学力は身につきません。知識はインターネットやスマートフォンがあれば、ほとんどの情報が手に入ります。教科書に書いてあることを解説するだけの授業、知識を一方的に教えるだけの教育は必要とされていません。いずれ生徒全員にノートPCが配付され、無線LAN(WiFi)環境が整備されます。そうした情報通信技術(ICT)も、生徒の知的好奇心や学習意欲を高めるために活用するべきだと思います。

教員が「よい授業」をしようと思えば、不断の創意工夫が求められます。教員は生涯、試行錯誤の繰り返しが必要になると考えます。

(校長室より)  「洗心亭」(9/1)

「【洗心亭】は、家と呼ぶにはあまりにちっぽけで粗末な野小屋に見えた。が、近づくにつれて印象は一変した。粗末は楚々に変わり、ちっぽけは慎ましさに変わった。伝統的な日本家屋の様式に則った、古いが風格のある居宅だった。誰か掃除にでも入っているのか、戸も障子も開け放たれてあった。部屋は二間のようだ。(中略)かつてこの離れ家に二十世紀を代表する建築家が住んでいた。意外性に富んだ歴史の綾が見る者に特別な感慨を抱かせるのは当然のこととして、しかしそうした経緯を知らずとも、凜とした佇まいがこの家の由緒を感じさせる。」 

 

 上記の文章は、横山秀夫氏の小説「ノースライト」(127p)に記載されている、「洗心亭」を表現したものです。「洗心亭」は、群馬県高崎市にある少林山達磨寺に現存しています。県指定の重要文化財になっており、見学することが可能です(Youtubeで配信されている動画でもみることができます)。

世界的大建築家ブルーノ・タウト氏が、1934年8月~約2年間居住したとされる建物です。

 

 横山氏のこの小説は、大建築家ブルーノ・タウト氏の物語を背景に、様々な人間関係(家族関係)をからめ、人の善良さ、思いやり、優しさが表現されます。一家はどこへ消えたのか? ブルーノ・タウト氏と椅子の関係は? ミステリー、仕事へ復活、家庭崩壊からの立て直し等、様々な要素をからめた感動の物語です。そしてブルーノ・タウト氏の建築物を、自分の目で確かめたくなります。素晴らしい物語でした。

(校長室より)「なぜ、仕事をしなければならないのか?」(8/27)

今日から2学期がスタートしました。生徒のみなさんは充実した夏休みを過ごすことができたでしょうか?

2学期の始業式では、「なぜ、仕事をしなければならないのか?」という話をしました。

3年前のあるテレビ番組で、定職をもたない若者たちが発した「なぜ仕事をしなければならないのか?」という問いに対し、マツコデラックスさんが、若者たちに対して回答を述べていました。その発言の一部を紹介します。

 

「仕事以外に生きる価値って何があるの、って思う。

何をして生きている、っていう実感を得ているか?

自分が楽しければいい、という価値以外に、生きている価値は、どれだけ社会に貢献できているか? どれだけ人の役にたてているか? という方が大きいと思う。その満足って、好きなことだけやっていると得られないと思う。

何か見つけないと、その先に何もない。何か将来につながることをひとつでも考えていた方が、いざっていう時に絶望しなくてすむ。」

 

 マツコさんの言葉は、学ぶこと、成長すること、そして仕事をすることが、何のためにあるのか、ということを私たちに教えてくれます。

 2学期の、みなさんのさらなる成長を期待しています。

(校長室より)  「群馬住みます芸人アンカンミンカン」(8/11)

夏休みがスタートし、10日あまりが過ぎました。生徒のみなさんは充実した夏休みを過ごしているでしょうか。ここで、1学期終業式の式辞で述べた内容の1部を紹介します。

 それは、群馬住みます芸人アンカンミンカンの富所哲平さんの話です。群馬テレビなどでよく見かける2人組の、めがねをかけている方です。その富所さんが、上毛新聞にこんなことを書いています。

(6月4日付)「地域の未来を考える上で、業界の壁なんて関係なくなってきていて、タテの関係に加えて、ヨコやナナメの交流が増えてきています。そのおかげもあってか、日々、学びがあります。知らないことを知ること、それこそが学びの本質で、そこから生まれる行動や思考が、人としての成長に他なりません。」

(7月27日付)「知らないことを知ることが『学び』で、学んでから考え方や行動が変わることを『成長』と言います。皆さんは大人になってから成長できていますか?(中略)1回きりの人生、楽しくて優しそうな未来を、自分で選択したいと思います。そのために今日も少しだけ努力する。一人の百歩より、みんなの一歩。」

今年の夏休みは、例年より短くなりましたが、この期間、毎日成長するために、学ぶことを継続してほしい。毎日振り返る時間をつくり、行動に結びつけてほしい。毎日成長するために、限られた時間、限られた命を大切に使ってほしい。という話をしました。

最後に、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹氏の言葉を贈ります。

「1日生きることは、1歩進むことでありたい。」

(校長室より)  「溝上慎一教授」(7/22)

7月17日(金)4限目に、先日お知らせしましたビデオ会議システム(Zoom)を活用した外部講師によるオンライン授業を本校で実施しました。講師は、桐蔭横浜大学学長・教授の溝上慎一先生です。私は、数年前からtulipメーリングリスト(現在は桐蔭学園トランジションセンターが運営)に参加しています。このMLからは、学校教育改革、学校から仕事、社会へのトランジション、人材開発等に関する講演会、シンポジウム、研修会等の案内が配信されています。

このたび、溝上先生が直接高校生に対し「偏差値だけではない学びと成長のための大学選びのポイント」とうタイトルで授業をします、という情報を得て申し込んだところ、快く引き受けていただきました。

授業では、事前に生徒からの質問や疑問を先生に提出し、それらに対する回答をふまえて、大学で何を学ぶのか、学びたい内容と将来の職業をどう結びつけるのか(学びたいことを学べばいい、何を学んでもどの職業にもつける)、学生の学びと成長を目指す大学の条件とは何か(学部の定員数50~100人以下、少人数教育、参加型授業【聴くだけでなく、書く、話す、発表するアクティブラーニング】を目指す学部がある)、経済的事情が許すなら、在住地域を離れた大学に進学する方がいい等々、具体的に大学選びのポイントを解説していただきました。授業を受けた生徒(普通科1年&2年)は、「大学のことがわかった」、「視野を広げて自分の将来を考えて、大学を選択したい」など、自分の進路について真剣に考える材料になったと思います。大学の先生でなければわからない情報や、大学で学ぶ内容等について、わかりやすく説明していただきました。ありがとうございました。

 

【8月4日11時~オンライン学校説明会について】

7月21日付上毛新聞第1面に「公立高校説明会、来月末まで中止」という記事が掲載されています。その一部を紹介します。

「大泉高が6月中旬に公開した動画は、昨年度の学校生活で実習などに取り組んだ生徒の写真を、職員がスライドショーにした。8月には同校独自に、生徒によるツルノスからの配信も企画している。」

8月4日(火)11時~、県庁の動画放送スタジオ「tsulunos」から、オンライン学校説明会、Youtubeライブ配信を公開します。ぜひご覧ください。

(校長室より)  「世界で一番しあわせな国」(7/17)

7月14日、16:40~同志社大学公開オンライン授業を見学しました。この授業は、同志社大学政策学部佐野淳也准教授が中心となり、外部講師を招いて、大学生及び一般の方に公開しているものです。この授業はYouTubeによるライブ配信されましたが、現在でも録画されたものをみることが可能です。

今回の外部講師はデンマーク、ロラン島在住の、ニールセン北村朋子さんでした。北村氏は、2011年からデンマークに移住していますが、その前は会社員、映像翻訳家をしていたそうです。デンマーク移住後は、様々なテーマ(例えば再生可能エネルギー、高福祉社会システム、持続可能な社会、教育、民主主義、スポーツと文化、復興、都市計画など)について、小中高大学生から企業、研究所、NGO、議員や大臣のみなさんと対話、連携、実践を続けています。

今回の授業のタイトルは、「デンマークの幸せで持続可能な社会づくり」というものです。デンマークについて語り、日本についてもどんな国でありたいか?といった内容を語っています。2010年の調査によれば、デンマークの世界幸福度指数は8.4点で世界第1位(とても幸せ10点、とても不幸0点、11段階で幸福度を国民に質問している)となっています。ちなみに北欧の国々やイギリスで7.4点、フランスで7.1点、欧州28カ国の平均は6.9点、日本は平均以下の6.5点だったそうです。何をもって幸せを感じるかは人によって違うかもしれませんが、デンマークの人々は、安心と責任と信頼を国や政治に対してもっているのではないか、と北村氏は述べています。①社会保障は全て税金でまかなっている、②貧富の差が少ない、③国政選挙の投票率85%以上など、福祉や政治が安定しています。そしてどんな国でありたいか、ということを多くの国民や政治家が考えていると指摘しています。日本の幸福度はどうしたらあがるのでしょうか? 授業の最後で北村氏はこのようなメッセージを残しています。

「政治と民主主義を選び、育てるのは、私たち市民の仕事

 のびのびした社会になるように、我が子のように

 みんなで手塩にかけて育てていこう。

 あせらずめんどうくさがらずに、面白がって学びつづけよう。」

(校長室より)  「オンライン、学べるもの」(7/7)

6月22日から、本校は通常登校となり、全生徒の登校が始まりました。毎日の検温、手洗いの励行、マスク着用、3密の回避などのコロナ対策は必要になりますが、直接教師と対面する授業や実習等を見学してみると、生徒の表情を直接見ながら行う授業も大切だな、と感じます。

 

7月3日付け朝日新聞では、オンライン授業についての特集が掲載されました。教育研究者の鈴木大裕氏は、こう述べています。「『やっぱりな』。休校を機に進むオンライン化の議論は僕にとって、残念な意味で予想通りでした。オンライン学習そのものはツールに過ぎず、よくも悪くもないと思ってます。問題は議論の前提にある【学び】の観念が、余りにも貧弱なことです。重視されているのは、受験をゴールととらえた【お勉強】ばかり。」学校は人を育てる場所であり、授業はその一部にすぎない。受験準備のためのオンライン授業に疑問を呈しています。

また米スタンフォード・オンラインハイスクール校長の星友啓氏は、オンライン授業の可能性について、こう述べています。「導入したのがオンラインの【反転授業】です。授業で講義を聴いて、授業外で課題を解く従来型を逆転。前もってビデオ教材などで学んでからオンライン授業に臨み、グループワークやディスカッションで効果的に学びを深める。これによって授業の中から共に学ぶコミュニティが生まれてきます。オンラインでは生徒や教師が分断されやすい。意識的に学校でのコミュニティ強化を図るのが成功の鍵です。」

 

本校においてもオンライン授業(試行)を実施しました。来週の7月17日には、外部講師によるオンライン授業を計画しています。テーマは、「偏差値だけではない、学びと成長のための大学選びのポイント」というものです。外部講師が、直接来校しなくても本校生徒に対しての授業が可能となる、まさにオンライン授業ならではの試みです。授業実施後、内容等について報告させていただきます。

(校長室より)  「日本語教育とオンライン学習」(7/1)

6月29日付上毛新聞に、「日本語教育は今」という特集で、本校生物生産科1年生の記事が掲載されました。紹介された生徒は、日本国籍を持っていませんが、大泉国際交流協会の学習支援を受けて、今春本校への合格を果たしました。生徒は日本語による日常会話に問題ありませんが、「漢字の読み書きが苦手。もっと勉強したい」と、意欲的に学習しています。この生徒が学習に頑張っている姿は、他の生徒のいい刺激になると思います。

 

他国の大学の学生とオンラインでともに学ぶ海外連携型協働学習(COIL)について、6月29日付日本経済新聞が取り上げていました。関西大学の池田佳子教授は、このように述べています。

「世界中の大学の国際教育にブレーキがかかっている。新型コロナウィルスの感染拡大で3月から【世界同時鎖国】の状態が続き、米国ではカリフォルニア州を皮切りに、各州の大きな大学が軒並み秋学期もオンライン教育を続けることを決めた。(中略)この状況下で海外連携型協働学習への注目度が高まっている。学生が海を隔てた同世代の仲間とICTツールでつながり、4~8週間かけて一つのプロジェクトに取り組む教育手法だ。」

 

本校でも試行的にオンラインHR・授業を行いましたが、オンライン学習のメリットは、リアルタイムでありながら、空間の制約を超えるところにあります。「どことでも」「どこからでも」リアルタイムの授業、講義を受けることが可能であり、日本や世界のどこにいても、ICTツールが使用できる環境下であればオンライン学習、協働学習が可能になるということです。

ICTを活用した新しい学習ツールが、これからの教育を変えていくことは間違いありません。子どもたちは、国籍に関係なく世界の人々と協働して学習する力を身につけて欲しいと思います

(校長室より)  「チャップリンとヒトラー」(6/23)

6月10日に紹介した中田敦彦氏“YouTube大学“で上記タイトルの著書(大野裕之著)をとりあげた動画をみました。ヒトラーは、歴史を学習した者なら誰でも知っている、ユダヤ人大量虐殺を実行した最も憎まれた独裁者です。かたやチャップリンは、映画界において最も愛された喜劇王です。この両者は生まれた年は同じですが(1889年4月)、まったく違った人生を送ります。ヒトラーは青春時代、アーティストとしても軍人としても成功しませんでしたが、悪魔的にうまい演説を武器に、政治家の道を駆け上がります。チャップリンは人種問題や国家にかかわらないやり方で、映画界でコメディアン(俳優)として成功します。成功した後チャップリンは、今までの映画作りには避けてきた人種・政治問題を真正面から取り上げ、政治家ヒトラーが、将来とんでもないこと(強制収容所、虐殺等)を起こすことを予言しつつ、権力者(ヒトラー)を弱者(貧しい人たち)がおちょくる(あざ笑う)映画【独裁者】を制作します。この政治的な映画制作には多くの人々が反対しましたが、チャップリンは自分の信念に基づいて映画制作を強行します。この映画の主人公はユダヤ人の床屋です。彼は捕まり”強制収容所“に入れられます(映画制作時、ドイツに強制収容所はありませんでした)。そこを脱出した後、国境付近で捕まりそうになりますが、ドイツ軍服を着ていたので”ヒトラー“に間違われます。最後のシーンで、兵士たちを前に主人公(床屋)が演説をするシーンがあります。このシーンの撮影日は、ヒトラーがパリを占領する前日だったそうです(1940年)。その演説の一部を紹介します(最初、床屋は自信なさそうに登場します)。

 

「悪いが私は皇帝になりたくない。支配するよりも、人々を助けたい。ユダヤ人も黒人も白人も、お互い助け合わねばならない。他人の幸せを願い、憎みあってはいけない。地球には全ての人を包む豊かさがある。人生は自由で楽しいはずなのに、貧欲が心を支配し、憎悪をもたらし、悲劇と流血を招いた。スピードも役に立たず、機会は貧富の差を広げた。知識を得た人間は、優しさをなくし、心のかよわない思想で、人間性が失われた。知識より大切なのは、思いやりと優しさ。それがなければ機械と同じだ。航空機やラジオで人々が近づき、それで世界をひとつにできる。私の声が世界中に伝わり失意の人々にも届いている。彼らはこの歪んだ支配体制の犠牲者である。人々よ、希望を捨てるな!

貧欲が招いた不幸も、人として生きる不安も、独裁者の死とともに消える。そして民衆は政権を取り戻す。兵士よ、良心を失うな! 独裁者に惑わされるな! 君たちは支配され、まるで家畜のように扱われている。彼らの言葉を信じるな! 彼らには血も涙もない。君たちは機械ではなく人間なのだ。人を愛する心を持て! 愛があれば憎しみは生まれない。」

 

 コロナ禍によって、世界は危機的状況にあります。それとは別の理由で暴動や爆撃等の事件が起こっています。このチャップリンの言葉に耳を傾けてほしいと思います。

 

 映画「独裁者」床屋の演説シーン

https://www.youtube.com/watch?v=biAAmqaMCvo

(校長室より)  「オンライン授業(試行)」(6/16)

6月1日から学校が再開し、本校における分散登校も3週目に入りました。6月4日から、学年別にオンラインHR(試行)を実施しました。いろいろな問題点は発生しましたが、ほとんどの生徒が参加できたと思います。今週から、オンライン授業(試行)をスタートしました。昨日は2学年の1限と2限を実施しました。始めてオンライン授業を経験する先生方も、パワーポイント画像、ホワイトボード、YouTube動画等、様々なコンテンツを授業に取り入れていました。生徒たちも、チャット機能を活用して、先生とコミュニケーションをとるなど、各自で工夫しながら、授業に取り組んでいました。

イギリスで暮らす作家の、ブレイディみかこ氏は、ロックダウンで休校になった息子の中学の先生たちと、電話でこんなことを話したそうです(6/11付朝日新聞掲載)。

ある数学の教員は、「興味深いこともあるんです。ふだんは質問なんかしなかった子たちがメールを送ってくる。成績もふるわず授業に関心もなさそうだった子に限って『ここがわからない・・・』と言って。」「それは面白いですね」と答えると、彼女は言った。「ひょっとして、私はそういう子が質問できない雰囲気の授業をしていたのではと反省しました。今の状況はこれまで気づかなかったことを学ぶ機会になっています。」

コロナ禍による学校の臨時休業により、各学校が進めているオンライン学習は、これまで見逃されてきた教育の問題点を明らかにしています。これからの教育は、学校や教師だけが授業(学習)を仕切るのではなく、民間企業、大学、NPOなど幅広く社会に存在する教育資源を、児童・生徒がそれぞれの学びに生かしながら、みんなで個別に学ぶ学習に変わっていくのかもしれません。

(校長室より)  「一流の雑談力」(6/10)

先週の6月4日、本校初のオンラインHR(試行)を実施しました。まずは1年生各クラス、5日は3年生各クラス、8日は2年生各クラスで、それぞれ約20分程度でしたが、なんとかうまくいきました。当初は生徒が出席できなかったり、音声をミュートにできなかったり、いろいろな問題が発生しましたが、各担任が出席をとり、連絡事項を伝えるなどしながら、生徒とコミュニケーションをとることができました。私も生徒の顔をみながら話をしましたが、生徒の表情をみながら話すのはとても楽しかったです。今後、コロナウィルス感染拡大による学級閉鎖や臨時休業が再び起こってしまうのか、起こらないのか、全く予想がつきません。その時のための準備を進めていきたいと思います。

標記タイトルは、オリエンタルラジオの中田敦彦氏の動画配信サイト“YouTube大学”(5/28配信)からお借りしました。中田氏が開設したこの動画は、登録者数246万人、動画数370本(6/9現在)に達する大人気の動画です。動画のテーマは、日本史、世界史、古事記、三国志、北朝鮮、スラムダンク、鬼滅の刃等々、様々な分野にわたりますが、本の解説等もすばらしいプレゼンテーションになっています。

「一流の雑談力」は、「雑談の一流、二流、三流」(桐生稔著)を解説したもので、雑談力=コミュニケーション力をわかりやすく説明しています。たとえば、三流は、話しかけられるのを待つ。二流は自分の事を話す。一流は、相手の事を聞く、相手に焦点をあてる、笑顔で相手の話を聞く、となります。中田氏本人は、自分は三流の雑談力しかなかった、と述べています。コミュニケーション力は、話す力より、聞く力が重要だということがわかります。この動画を、オンラインHRで1年生各クラスに紹介しました。この雑談力で、1年生は多くの友人を作ってください。雑談力は、社会に出てからも役立つものです。2、3年生も、雑談力=コミュニケーション力を身につけてほしいと思います。

(校長室より)  「学びをとめるな!」(6/4)

6月1日から学校が始まりました。学年を基にした分散登校ですが、生徒たちは元気に登校しています。来週から段階的に授業が始まります。約2ヶ月間、課題等の家庭学習でしたが、これからは学校での授業・実習等で確かな学力を身につけてほしいと思います。

さて、先日、河合塾主催の「対話のひろば【学びを止めるな!-コロナを超えて学びと働き方を考える-】」というイベントに参加しました。参加したとはいっても、オンラインによる自宅からの参加となりましたが、大変中身の濃い2時間30分でした。

最初に2つの講義がありました。

一つ目は、立教大学経営学部教授、中原淳氏による「アフターコロナの働き方と学び方」です。コロナウィルスの感染拡大によって、日本の働き方、学び方の課題が浮き彫りになり、これからはオンライン環境もフル活用しなければならない。日本はICT利用が、OECD諸国のなかで最も遅れている国であり、オンライン学習も進んでいない、と指摘しています。これからはオンライン、オフラインを組み合わせたフレキシブル(ハイブリッド)な働き方、学び方になる、というものでした。

二つ目は、桐蔭横浜大学学長・教授、溝上慎一氏による「ブレンディッドラーニングの視点からアフターコロナの学校教育を考える」です。溝上氏によれば、学習の個別化の推進によって、「みんなで一緒に学ぶ」から「みんなで個別に学ぶ」。オンライン学習を利用して、「どことでも」「どこからでも」リアルタイムの授業ができるようになる。これからは対面学習+オンライン学習の長所をとりいれた、混在する学習が主流になっていく、というものでした。コロナウィルス禍によって日本の教育の課題が明らかになったので、これを契機に教育も変わらなければならない、と強く感じました。

講義の後、全参加者(約330人)から、7人のグループがアトランダムに作られ、画面上でのグループワークとなりました。オンライン上でのグループワークはなかなか面白く、今後、オンラインHRやオンライン授業の導入を検討する際に、是非取り入れたい手法でした。

(校長室より)  「こっからが出発点だ」(5/27)

本校を含めた多くの学校が、6月1日から始まります。まずは分散登校になりますが、1日も早く生徒が元気に登校してくる姿を見たいと思います。しかしながら、全国の多くのイベントを含め、中学・高校総体、高校野球、吹奏楽コンクールなど、生徒たちが目標としていた大会のほとんどが中止となりました。高校生活において、多くの時間とエネルギーを費やしてきた生徒たちにかける言葉がなかなかみつかりません。

朝日新聞デジタルで、高知県須崎市にある高校野球の名門校、明徳義塾高校野球部の馬淵史郎監督の言葉が掲載されました。2020年5月20日、約100人の部員に大会中止を伝えた時の言葉の一部を紹介します。

「目標としとったものがなくなるというのは、本当にね、なんともいえん。一言では残念としか言いようがないけど、それだけでは言葉が足らんと思うんやけど。目的は【将来につながるための高校野球】やから。それだけは忘れんなよ。勝った負けた、甲子園に出場できるできない、レギュラーになったなれないと、いろんなことがあるけど、要は、世の中に出て通用するようなことをグラウンドで学ぶのが高校野球なんや。(中略)忘れんなよ。世の中に出ていろんな苦しいことがあった時に、耐えていける精神力をつけるというのが高校野球なんや。こういう苦しい時ほど、人間は試されるんで。甲子園だけが全てじゃないんやから。人生、甲子園に行けない人間の方が多いんやから。全員が気持ち切り替えてやっていかないと。それでも最後まで同じ仲間とグラウンドでやれたというのが財産やから。10年、20年経って、『あの時、自分らの代は地方大会がなかった。試す場所がなかった』ということが、きっと役に立つ時があるから。(中略)頑張ってやれよ、こっからだぞ。こっからが出発点だ。何も終着駅じゃないよ。こっからが出発点だ。気持ち切り替えてやっていけよ。ええか。」

(校長室より)  「9月入学」(5/20)

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、各学校で、臨時休業が継続されています。本校では、6月1日の学校再開にむけて、準備を進めているところです。

そんな中、新聞紙上で賑わいをみせているのが、4月の入学・始業時期を9月に移行させる議論です。5月8日付読売新聞論点スペシャルの欄で、賛成反対両者の意見をとりあげています。9月入学については、2011年の東京大学による秋入学の検討で多くの人に知られるようになりました。賛成する国際大学教授信田智人氏は、教育の国際化推進のために、諸外国で主流の9月入学への移行が必要だ、9月入学によって優秀な留学生や研究者の受け入れが進み、海外大学との共同教育プログラムもやりやすくなる、日本の学生も、入学時期のずれを気にせず海外留学に挑戦できる、としています。また子どもの学習が夏休みで長期中断しない、夏休みに、教員が十分時間をかけて新年度の準備ができる、といった利点もあります。

9月入学に反対する教育研究家の妹尾昌俊氏は、社会全体が危機に直面し、対応に追われる行政や学校現場が疲弊する中で、こうした議論はあってもいいが、今優先させる話ではないし、今行うべきではない、と主張しています。義務教育の開始時期や会計年度などにずれが生じる、入試や資格試験、採用や就職活動の日程見直しの必要等、課題が山積しています。

9月入学・始業というこの制度を実現するために、少なくとも準備期間を含め5年~10年計画で検討する必要があると考えます。ある学年だけに負担をかけるのではなく、少しずつ段階的に進めていくものであり、国民全体の理解がなければ困難だと思います。

   このような議論は大切ですが、今は1日も早く学校を再開して、生徒の教育機会を確保したいと考えています。学校再開後も、コロナウィルスの第2波がこないとは断言できません。ICT機器の整備をすすめ、オンライン授業、インターネットを使った授業についても準備をすすめていきたいと考えています。

(校長室より)  「孤独のグルメ」(5/15)

 2016年4月から、上記タイトルの深夜番組がBSテレ東にてスタートし、2019年12月末まで(Season1~8)放映されました。現在は、オンデマンド方式等で、過去の放送がみられるようになっています。主人公は個人で輸入雑貨商を営む“井之頭五郎”、彼が出張で様々な街を訪れるのですが、その街で、昼食や夕食、デザート等を食べ歩くグルメ番組となっています。主人公の『それにしても腹がへった』というセリフを聞くだけで、心が和みます。主人公が食べるメニューは、本当においしそうなのですが、食べ物以上に、主人公を演じている俳優、松重豊氏の存在が、この番組の魅力になっています。

『PHP』(PHP研究所発行)という月刊誌の6月号に、松重豊氏が掲載されていました。タイトルは【グイグイいくだけが人生じゃない】というものです。松重氏はこんなことを言っています。

「俳優という仕事は、たしかにいろいろな経験ができます。すごい人に会えたり、ふつうの人が行けない場所に行けたりする面白さがある。役を通していろんな人の人生を知ることができるのも楽しいなと思います。でも画家や音楽家、小説家のように、自分の感情や思いを発して、それが作品になる人たちとは全く違う職業なんです。(中略)自分を入れ物だと思って、出来事をまず素直に受けとめてみると、案外マイナスな出来事の中にもプラスの面を見つけることがあります。それに気づけたら、人生は深みを増していくと思うんです。ぐいぐいいくだけが、いい人生じゃない。流れに身をゆだね、受け身で生きる。ひかえめな姿勢によって見つけることができる楽しみもあるんじゃないかと僕は思います。」

現在、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、多くの人々の在宅時間が長くなっています。案外マイナスな出来事の中にもプラスの面を見つけることがあります、と松重氏が述べています。いままで目をそむけてきた分野(読書、トレーニング、料理等々)へチャレンジしてみると、新たな楽しみがみつかるかもしれません。

(校長室より)  「農業クラブ全国大会」(5/7)

 4月28日付けで、全国農業高等学校長協会、日本学校農業クラブ連盟から、本年10月に予定されていた、第71回日本学校農業クラブ全国大会 令和2年度静岡大会の中止について連絡がありました。

農業クラブとは、全国の農業高校をはじめ、高等学校の農業に関する学科や総合学科で学ぶ生徒によって、高校ごとに組織されているもので、関係する生徒全員が加入しています。この全国大会には、平板測量競技会や農業鑑定競技会の他に、各都道府県大会(6~7月)や各ブロック(関東地区等全9地区)大会で、最優秀賞に輝いた代表生徒及びグループが、全国大会に出場し、意見発表・プロジェクト発表の各3部門で発表します。昨年10月に開催された第70回南東北大会には、私も本校農業クラブ役員とともに参加しました。この大会に出場して優秀賞を受賞した本校生徒(グリーンサイエンス科3年)の意見発表も、大変素晴らしい出来でしたが、各ブロック代表の発表もなかなかのものでした。

このような意見発表やプロジェクト発表は、農業クラブに加入している各学校で開催されます。本校では、校内発表大会を例年6月に予定しています。各部門別の学校で代表者を選び、7月に開催予定の群馬県大会に出場します。本年は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う臨時休業で、例年どおりに実施することは難しい状況となっていますが、このように自分で学んだこと、研究したこと、体験したことを、他者に話したり、大勢の前で発表したりするという活動は、先生や教科書に教えられる知識や情報を、頭の中にいれるインプットだけでは得られない学力が身につきます。得られた知識や情報を再構築して、自分の言葉で発信する(アウトプット)ことで、知識や情報の定着・活用が図られることになります。

【学びを結果に変えるアウトプット大全】の著者、樺沢紫苑氏はこのように述べています。「成長するためには、インプットとアウトプットをどんどん繰り返す必要がある。インプットとアウトプットをセットで行うことにより、螺旋階段を上るように少しずつ成長していく。」「インプットはただの【自己満足】にすぎない。【自己成長】はアウトプットの量にこそ比例する。」

生徒自らが、アウトプットすることによって成長できる、このような全国大会が中止になるのは大変残念ですが、新型コロナウィルスの感染拡大が収束した後、生徒が活躍できる多くの大会が実施できることを願っています。

(校長室より)  「オンライン授業」(5/1)

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、群馬県立学校では、臨時休業が5月末まで延長されることになりました。各学校では、webページでの連絡、一斉メール配信、教育支援アプリケーション等を活用して、生徒への連絡、動画配信、課題の配信・提出・解説、質問への回答等を行い、生徒の自宅学習が進められています。

4月27日付日本経済新聞で、欧米や中国で日常となりつつある「オンライン授業」をとりあげています。東京にある私立の中高一貫校では、あらかじめ各家庭の通信環境を確認、生徒は入学時にタブレット端末を購入し、4月から、全教科での遠隔(オンライン)授業を始めています。このようなオンライン授業では、パソコンやスマートフォンを使って、セミナーやミーティングをオンラインで開催するためのアプリケーション「Zoom」を使用しています。

この学校では、こうしたオンライン授業を始めるにあたり、様々な問題点が指摘されました。

「対面授業と同じことを遠隔で実施するという発想ではうまくいかない。」

「15分が限度であり、長時間の連続した講義はさける。」

「通信が途切れる可能性や双方向での会話ではタイムラグが生じることもあるため、対面授業と同じスピード感で進めることもできない。」

このような双方向のオンライン授業システムを取り入れている全国公立の小中高は、現在約5%ほどです。オンライン授業で音楽や体育実技など、全ての学習活動が可能となるとは考えられませんが、学校での授業が再開できない現状では、こうした取組にも注目し、インターネットを使った授業についてさらに検討していく必要があります。

(校長室より)  「自宅学習」(4/22)

 新型コロナウィルスの感染拡大により、全国各地の小中高校で臨時休業が継続し、本校においても、学校からの課題やスタディサプリの活用(1、2年)等で、生徒による自宅学習を進めているところです。

4月20日付け朝日新聞で、「東大教授が教える独学勉強法」(草思社文庫)を紹介しています。この本は、2018年、19年と2年続けて、東大生協(本郷キャンパス)の文庫本部門で、販売1位となりました。この本を書いた柳川範之さん(東京大学大学院教授)は、こんなことを述べています。

「理解のスピードは本来、人それぞれです。学校はカリキュラムが決まっているので同じ速度で進めますが、わからないところには1週間でも2週間でも時間をかけたほうがいい。(中略)たとえば、中2で数学が苦手だったら、まず中1の教科書を見返す。それでもわからなかったら、小学校の教科書のわかるところまでさかのぼる。いまだからこそ、そんな時間の使い方をしてはどうですか?」

現在、公的機関が発信する授業動画や、民間の動画配信サイトで、数多くの授業動画が利用できます。また全国の中高生の約90%が勉強にスマホを取り入れているといわれています。こうしたタブレット端末やPC等を利用しての自宅学習は、各自のペースで、各自のレベルにあわせて学習できる利点があります。

臨時休業という前例のない状況のなかでも、一人で勉強に向き合うことは、将来解答のない課題や問題にぶつかった時に、必ず役に立つと思います。

(校長室より)  「目指すべき目標、夢中になれるもの」(4/16)

 

 4月8日、本校で令和2年度第108回目の入学式が挙行されました。式辞のなかで、ラグビー日本代表のキャプテン、リーチマイケル氏の発言を紹介しました。

「ジャパンでは、朝5時から練習するときもあります。4時に起きて、4時半スタートもある。スクラム、ラインアウトやって、チーム練習やって、ウエイトやって、スキルもやって。1日、3回も4回も、練習をやってきました。僕は絶対、グラウンドに立たないといけない。ケガをする暇もない。」

このリーチマイケル氏の発言は、目指すべき目標があれば、夢中になれるものがあれば、それに向かって日々成長することができる、ということを私たちに教えてくれます。そしてラグビー日本代表は、日本中を感動させました。その理由は、チームがひとつになって、ひとつの目標にむかって日々成長していく姿を、我々に身をもって示してくれたからだと思います。

現在、本校は、新型コロナウィルス感染症拡大予防のため、臨時休業を継続させています。私たち教職員は、生徒が日々成長してくれることを願っています。生徒のみなさんは、学校が用意する課題や、公的機関や民間業者の配信する動画等を活用して、学習を継続してください。「目指すべき目標」を設定し、自分の意志で、自らを日々成長させてください。学校再開の時、みなさんが元気に登校する姿を、とても楽しみにしています。

 

 

 

(校長室より)  「餞(はなむけ)の言葉」(3/4)

 3月2日、本校にて、第107回卒業証書授与式が挙行されました。新型コロナウイルスの全国的流行による感染拡大防止のため、例年より規模を縮小し、保護者は各家庭1名、1、2年生は不参加での実施となりましたが、本校を巣立つ149名の生徒たちを、心を込めて見送ることができました。式辞にて餞(はなむけ)の言葉を3つほど述べたのでそれを紹介します。
 「一つ目は、学び続けてほしい、ということです。『学ぶ』というのは、希望する学校や企業に合格するためだけに行われるものではありません。自分を成長させ、他人を幸せにするためにするものです。愚痴やいいわけをいう人は成長できません。自分のまわりの人や社会を幸せにするために、自分の意志で新しいことを吸収して、自分を成長させてください。
 二つ目は、夢を持ち続けてほしい、ということです。みなさんにとって魅力的な大人とはどんな大人でしょうか。子どもたちは、夢にむかって走り続ける、そんな大人にあこがれます。それはプロスポーツ選手やオリンピック選手だけではありません。『大人になっても夢を追い続ける』ということを、子どもたちに見せてあげられる、そんな大人になってください。
 三つ目は、自分自身の人生の正解をみつけてほしい、ということです。今までの学習では、問題に対して解答が用意されていました。しかし社会にでると、正解のない問題ばかりがふりかかってきます。何が正しいか、何が幸せか、自分で考えなくてはなりません。こうすれば幸せになれる、という解答がないのです。自分自身の人生の正解をみつけて、幸せになってほしいと願っています。」
 卒業生のみなさん、保護者の皆様、ご卒業おめでとうございます。

(校長室より)  「違う」から友達になる(2/7)

 2月3日付上毛新聞のU22投稿欄に、ヴー・フォン・タオ(22才)さんの上記タイトルの文章が掲載されています。彼は2016年~日本に留学し、大学に通っています。日本で異文化に触れることは楽しいのでは、と思う人がいるかもしれませんが、彼の場合は出会った人の考え方、価値観をつい真似してしまい、自分の価値観を忘れてしまいそうになることもあったそうです。そして日本人と同じように生きて、ストレスがたまり、それが苦痛になりました。彼は、このように述べています。
「だから、ある時、その考えを捨て、自分なりに生きることにした。すると、だんだん自信が持てるようになり、多くの人の前でも自分の考えを伝えるようになった。自分を出すことで、友達が少なくなってしまうかもしれない、と不安だったが、そうではなかった。自分なりに生きることで、本当の友達ができたと思っている。」
 先日、フレディみか子氏の作品、「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」を読みました。彼女の中学生の息子さんを主人公にして、英国南部のブライトンという町の、多様な人種や格差のある生徒が集まる中学校での生活を描いたものです。様々な価値観をもつ生徒の中で、息子さんが孤軍奮闘して成長する姿が描かれています。様々な人種や多様な価値観のある人々と、学校生活をともにするのは、決して楽なことではありませんが、彼は自らの意志でその生活に飛び込んでいきます。
 これからの時代は、多様な人々と協働できる能力が必要です。子どもたちは、ヴー・フォン・タオさんや、ブライトンで頑張っている中学生のように、文化や価値観の違う人々と出会い、自分を成長させてほしいと思います。

(校長室より)  「英語能力指数」(1/22)

 来年度予定されている大学入学共通テストで、英語の民間試験活用が、見送られました。しかし英語の「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能をバランスよく勉強することが否定されたわけではありません。これら4技能を総合的に学ぶことは、これからの時代に必要とされています。
昨年12月18日付読売新聞に「英語能力指数、日本53位」というタイトルの記事が掲載されました。世界で留学などの教育事業を展開する「EFエデュケーション・ファースト」が、2019年の英語能力ランキングを発表しました。英語を母国語としない100カ国・地域のうち、日本は前年より4つ順位を下げて53位となったそうです。1位オランダ、2位スウェーデン、3位ノルウェー、4位デンマークとヨーロッパ諸国が上位に並びますが、5位シンガポール、6位南アフリカと続き、37位韓国、40位中国です。1位~14位は「非常に高い」、15位~29位は「高い」、30位~46位は「標準的」という評価になり、日本は47位以下で「低い」という評価になります。評価対象国は、昨年に比べ12カ国増加し、受験者数も100万人増え、約230万人になったそうです。
 日本の英語能力レベルをあげるにはどうすればいいか。1月14日付朝日新聞で、英国語学評価テスト学会創設者のバリー・オサリヴァン氏はこのように述べています。
「中国では国が開発した4技能テストを毎年150万人が受けており、AI採点などの技術が発達しています。こうした仕組みや研究を改良すれば、少ないコストで、2024年度から(国際基準の統一テストを)実施できるでしょう。他国の例などについて知見があるので、求められれば新制度作りに喜んで協力します。」
 今年度のセンター試験は、55万人7699人が受験しました。同様に英語の4技能テストも、センター試験と同様に、全国の高校生が受験できるようなものにしてほしいと思います。

(校長室より)教育格差という言葉がなくなる制度設計を(1/10)

 新年、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
早速ですが、昨年12月24日付朝日新聞にこのような記事が掲載されました。「来年度から大学など高等教育の学費負担を減らす文部科学省の新制度で、従来なら支援を受けられたのに対象外となる新入生が出ることについて、萩生田文科相は23日、【先輩はこういう家庭環境でこうだったのに、俺はという不満はあるかもしれない】とした上で、そうした学生が出ることに対し【制度の端境期なので、ぜひご理解を】などと述べた。」
この発言に対し、池上彰氏はこのように批判しています。「これは由々しきことです。制度を変えることで支援を受けられない新入生が出ることは、制度設計の欠陥というべきでしょう。」
 教育格差という言葉があります。生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれることを指します。このような格差のない国が存在します。それはフィンランドです。フィンランドでは幼稚園から大学まで学費が無料で、貧困の中からでも大学進学のチャンスがあり、首相にもなれます。
 12月24日付毎日新聞夕刊にて、小国綾子氏がフィンランドの女性首相(34歳)をとりあげています。彼女は幼い頃に父親のアルコール依存が原因で両親が離婚、貧困を経験しました。その後、母親とその女性パートナーに育てられました。中学までの成績は振るわなかったそうですが、高校や自治体の運営する施設で自分の居場所や仲間を見つけ、親族の中で初めて大学進学を果たしました。彼女は「私を救ってくれたのは福祉制度と学校の先生」と述べています。
 日本も、教育格差、という言葉がなくなるような制度設計をしてほしいと思います。

(校長室より)  「ユーチューバー」(12/26)

 「ユーチューバー」という職業?が子どもたちの間で人気職業ランキング上位にあがっています。有名なユーチューバーになると、その広告料で相当の収入が得られるようです。さまざまなジャンルのユーチューバーが存在しますが、12月24日付毎日新聞に、教員とも塾講師とも異なる“次世代の教育者”として注目されている「教育ユーチューバー」、葉一(はいち)さんが紹介されています。葉一さんは、ユーチューブで配信する授業動画がわかりやすいとして中高生を中心に多くの登録者(約76万人)を得ています。動画数は3206本(12/25現在)、開始から7年で動画の累計再生回数は2億回を突破しています。葉一さんは、記者の質問にこのように解答しています。
 「自分が想定しているのは基礎を定着させたい子。それは、集中や継続が苦手だった中高生時代の自分だったり、塾でつまずいた子どもだったり、というイメージです。授業で【わかる】という成功体験を得ることが、【やる気】の第一歩だと思います。」「子どもの生活の中で大部分を占める時間は学校の授業です。それなのに【わからない】と思いながら過ごすのは苦痛です。(中略)【前はわからなかった問題が解けた】のも【授業中に手をあげられた】のも成功体験だと思います。【勉強を頑張って良かった】という小さな成功体験を積み重ねることが重要です。」葉一氏の動画授業は、15分以内でまとめられていて、とてもわかりやすく丁寧に作られています。
 このような授業動画は、大手教育系企業も有料で発信しています。ある講座ガイドに登録すると、小中学校の復習から、難関大学受験対策まで、5教科18科目、1万5千本の授業動画をみることができます。私も高校の授業や、英検対策講座の授業を視聴してみましたが、とてもわかりやすく作られていて、予備校等で人気を得ている講師の実力をみることができました。苦手科目を学び直したり、高校受験や大学受験の勉強に利用したり、スマホでどこでも気軽に学習ができたり、という点でこのような授業動画は今後とも増加していくと考えられます。
このような授業動画の流行に対し、学校教育はどうあるべきか、今一度立ち止まって考える必要があります。

(校長室より)  「エドテック」(12/18)

 12月16日付日本経済新聞に、【「エドテック」花盛り】、という記事が掲載されています。「エドテック」とは教育(education)とテクノロジーを組み合わせた造語です。テクノロジーの力で教育環境が変わっていく動き・トレンドをさします。記事によれば、教育現場をテクノロジーで変えるアイデアを、大学生や高校生といった「学ぶ側」から生みだそうとする動きがあるようです。
11月4日、東京都内で開かれたエドテックの国際イベントで、マラソンのように長時間続けてアイデアを練る「アイデアソン」に高校生が挑みました。
グーグル賞を受賞したのは、政府が導入を進める「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)が実際の授業では定着していない、という問題意識で挑んだチームです。彼らは授業を活性化するため、AI(人工知能)を使った即興劇を授業にとりいれるアイデアを披露しました。
 アマゾン賞は「日本の高校生は学力が高いのに大学生になると低下する」ことを課題に掲げたチームが受賞しました。その解決策として「AIのサポートを受けながら生徒が中心となり授業を行い、自らが考え主体的に行動できる力をやしなう」ことを主張しました。
 経済産業省や文部科学省が後援するこの国際イベントは、今年で3回目となり参加者は3000人を超えたとのことです。
 教師から一方向の講義をだまって受け、たとえわからなくても他者と話すことなく授業が終わるまで座っている、という授業を高校生は求めていません。「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業の実現」については、文部科学省だけでなく、多くの高校生も求めていることがわかります。

(校長室より)  「読解力」15位(12/10)

 12月4日付朝日新聞によれば、世界の15歳を対象に3年ごとに3分野の力を調べる学習到達度調査(PISA)で、日本は2018年度の「読解力」の平均点が落ち、順位も前回の8位から15位に下がりました。コンピューターを使い、ネット上の多様な文章を読み解く力や、根拠を示して考えをまとめる自由記述形式が弱い、思考力や表現力が伸び悩んでいる、と指摘しています。調査方法が前回、紙からコンピューターを使う形となり、測る力が今回、ブログや電子メールなどを対象とした「デジタル読解力」へと変わった影響も大きいとの指摘もありました。また大量の情報から必要なものを選び出したり、情報を疑ってみたり、自分の考えを表現したりする力も不足していると述べています。
 2020年度に始まる大学入学共通テストで導入予定の、国語と数学での記述式問題について、実施を延期する方向で調整に入ったとの記事が、各新聞で報道されています。採点者の質の確保や自己採点の不一致率の高さなどが課題となっているようです。記述式の導入は「生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進む」「より主体的な思考力・判断力の発揮が期待できる」などが期待されていましたが、指摘されている問題がクリアできなければ、延期となるようです。
 大学入学共通テストにおける記述式問題の導入が仮に延期されても、自分の考えを表現する記述力や「デジタル読解力」はこれからの時代に必要な能力です。朝日新聞の記者が、数年前にPISAの担当者に言われたことを最後に紹介します。
 「学校で優等生だったのに就職後はさえない人がいる。それは何故なのか。」「細かな知識はネットで得られる。知識よりも知恵を出して事態を突破する力が求められています。」(12月4日付天声人語より)

(校長室より)  英語民間試験見送り(12/5)

 大学入試センター試験に代わり、2020年度に始まる予定の大学入学共通テストにおいて、地域や所得による不公平が生じる可能性を問題視された英語民間試験の導入が延期となりました。11月27日付毎日新聞で、関西学院大准教授寺沢拓敬氏はこのように述べています。
 「文科相は検討会議を設け、今後1年間で4技能をどう評価するか検討するといいます。しかしそもそも【学習指導要領が4技能を育てようとしているのだから、それを入試で評価せよ】という考え方は正しいのでしょうか。まずは高校の授業で適切に評価すべきで、【話す力】【書く力】が入試で測りにくいなら、調査書で見てもよい。いきなり入試につなげるのはジャンプしすぎです。」
 寺沢氏は、英語力を伸ばす処方箋として、以下のことを指摘しています。①クラスの規模を小さくする。②4技能指導になじみのない教師に研修機会や授業準備の時間を与える。③教員養成の段階で指導力を育てる。いずれもお金と時間がかかる政策ですが、高校の授業においても、時間をかけて少しずつ改善をしていく必要があります。
 文部科学省は公立中高の英語教育に関する調査を公表しています。2017年度の中学3年で英検3級以上の英語力を持つ生徒は40.7%、高校3年で準2級以上の生徒は39.3%となっています。両方とも目標の50%には届いていません。何故子供たちは英語の4技能を学ぶ必要があるのでしょうか。それは大学入試を利用するしないに関わらず、グローバルなこの社会で活躍するために、多様な人々と協働できる能力を身につけるために、必要と思われる技能だからです。

(校長室より)  武井壮(11/25)

 百獣の王、武井壮氏に注目しています。武井氏はTVタレントとして活躍していますが、その経歴や発言は、様々なメディアにとりあげられ、誰もが武井氏を認め、そして他の人に勇気を与える存在になっています。
武井氏は、中学で野球、高校でボクシングに取り組んでいましたが、大学時代に短距離走を始め、大学3年次に十種競技に転向します。大学卒業後、第81回日本陸上競技選手権大会十種競技において優勝します。100m走ベスト記録の10秒54は、2015年まで十種競技・100mの日本最高記録でした。
 卒業後は陸上をやめ、プロゴルファーやプロ野球選手を目指しましたが、2003年(30歳)のころから芸能活動を始めました。当初はタレントとしてなかなか売れず、2004年から2013年まで家なし生活をしていました。武井氏は、売れているタレントや芸人さんは何故面白く、たくさんの仕事に恵まれているのかを、その話術や生活態度等を中心に一生懸命に研究したそうです。

 11月20日付毎日新聞の赤坂電視台の欄に、武井壮氏の発言が掲載されていますので一部紹介します。
「毎日3時間、自分自身をアップデートしています。体力トレーニング1時間、知らないことの勉強1時間、楽器やゲームなど未経験の技術習得1時間が日課で、忙しくても必ず続けています。その理由は、昨日テレビに写った自分はもう消費された自分。それと同じ体力と知識と能力のまま、翌日カメラの前に立つのが嫌なんです。少しでも成長した自分をお見せすることが、視聴者の皆さん、スタッフ、番組関係者など、今の僕に大きな価値を与えてくれている方々への恩返しだと思っています。」
 武井氏は、SNSでこんなことも言っています。
「オレは鍛えるのが好きなんじゃなくて成長するのが好きなんだ。その手段として鍛えるってのがひとつあるからやる。それ以外も成長できるならなんでもやってやる。成長は1番の娯楽だ。」「誰かに楽しんでもらわなきゃ価値がないと気付いてから少しずつ成長できたと思う。」
 武井氏の言葉は、多くの人を勇気づけます。

(校長室より)  ヨーヨーで世界つかむ(11/20)

 11月18日付日本経済新聞の「先輩に聞く」欄に、ヨーヨーパフォーマーのBLACKさんが紹介されました。BLACKさんは、世界的サーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」への出演を志し、会社員の職をなげうって日本を飛び出しました。ヨーヨーとカタカナ英語を武器に夢を実現し、その活躍ぶりは2020年から始まる小学生向け英語教科書で「世界に活躍する日本人」として紹介されています。
 BLACKさんは、青山学院大学在学中にヨーヨーの世界チャンピオンになります。大学卒業後、システムエンジニアとして就職しましたが、毎日終電で帰るような仕事で、肉体的にも精神的にもつらい日々が続いたそうです。なんとかこの状態から抜け出し、自分に自信を与えてくれた、ヨーヨーによるパフォーマーへの夢を捨てきれず退社し、シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けます。26歳からバレエを始め、体を滑らかに動かす技術を習得することで、芸術性の向上に努め、無事にオーディションに合格します。
 BLACKさんは、中学生の時にヨーヨーと出会い、練習すれば上達するということがとても嬉しく、学校が終わるとすぐに家に帰り、壁を傷だらけにして1日6~8時間練習に没頭したそうです。BLACKさんは夢中になれるものを中学生の時に発見し、紆余曲折はありながらも、それを現在の仕事にすることに成功しました。

 この記事は最後にこのように述べています。
「チャンスはたまにしか訪れず、待っている時間のほうが断然長い。人生が前に進まず止まってしまっているように感じることもある。それでも自分は何に幸せを感じるか。どんな日々を過ごしたいのか、ということを明確にイメージできれば、周りから愚かな選択だと言われようとも、人生の選択に迷わないはずだ。」

(校長室より)  読書の意義(11/8)

11月4日付日本経済新聞に、文字・活字文化のありかたを考えるシンポジウム「スポーツが開くことばの世界」についての記事が掲載されました。10月3日に開催されたこのシンポジウムには、元陸上選手の為末大氏、作家の堂場瞬一氏、慶応義塾大学教授の今井むつみ氏がスポーツと読書の関係について話しています。その中で、読書の意義について、このように述べています。
今井氏「読書を介して、書いてあったことを覚えている必要はありません。昔読んだ本で、わくわくした感じは覚えている。知識が豊かになることが一番ではなくて、やはり過程が大事なのかなと。結果として一人ではできないような物の見方ができて世界が広がる。そこが大きいと思います。」
為末氏「僕は、高校、大学、会社まで陸上で入りました。ほかの教科はひどかったですが、国語はすごく好きでした。結局、考えることは全部読書でやったような気がするんです。(中略)大量の考えが書かれた本を読むことで多面的な主観を持つことができ、それが擬似的な客観になっているのではないでしょうか。」 
堂場氏「僕は共感できない人が出てくる本が好きです。それは自分が知らないものを教えてくれるから。嫌なやつだけどこういう見方もあるんだなだとか、何でこんな嫌なことをしたのだろうかと行動の心理を読むとか、【非共感】の部分を経験できるのが読書じゃないかと思います。」
読書は、スポーツ選手に限らず、各個人が持っている世界を広げる力があると思います。
そして読書は知識のインプットになりますが、この知識や感動をアウトプットする方法があります。それが「ビブリオバトル」です。10月26日に群馬県内の高校生によるビブリオバトル大会が、群馬県立図書館にて開催されました。1人5分の持ち時間で本を自由に紹介した後、来場者からの質疑に答え、来場者が一番読みたくなった本に投票するというものです。本校からも2名参加しました。2人とも明るい笑顔で選んだ本の魅力を、身ぶり手ぶりを交えて伝えることができました。あなたもこのビブリオバトルにチャレンジしませんか。

(校長室より)  人生の「正解」(10/31)

 10月25日付け朝日新聞の声(投稿欄)に、兵庫県に住む大学生21歳の文章が掲載されました。タイトルは「私は人生の【正解】がほしい」というものです。一部抜粋します。
「高校までは何に対しても【正解】がありました。教科書の問題は解答ページに、取るべき行動は校則に、他の細かいことはすべて先生が答えをくれました。勉強して、良い大学へ行って、素敵なパートナーを見つけることが、私にとって正しいことだと思っていました。(中略)
 しかし大学や社会に出ると突然、正解のない問題ばかりが降りかかってきます。何が正しいか、何が幸せか、自分で見極めろと言われます。(中略)
 幸せになることが人生の目標だとすれば、目標が何なのかわからない今、どこに向かって歩けばいいのですか。私は人生における【正解】が欲しいです。『こうすれば必ず幸せになれる』と誰かに言ってほしいです。」
 先日、本校で第39回邑楽・館林地区七校合同読書会が開催されました。本校をはじめ7校の生徒が集まり、テキスト:『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜著)、メインテーマ:もしも大事な人や愛する人が、余命幾許もないと宣告されたらどうするか、という内容で活発な議論が行われました。本の中から、人生にとって大切なことは何か、幸せとは何か、という問いの答えが見つかるかもしれません。多くの高校生に本を読んでほしいと思います。

(校長室より)  「女性学のススメ」(10/15)

 10月10日、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏による、上記タイトルの講演が館林市文化会館で開催されました。主催は館林女子高校で、高校生と一緒に講演を聴くことができました。その内容は、女性学とは何か、学問は何の役にたつのか、といった大変興味深いものでした。
 上野氏は「従来、男性が関心を払わず、学問として価値がないと思われてきた【女性】を研究の対象にしてきた。」と自らの履歴を話し、「女性学」は何の役にたつのかと言われながら、女性の経験の言語化と理論化に努めてきたことを説明しました。その成果として、性的な嫌がらせ・からかいが「セクハラ」、つきまといが「ストーカー」などとして認知されてきたことを挙げています。学問とは、今まで誰も研究しなかった分野や、誰も疑問にしていない新たな対象を見つけ、「何故?」という疑問を徹底的に考え抜いた上で発信していく必要がある、として学問の厳しさを述べました。

 また上野氏は今春、東京大学入学式の祝辞で学内での性差別を非難し、合わせて「受験勝者」の社会的責任を説明しています。その一部を紹介します。
「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公平に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。」(中略)「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。」
 社会における女性をはじめとしたマイノリティに対する優しさの欠如を東大生に指摘しています。この祝辞はニュース等で話題になりました。社会的弱者やマイノリティに対する不当な差別をなくすために、教育関係者も差別の事実を認識した上で教育活動をしていく必要があります。

(校長室より)  「よくもそんなことができる」(10/4)

 9月23日、ニューヨークの国連本部で開催された気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16歳)が演説しました。その内容を一部紹介します。
「よく、そんなことができますね。あなたたちは実体のない言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪ったのです。生態系全体が崩壊しています。私たちは、まさに大量絶滅の始まりにさしかかっているのです。そして私たちが語り合うのは、お金や、途絶えることのない経済成長のおとぎ話だけ。」(中略)
「私たちは決してあなたたちを許しません。今ここで、一線を引きます。世界は目を覚まし始めています。変化も訪れ始めています。たとえあなたたちが気に入ろうとなかろうと。」
 怒りに震えたこの5分間の演説は、このサミットに参加した人だけでなく、SNSをとおして、世界中の人々に伝わりました。16歳の彼女が、自分の意見を、世界にむけて発信したことに驚きを覚えました。誰もが自分の意見を発信することができますが、その内容が多くの人に伝わったという点で、大きなことを成し遂げたと思います。彼女の意見に対して、中身がない、勉強不足だ、という反論もありますが、彼女の意見に対して、大人は真摯に受け止めて議論しなければなりません。彼女はまだ成長途中です。彼女の将来が楽しみです。

 『同調圧力』望月衣塑子他著(角川新書)を読みました。この国は同調圧力が強い、それが政府やマスコミの中に存在している、という内容です。この本のあとがきに、こんな言葉がのっています。「他人の期待に沿うための人生ではなく、自分がやりたいことをやっておけばよかった。」 自分の意見をもつことは重要です。他人や周囲の考え方に振り回されるばかりでは、自分の人生を主体的に生きることは困難です。自分のやりたいことは何なのか、自分の意見は何なのか、しっかり考えてほしいと思います。

(校長室より)  「授業動画」(9/27)

先日、「Find!アクティブラーナー」という、webページのことを書きました。このページでは会員になると2000以上の授業、講義、講演をみることができます。この動画は、保護者や教員等教育に関係する社会人用のものと考えられますが、児童生徒用授業動画はさらに進んでいます。
9月27付読売新聞に、「授業動画で受験勉強」という記事が掲載されました。記事によれば、学校外の勉強などで、スマートフォンのアプリやインターネットを利用した民間の学習サービスが広がってきているとのことです。都合のいい時間に授業の配信動画を繰り返し見たり、講師にオンラインで遠隔指導を受けたり、スタイルは様々です。記事では徳島県の私立高校に通っていた高校生が、今春早稲田大学政治経済学部に合格した事例が掲載されているので紹介します。
「受験勉強で頼りにしたのは、教育アプリの【スタディサプリ】だ。月額980円(税別)で5教科18科目の授業動画計約4万本(1本15分程度)が見放題になる。(中略)現代文や英語、日本史の授業動画を繰り返し見ることで「基礎固め」ができ、高校で受ける模試で自分の課題を見つけた。『わからないところは何度も授業動画で確認した。有名講師による授業はポイントが押さえられ、理解しやすかった。』(中略)この教育アプリは、大学受験生のほか、小中学生や社会人向けの授業動画もあり、全体の有料会員(昨年度)は約84万人に上る。」

予備校の衛星中継による授業や授業動画は以前からありましたが、このように自分の学力や目的に合わせて、様々な授業動画がみられるこのサービスはこれからも増加していくと考えられます。個々の進度に応じた学習を効率的にできる利点はありますが、児童生徒の自己管理能力も問われることになります。
こうした個々に合わせた講義形式の授業を児童生徒がみられるようになると、学校の授業はどうしたらよいでしょうか。答えはすでにでています。知識をインプットするだけではなく、その知識をどう使うのか、どのようにアウトプットするのか、書いたり話したり議論したり、能動的な活動を取り入れて、講義だけでは得られない思考力・判断力・表現力、あるいは主体性をもって、多様な人々と協働できる能力を身につけることができる、そんな授業が必要となります。

(校長室より)  「空気」を読んでも従わない(9/20)

岩波ジュニア新書で、鴻上尚史氏の著書を読みました。
「どうしてこんなに周りの目が気になるの?」
「どうしてこんなに先輩に従わないといけないの?」
「どうしてこんなにラインやメールが気になるの?」
「それはあなたが弱いからではなく、すべて理由があります。そのヒミツを知れば、あなたはうんと生きやすくなるでしょう。」
鴻上氏はまず、「世間」という言葉を説明します。「世間」とは、あなたと現在または将来、関係のある人達のことです。「社会」という言葉はその反対語で、あなたと現在または将来、何の関係もない人達のことです。「世間」に属する人達を親しく感じ、「社会」に属する人達には距離を感じるということです。
次に、外国の話になります。ほとんどの外国には「世間」はありません。欧米をはじめとしたほとんどの外国は、「社会」しかありません。つまり自分が知っている人達と知らない人達を分けないのです(中略)。外国の人が、人の頼みをにっこり笑って断れるのは、「社会」にずっと生きているからです。「社会」に生きる相手は、自分の都合で頼みごとをしてくると知っています。だから、いちいち、断ることを申し訳ないと思う必要がないのです。ですから、あなたが人の頼みをなかなか断れないのは、あなたが弱いからではないのです。
この後は、相手が世間なのか、社会なのかを判別する。空気を読んでも従う必要はない。年上がエラいとは限らない。世間はイケニエを必要とする時がある。世間はなかなか変わらない、などの記述が続きます。世間という日本的な考え方を理解すると、世界の国々のように、「世間」や「社会」に身をまかせないで、戦う必要があることがわかってきます。
最後の方で、このような記述があります。
この国は同調圧力が強い国です。同調圧力に負けないでちゃんと生きていくためには、知恵をつけることです(中略)。あなたの「世間」や「空気」との戦いを心から応援します。自分の人生を決めるのは、自分であって、「他の人がどう評価するか」ではないからです。

(校長室より)  「イチロー選手」(9/12)

9月3日付、内外教育(時事通信社)のラウンジ欄に、イチロー選手のことが掲載されました。「野球の魅力とは?」という質問に、このように答えています。
「団体競技なんですけど、個人競技なんです。それが面白い。個人としても結果を残さないと生きていくことはできない。本来はチームとして勝っていけば、チームのクオリティは高い。でも決してそうではない。あとは同じ瞬間がないこと。必ずどの瞬間も違う。これは飽きが来ないですね。」
この回答を聞いて、筆者は、教職にもあてはまると感じたそうです。
「教職は学校という場を舞台とした組織専門職であると考えてきた。しかし、普段の教育活動は、教室を場とした個人の営みであるとも考えられる。(中略)同じ学年に同じ単元を教えても、教室で繰り広げられる状況に同じ瞬間はない。よい授業をしようと思えば、不断の相違工夫が求められ、教職は生涯、試行錯誤の繰り返しである。常に自分との闘いをしてきたに違いない名選手の一言は、心にストンと落ちた。」
話は変わりますが、先日、河合塾が主催する「対話のひろば、第6回イベント」に参加しました。今回のテーマは、「対話を通して、思考力・判断力・表現力を測る問題をつくろう!-地理編-」というものです。参加者は、高校教員のほかに、文部科学省の教科調査官、大学教授、塾の教員等様々な職にある方で、40人が集まりました。第一部は河合塾講師の佐藤裕治先生が、地理の入試問題を紹介しながら、問題作成のポイント等について解説していただきました。第二部は、集まった先生方がいくつかの素材をもとに、グループで問題作成にチャレンジしました。地理を専門としている先生方が集まり、いい問題とはなにか、学力の識別力があるか、独自性はあるか等々、議論を重ねることができました。よい授業、よい問題を作成するために、全国の先生方が頑張っている様子をみることができ、刺激を受けました。まさに教員という仕事は、生涯、試行錯誤の繰り返しであることを実感した、楽しいイベントでした。

(校長室より)  「新入生の窓口相談AIで」(9/9)

9月2日付日本経済新聞の教育欄に、上記タイトルの記事が掲載されました。芝浦工業大学が新入生の窓口相談を効率化するために、スマートフォンで質問を送れば人工知能(AI)が自動応答するシステムを開発したそうです。村上雅人学長は、このように述べています。
「最近は、AIの発達でチャットボットと呼ばれる対話型回答システムが登場している。学生が日常的に使っているスマートフォンなどで簡単なキーワードを入力すれば、最適な情報またはそのアクセス方法を自動応答で得られる。窓口で繰り返される単純な質問は、チャットボットで解決できるのではないかと考えた。(中略)今年3月にチャットボット【SIT-bot】が完成、4月から実際にLINEを使って窓口業務に投入した。導入2ヶ月で1万件を超える質問が寄せられ、学生の評判は上々である。(中略)SIT-botの導入で、単純作業は機械に任せ、教職員はより創造性の高い仕事に取り組めるようになった。さらに、蓄積される学生からの質問は、学生の要望や知りたいことを把握する上で極めて参考になり、これを分析すれば、さらなる業務改善や学生サービスの充実につながるはずだ。」
 上記の内容は、「AI」が労働者(教職員)と共存していることを示しています。ビッグデータの処理能力という点で、人間はAIにはかないません。単純作業にも音をあげません。これからの子どもたちは、将来このような「AI」と共存して働くことになります。データ処理や単純作業はAI(機械)にまかせ、創造性の高い仕事や、困難な課題に取り組める人材を、これからの社会は必要としています。

(校長室より)  「平塚農業高校」(9/2)

 8月19、26日の2週にわたって、日本経済新聞の教育欄に神奈川県立平塚農業高校園芸科学科がとりあげられました。抜粋して紹介します。
「この日収穫する野菜や果物は約10種類。それぞれに大きさや色の濃淡を見ながら、収穫のタイミングを探る。校内で開く市場で販売するため、見定める表情も真剣だ。『これ大きいよねー』取ったばかりのピーマンを見せ合うと笑みがこぼれた。」(8/19)
「梅雨の時期は虫がつきやすく、無事に実らせるまでが大変だ。(ビワの収穫では)うっかり落とさないよう注意が要る。丹精込めて育てた農作物を『おいしい』と言って食べてもらえると、農業に就きたい思いが強くなる。」(8/26)
 本校農業科の生徒たちも、夏休みの期間中、担当を決めて実習を行い、農作物を、丹精込めて育てています。農作物の生育に夏休みはありません。本校では、春に続いて、秋にも【泉農フェア】が実施されます。丹精込めて育てた農作物で、地域の人々に喜んでもらおうと、生徒たちは今日も授業・実習に取り組んでいます。

(校長室より)  「アクティブラーナー」(8/27)

 「双方向型学習へ転換を」、8月19日付日本経済新聞で総合研究大学院大学学長の長谷川真理子氏はこのように主張しています。
「これまで、日本の大学の授業といえば、週に1回、90分の講義を通年で行うというのが普通だった。たいていは大人数の講義である。まずはこれを変えるべきだ。質問と討論による、教員と学生との間、また学生同士の間のより密接な相互作用が必要である。(中略)18歳人口の半分が大学に進学するようになれば、学生の知的レベルにはかなりの幅ができよう。それでも、どんなレベルの学生であれ、高校までの受動的な学習を転換し、自分で調べて考え、議論する、という態度を身につけることはできるはずだ。それによる到達点は、学生によって異なるだろうが、そのように主体的に考えるという環境は、すべての大学生に与えられるべきであり、大学で過ごした人間はそこが違うという付加価値が見えるようになるはずだ。」
長谷川氏の指摘する双方向型学習とは、新学習指導要領でも取り上げられている、アクティブ・ラーニングの視点をもった授業(学習)のことであり、「主体的・対話的で深い学び」のことです。高校においても、このような学習は必要とされています。具体的にはどのような授業(学習)なのでしょうか。実際の授業をwebページで見ることが可能です。
数年前から「Find!アクティブラーナー」という、webページの会員になりました。このwebページでは、「生徒の主体性を引き出したい全ての教員・親の皆様に、授業動画・ニュース・教材を提供する、日本で唯一のプラットフォームです。」と紹介されています。このページでは2000以上の授業・講義を見ることができ(会員のみ、一部無料コンテンツあり)、その数は日々増え続けています。このサイトの理念は、「すべての子どもたちをアクティブラーナーに」というものです。ぜひこの動画を多くの先生方や保護者の方に見てほしいと思います。
(参照webページ https://find-activelearning.com/ )

(校長室より)  「主体的に学ぶ」(8/20)

 7月、主体的に生きてほしい、という話を生徒たちにしました。8月12日付日本経済新聞の池上彰氏のコーナー「若者たちへ(池上彰の大岡山通信)」で、「主体的に学び、自ら発信」というテーマの記述がありましたので、その一部を紹介します。
「ユニークだったのは授業のあり方に関する発表でした。【主体的に参加するには】【どうすれば面白くできるか】という問題定義がありました。(中略)ある学生は、課題を克服するために【授業で質問しよう】と提案しました。きっかけは【パックン】の愛称で知られるパトリック・ハーラン氏の講義を受講したことです。対話を通じて新たな発見が生まれ、授業が面白くなったといいます。一方的に教えられるのではなく自ら講義に参加してつくっていくこともできます。これぞ大学の学びの姿勢です。」

 この文章は、池上氏が数年前から勤めている東京工業大学にて、7月に開かれた教養卒論発表会を取り上げています。池上氏が東工大に着任したころは、学生は自分の考えを人前で伝えたり、他人とコミュニケーションしたりすることが苦手だったようです。この数年で明らかに変わったといいます。
本校においても、「主体的・対話的で深い学び」ができるような授業や実習を目指しています。生徒たちは、主体的に生きることと同時に、主体的に学ぶ手法を身につけ、自ら発信できる力を手にいれてほしいと思います。

(校長室より)  山(8/9)

8月4日付朝日新聞の投書欄のテーマは、「山」でした。「両親に教わったすばらしさ」というタイトルの文章を一部紹介します。
「山好きだった父のおかげで、子供の頃の夏の旅行は、家族で3、4泊の日本アルプスの山歩きだった。(中略)成人してからは、仕事の合間に百名山を目指すほど熱中した。今は子供と日帰りハイキングに行く程度になったが、山のすばらしさを教えてくれた両親には、本当に感謝している。」
私も、毎年夏に登山をしています。富士山や磐梯山、那須岳、燕岳、雲取山、常念岳など、百名山を目指しているわけではありませんが、登山を楽しんでいます。この投稿欄にはこんな文章もありました。
「10年ほど、東京の高尾山に登っている。初めの数年は、夫と一緒に紅葉の頃に登った。きつかったけど、ダイエットに成功したら、楽になった。近年は混雑する前の10月くらいに、一人で行く。目的は体力検査だ。」
登山をする目的は、人によって違います。家族旅行、百名山、体力検査等々、多くの人々が登山を楽しんでいます。何度登っても登山はきついですが、疲れても、疲れても、また登りたくなります。この夏も山に登り、英気を養いたいと思います。

(校長室より)  知らない世界を知ること(8/5)

7月28日付朝日新聞に、「千葉大【全員留学】を義務づけへ」というタイトルの記事が掲載されました。
「来春から千葉大が、入学者全員に【海外留学】を必修とすることを決めた。授業料も値上げする。【全員留学】は一部私立大学や国際系学部では広がりつつあるが、同大によると、国立大が大学院を含め全学で義務づけるのは初めて。」
【全員留学】は、国際教養大(秋田市)や早稲田大国際教養学部など、国際系の新学部や一部私大でも始まっています。ある大学では、新入生の入学式の日に、短期留学できる旅行の準備(荷造り)をさせて、入学式終了後すぐに海外留学に出発させるようです。千葉大学の小沢副学長は、「千葉大が今進めている教育改革の最大の目標はグローバルな社会で生きていける人材を育てること。その環境整備の柱の一つが全員留学です。在学中に最低1度、2週間から2ヶ月間、まずは海外をみて考えてほしい。」と述べています。
 本年2月、文部科学省で開催された「トビタテ!留学JAPAN」第4回留学成果発表会を参観してきました。そこでは大学生の他に高校生の発表もありました。彼らは、回りに日本人が誰ひとりいない環境に放りこまれ、言葉の壁に悩み、数日間は挫折を味わいます。しかし、このままでは何も得られないと開きなおり、何がわからないかをホストファミリーや先生や他国の学生達たちに問いながら、少しずつ自分の意見を伝えられるようになっていきます。海外では自分から前にでて積極的に発言しないと、誰も助けてくれないし、何も教えてくれません。語学力や異文化理解力だけでなく、挑戦する力やコミュニケーション力、積極性などを手に入れます。そして何よりも素晴らしいのは、彼らが同年代の海外の若者と交流し協働することで、様々な刺激を受けて将来の夢につなげていくことです。人生には多様な選択肢があることを知るきっかけになります。
留学が難しければ、ボランティアや地域貢献でもかまいません。知らない世界を知ることで、その後の人生に大きな影響を与えるはずです。
多くの高校生、大学生に海外などの未知の世界に飛び出してほしいと思います。

(校長室より)  「7つの習慣」(7/30)

今回は、本の紹介をします。タイトルは「7つの習慣」(ティーンズ)、ショーン・コビー著作です。この本の元になっているものは、スティーブン・R・コビー氏の著作「7つの習慣」で、全世界で販売部数3000万部を記録した本であり、20世紀に最も影響を与えたビジネス書の1位に輝いています。これは、そのビジネス書を、中学生~高校生向けにわかりやすくしたもので、「7つの習慣」を様々な生活シーンの中で取り入れることで、将来に向けた正しい「選択」ができるように書かれたものです。
7つの習慣とは、①主体的になる、②終わりを考えてから始める、③一番大切なことを優先する、④Win-Winを考える、⑤まず相手を理解してから、次に理解される、⑥シナジーを創り出す(チームで協働して結果を出す)、⑦自分を磨く、となります。これら一つ一つについて、自分、親、友達、学校の先生等、それぞれと関わる場面を具体的にふれながら説明がなされます。今回は、この本で指摘されている2つの視点を紹介します。
1つ目は、自己信頼口座(残高)という視点です。これは、第1の習慣に入る前に、私的成功を勝ちとる方法として紹介されています。自分自身を信頼するために何をすればいいのでしょうか。①自分に約束したことを守る、②小さな親切をする、③自分に優しくなる、④正直になる、⑤自分を再新再生する(自らをリフレッシュし、生まれ変わらせる)、⑥自分の才能を開発する、これらを実行すれば自分自身への信頼残高を増やすことができます。ちなみにこの残高を減らす行為は、自分に約束したことを破る、内にこもる、自分を痛めつける、嘘をつく、自分をすり減らす、自分の才能をないがしろにする、となります。
2つ目は、人間関係信頼口座(残高)という視点です。これは、第4の習慣に入る前に、公的成功を勝ち取る方法として紹介されています。他人からの信頼を得るために何をすればいいのでしょうか。①約束を守る、②小さな親切、③誠実、④人の話に耳を傾ける、⑤謝る、⑥見通しをはっきりさせる、これらを積み重ねれば、信頼を得ることができます。他人からの信頼を失う行為は、約束を破る、人と関わらない、うわさ話と裏切り、人の話をきかない、横柄な態度をとる、物事をうやむやにする、となります。
多くの中学生、高校生に本書を読んでほしいと思います。

(校長室より)  「主体的に生きる」(7/23)

7月19日(金)1学期終業式にて、私から2点ほど生徒に話をしました。
1つめは、命と時間の話です。私は、本年1月、前任校に勤務していましたが、ある朝、小学部の児童が自宅で亡くなりました。朝、お母さんが気づいた時にはすでに亡くなっていたそうです。彼女は障害をもっていましたが、1~2学期はほとんど休まず元気に学校に登校していました。学校が大好きでした。彼女の人生は11年間でした。時間にすると約10万時間です。みなさんがもっている命(時間)は、あと何時間ありますか? たとえば、明日、命を失うと仮定すると、残りの人生はあと24時間程度です。30日後に命を失うと仮定すると、720時間ありますが、3分の1は寝ていますからあと480時間程度です。平均寿命というのがありますが、あくまで平均なので、みなさんがもっている残りの時間は誰にもわかりません。そして死ぬまでの時間は確実に減っていきます。時間を無駄に過ごすことは、命を無駄にすることと同じです。3年生は進路実現のため、夏休み39日間、1日1日が重要な時間となりますが、同様に1・2年生にとっても時間(命)を大切に使ってほしいと思います。
2つ目は、主体的に生きてほしいということです。この言葉は言い換えると、自分の道は自分で決めて生きる、ということです。あなたの未来は、誰が決めるのでしょうか。友達、両親、学校の先生でしょうか。自分の進むべき方向が明確でないと、まわりの人と同じような選択をすることが多くなります。まわりの人が正しい行き先を知っているのでしょうか? 先のことなんて、誰にもわかりません。人と同じことをやっても、あなたに合う保証はありません。20歳のとき、30歳のとき、どんな未来が待っているかなんて、誰にもわからない。だから、どの道が自分にとって一番いいか、自分で判断して、自分の道を決めてほしい。もし決まっていなければ、この夏、徹底的に考えてください。残された時間は限られています。残された時間は、確実に減っていきます。限られた命、限られた時間を大切にして、自分の進むべき道を考えてほしいと思います。

「教える」を学ぶ(7/8)

7月1日(月)に太田市立休泊小学校における、生物生産科の「草花栽培交流」が行われました。またグリーンサイエンス科は学校付近の幼稚園のこどもたちと、6月のジャガイモほり、11月のサツマイモほりが予定されています。他にも食品科学科のパン作りなど、太田市内の中学校、館林特別支援学校、太田高等特別支援学校との交流も予定されています。
このような交流は、本校の生徒が普段学んでいる知識・技術をどのように伝えるか、ということを主眼としており、資材の準備や会場設営、司会進行、技術支援等を生徒が主体となって行っています。
6月23日付朝日新聞の教育欄「いま子どもたちは」のコーナーで、高校生「教える」を学ぶ、と題して特集が掲載されています。京都市立塔南高校の2007年にできた教育みらい科の生徒は、近隣の小学校を訪ねて授業を行うそうです。ある生徒はこんな感想を述べています。「自分がよく知っていることでも、知らない人に教えるのは本当に難しい。授業本番までにいろんなことを学んで工夫しないと」
アメリカ国立訓練研究所の研究によれば、平均学習定着率がラーニングピラミッドに表現されています。これによれば、講義を受ける5%、読む10%、視聴する20%、実演してもらう30%、議論する50%、自分で体験する75%、他人に教える90%、となります。他人に教えることは、学んだことを定着させる最高の方法となります。
 本校生徒も、本校で学んだ知識・技術を他者に教えることを通じて、知識・技術を定着させると同時に、自分たちで協働して考える力を身につけてほしいと思います。

(参考、ラーニングピラミッド)


(校長室より)  「マンダラチャート」(6/27)

6月14日付内外教育(時事通信社)で、曼荼羅図を使った目標管理が紹介されました。曼荼羅図とは平安密教で宇宙の真理を表す仏の配置図のことですが、この図を、大リーグのエンゼルスで活躍している大谷翔平選手が、高校1年生の時、野球部監督のアドバイスを元に活用しました。
 これは目標管理シート、通称「マンダラチャート」と呼ばれます。大谷選手の場合は、中央に「ドラフト1位8球団」という最終目標を置きました。その周囲に8つの中目標を置きます。具体的には①からだ作り、②コントロール、③キレ、④メンタル、⑤スピード160キロ、⑥変化球、⑦人間性、⑧運、というものです。「人間性」や「運」を中目標においていることに驚きました。さらに8つの中目標に具体的な行動目標を位置づけます。「運」における具体的な行動目標は、あいさつ、ごみ拾い、部屋掃除、道具を大切に使う、審判さんへの態度、プラス思考、応援される人間になる、本を読む、の8つです。誰もがいますぐできる行動目標ですが、それを運に結びつけている大谷選手の人間性を垣間見ることができます。
遠大な目標は達成が難しいですが、今すぐできる身近な行動目標をクリアして、満足度を高めながら、大きな目標に近づいていく、大谷選手はこのようにして、夢を実現しています。
本校は、「地域社会に貢献できる人間を育成する」という教育目標を実現するため、どのような資質・能力を身につけさせるかといった具体的な指標「グランドデザイン」の作成を検討しています。同様に、この大泉高校版「マンダラチャート」を試作してみようと考えています。みなさんも、目標を達成するために、「マンダラチャート」を作成してみてはいかがでしょうか。
(マンダラチャートについては、以下のページを参照してください。)
http://u-note.me/note/47502826

(校長室より)  「学び直し」(6/19)

前回、「自己教育力(学び続ける力)」について述べました。今回は「学び直し」について述べたいと思います。
日本経済新聞に、テレビでも活躍している池上彰氏の【池上彰の大岡山通信】が毎週月曜日に掲載されています。6月17日「学び直しが育む」というタイトルで池上氏はこんなことを述べています。

「最近、社会人の学び直しなどを意味する『リカレント教育』が話題になっています。私たちは何歳になっても、学ぶ意欲があれば、新しい世界や仕事の機会を広げられるでしょう。(中略)いま、ジャーナリストとしての活動の傍ら、東京、名古屋、長野の大学を中心に講義を受け持っています。大教室を眺めていると、何人ものシニア層の学生を見かけます。若者たちと一緒に、朝からメモを取る姿も珍しくなくなってきました。」

 中学生や高校生たちにとって学ぶことは、つらいこともあるのではないかと思います。しかし社会人になり働きはじめてからも、学び直すこと、学び続けることは必要です。業務に必要な資格試験や語学の習得が必要になることもあります。さらに予測困難なこれからの時代に、学ぶことをやめてしまったら、時代に取り残されるだけでなく、自分が知っている狭い世界に閉じこもり、人生をつまらないものにしてしまうかもしれません。
 生徒たちにも、学び直すこと、学び続けることの大切さを教えていきたいと考えていますが、われわれ大人たちも、学び直すこと、学び続けることを実践しなければなりません。池上氏はこんなことも述べています。
「学ぶことは自分の知らない世界を知り、自らの人生を広げてくれるきっかけになるということです。何歳になっても、好奇心を持ち続けられれば、きっと心の若さをもたらしてくれるでしょう。」

(校長室より)  「自己教育力」(6/3)

現在本校では、教育目標や教育課程の編成についての基本的な方針を、地域の方々や保護者と共有するために、グランドデザイン(教育目標や育成を目指す資質・能力など学校教育活動全般の構想を示したもの)の策定を検討しています。その中で、生徒に身につけさせたい資質・能力のひとつに、「自己教育力(学び続ける力)」というものをとりあげたいと考えています。

近年様々な著作やメディアでの発言で話題を呼んでいるメディア・アーティスト落合陽一氏は『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』という著書の中で、こんなことを述べています。
「学び続ける上で大切なのは、【自分は何かを知らない】ことを常に理解することです。今、自分が知っていることは絶対ではなく、他の人のほうが 正しいことを言っているかもしれない、という前提に立って思考することです。自分の専門も含めて、どの分野に対しても【自分は何かを知らない】【だから、もっと学ぼう】という意識を持ち続けることです。(中略)
自分が正しいと思っていることは、次の日には変わっているかもしれないという意識も大事です。時代が変われば平衡点は変わる。格差社会といわれますが、ゲームの変化点にチャンスはつきものです。(中略)自分の基準をもって、考えはその時代にあっているか、自分のやっていることはこれからの時代に求められているかを考え見極めるということです。」

予測が困難なこれからの時代に求められる教育について、新たな発想を生み出す力、課題を発見し解決する力、困難な状況を乗り越える力は、知識を学ぶだけでは身につきません。生徒自身が、主体的に学び続け、自分たちで答えをみつけていく、こうした自己教育力が、自分の生きがいになり、地域社会の発展に寄与することにつながります。生徒は、自己教育力(学び続ける力)を身につけてほしいと思います。

(校長室より)  「深い学び」(5/24)

5月17日付け内外教育(時事通信社)に、「深い学びをはじめよう」という東京学芸大学名誉教授児島邦宏氏の文章が掲載されました。一部抜粋して紹介します。

 

「主体的・対話的で深い学び」の中で、主体的な学びや対話的な学びの取り組みは進んだが、深い学びの取り組みは遅々としているようだ。(中略)

学びの結論を学びの過程・脈絡、根拠と結びつけて、それぞれの学びの中で、注意深く、批判的に検討していくことが何より重視される。何が「正解」かは判然とせず、むしろ「なるほどそういうことだったのか」という「納得解」、「これが最もふさわしい」という「最適解」へと導かれる。総合的な学習でその一端を試行したものの、教科横断的な本格的な取り組みは、「深い学び」に始まるといってよい。この未知への決断が、今、促されている。

 

教師が今ある知識を生徒に伝達して、正解がある問いに対して解答する力は与えられますが、新しい未来を切り拓くための正解のない問いに対して、協働して課題を解決する力は身につきません。探究的な学習で、未来につながる、新しい知識や考え方を吸収しながら深く学び、さらに各自の自己教育力を高めることにつながるのだと思います。

本校においても、普通科における総合的な学習・探究、農業科における課題研究等でこのような探究的な学習に取り組んでいます。各教科の学習においても、こうした「深い学び」に結びつくような学習を進めていく必要があります。

(校長室より)「高校~大学、学費」(5/7)

4月25日付読売新聞に、学費についての記事が掲載されました。日本政策金融公庫(東京)が行った2018年度教育費負担の実態調査で、高校入学から大学卒業までに必要な費用は子供一人あたり953万4000円で2017年度より18万円増加したことがわかりました。

ベネッセが発表している、大学入学~在学中にかかる費用(受験料、生活費をのぞく)は以下のとおりです。

国立大学  入学時  817,800円 在学時2,143,200

私立大文系 入学時1,150,863円 在学時3,664,400

私立大理系 入学時1,518,333円 在学時5,048,500円となります。

高校卒業後、4年間勉強するために、それ相応のお金がかかります。しかし大学卒業後、社会人となったあとの年収や生涯賃金を考えると、大学時にかかる費用はそれほど高くないといえます。

厚生労働省の2017年賃金構造基本統計調査結果によれば、大卒者の平均初任給額は20.6万円、高卒者の平均初任給は17.9万円となっています。同様に、大卒の男性平均賃金(月収)は39.8万円、女性は29.1万円となりますが、高卒の男性平均賃金は29万円、女性は21万円となります。

これらを生涯賃金に換算するとどうなるでしょうか。

大学卒業後、23歳から60歳までの38年間、高校卒業後19歳から60歳までの42年間勤務すると、生涯賃金は次のようになります。大卒男性、1億8626万円、大卒女性1億3618万円、高卒男性1億4964万円、高卒女性1億836万円です。これに賞与も入ってきますが、生涯賃金でみると、大卒と高卒の差は約3000~4000万円ほどになるようです。大学の4年間にかかる費用(受験料、入学金、授業料、生活費等)を考慮しても、生涯賃金で考えると十分に元がとれそうです。

学習は、高校卒業後や大学卒業後も必要となります。将来の目標をにらみながら、毎日の学習に意欲的に取り組んでほしいと思います。

「AO入試、推薦入試」(4/26)

文部科学省の調査によると、2019年度の入学者を選抜する国公立大入試で、書類審査や面接などで受験生を多面的に評価するAO(アドミッションオフィス)入試と推薦入試を行う大学がともに過去最多になりました。

 国公立大172大学603学部のうち、AO入試を実施する大学は88大学260学部。国立が69.5%、公立で35.4%です。推薦入試は165大学479学部で、国公立の95.9%です。

私立大学数は約600ですが、そのうちAO入試を実施する大学は約80%、公募制推薦入試および指定校推薦入試を実施する大学はともに約90%です。

AO入試・推薦入試とも大学側が受験生に求めるのは、知識だけでなく、知識を使う思考力、判断力や表現力があるかどうか、さらに学習意欲をもち、さまざまな課題に対して、多様な人々と協働する能力があるかどうかも見極めようとしています。

 本校においても進学希望者は多数います。そして3年次にAO入試や推薦入試にチャレンジします。論文作成能力やプレゼンテーション能力はもちろんのこと、高校3年間で何を学んだのか、どのような力がついたのかが問われます。各種検定の資格取得をはじめ、授業や部活動でどのような力を身につけるのか、明確な目標をもって、毎日の学習に取り組んでほしいと思います。

「実用英語技能検定試験」(4/22)

文部科学省は、4月16日、公立中学・高校に通う生徒の英語力を見た2018年度の英語教育実施状況調査結果を公表しました。群馬県で、「英検3級程度以上」の力がある中3の割合は40.9%で、全国平均42.6%を下回りました(福井県61.2%)。また「英検準2級程度以上」の力がある高3の割合は、本県で40.3%、全国平均40.2%と同水準だったのとことです(福井県56.0%)。この調査はすべての生徒が英検を受検しているわけではなく、学校の成績などを基に教員の裁量で、中3で18.7%、高3で19.7%の生徒が「相当する力がある」と判断されています。

今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が18日、国公私立の小中学校約3万校で行われ、小6・中3、合計約212万人が参加しました。中3生に今回初めて実施した英語のテストでは、「聞く・読む・書く・話す」の4技能を問い、自分の考えを英文で書かせるなど表現力を重視した出題がありました。また話す問題では、①あなたの将来の夢、または、将来やってみたいこと。②その実現のために頑張っていること、やるべきこと。この①について自分の考えを30秒で話す(考える時間1分)というものがありました。書く・話すなど、実用性を重視した英語力を身につけることが必要とされています。

全国の多くの高校生が、英語検定試験をはじめ、様々な資格・検定試験に挑戦しています。本校においても全生徒が資格・検定試験に挑戦しています。多くの生徒がさらなるレベルアップを目指して上級試験に挑戦してほしいと思います。

平成31年4月15日  「令和」

4月1日、午前11時40分、菅官房長官が新元号「令和」を発表し、午後0時5分、首相が記者会見で談話を発表しました。首相は新元号について「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められている。」「一人ひとりの日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした願いを込めた。」と説明しました。これは、平成14年に発表されたSMAPの曲「世界にひとつだけの花」の歌詞を参考にして述べたとのことです。我々教育に携わる大人たちも、この気持ちを胸にこどもたちを導いていきたいと思います。

4月9日、本校で入学式が挙行されました。式辞の中で、3月21日に大リーグのマリナーズを引退したイチロー選手の話をしました。イチロー選手は、その時の引退会見で、子ども達へのメッセージを話しています。その一部を紹介します。

「自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つければ、それに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早くみつけてほしいと思います。それが見つかれば、自分の前にたちはだかる壁にも、向かっていくことができると思います。」

 イチロー選手は徹底した努力の人と言われます。自分の目標がみつかれば、それに向かって努力することができます。そして自分を成長へと導いてくれます。生徒たちが、目標をもった仲間とともに切磋琢磨して、心と体を鍛え、新しい「令和」時代に、活躍できる力を身に付けてほしいと思います。