2020年5月の記事一覧

(校長室より)  「こっからが出発点だ」(5/27)

本校を含めた多くの学校が、6月1日から始まります。まずは分散登校になりますが、1日も早く生徒が元気に登校してくる姿を見たいと思います。しかしながら、全国の多くのイベントを含め、中学・高校総体、高校野球、吹奏楽コンクールなど、生徒たちが目標としていた大会のほとんどが中止となりました。高校生活において、多くの時間とエネルギーを費やしてきた生徒たちにかける言葉がなかなかみつかりません。

朝日新聞デジタルで、高知県須崎市にある高校野球の名門校、明徳義塾高校野球部の馬淵史郎監督の言葉が掲載されました。2020年5月20日、約100人の部員に大会中止を伝えた時の言葉の一部を紹介します。

「目標としとったものがなくなるというのは、本当にね、なんともいえん。一言では残念としか言いようがないけど、それだけでは言葉が足らんと思うんやけど。目的は【将来につながるための高校野球】やから。それだけは忘れんなよ。勝った負けた、甲子園に出場できるできない、レギュラーになったなれないと、いろんなことがあるけど、要は、世の中に出て通用するようなことをグラウンドで学ぶのが高校野球なんや。(中略)忘れんなよ。世の中に出ていろんな苦しいことがあった時に、耐えていける精神力をつけるというのが高校野球なんや。こういう苦しい時ほど、人間は試されるんで。甲子園だけが全てじゃないんやから。人生、甲子園に行けない人間の方が多いんやから。全員が気持ち切り替えてやっていかないと。それでも最後まで同じ仲間とグラウンドでやれたというのが財産やから。10年、20年経って、『あの時、自分らの代は地方大会がなかった。試す場所がなかった』ということが、きっと役に立つ時があるから。(中略)頑張ってやれよ、こっからだぞ。こっからが出発点だ。何も終着駅じゃないよ。こっからが出発点だ。気持ち切り替えてやっていけよ。ええか。」

(校長室より)  「9月入学」(5/20)

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、各学校で、臨時休業が継続されています。本校では、6月1日の学校再開にむけて、準備を進めているところです。

そんな中、新聞紙上で賑わいをみせているのが、4月の入学・始業時期を9月に移行させる議論です。5月8日付読売新聞論点スペシャルの欄で、賛成反対両者の意見をとりあげています。9月入学については、2011年の東京大学による秋入学の検討で多くの人に知られるようになりました。賛成する国際大学教授信田智人氏は、教育の国際化推進のために、諸外国で主流の9月入学への移行が必要だ、9月入学によって優秀な留学生や研究者の受け入れが進み、海外大学との共同教育プログラムもやりやすくなる、日本の学生も、入学時期のずれを気にせず海外留学に挑戦できる、としています。また子どもの学習が夏休みで長期中断しない、夏休みに、教員が十分時間をかけて新年度の準備ができる、といった利点もあります。

9月入学に反対する教育研究家の妹尾昌俊氏は、社会全体が危機に直面し、対応に追われる行政や学校現場が疲弊する中で、こうした議論はあってもいいが、今優先させる話ではないし、今行うべきではない、と主張しています。義務教育の開始時期や会計年度などにずれが生じる、入試や資格試験、採用や就職活動の日程見直しの必要等、課題が山積しています。

9月入学・始業というこの制度を実現するために、少なくとも準備期間を含め5年~10年計画で検討する必要があると考えます。ある学年だけに負担をかけるのではなく、少しずつ段階的に進めていくものであり、国民全体の理解がなければ困難だと思います。

   このような議論は大切ですが、今は1日も早く学校を再開して、生徒の教育機会を確保したいと考えています。学校再開後も、コロナウィルスの第2波がこないとは断言できません。ICT機器の整備をすすめ、オンライン授業、インターネットを使った授業についても準備をすすめていきたいと考えています。

(校長室より)  「孤独のグルメ」(5/15)

 2016年4月から、上記タイトルの深夜番組がBSテレ東にてスタートし、2019年12月末まで(Season1~8)放映されました。現在は、オンデマンド方式等で、過去の放送がみられるようになっています。主人公は個人で輸入雑貨商を営む“井之頭五郎”、彼が出張で様々な街を訪れるのですが、その街で、昼食や夕食、デザート等を食べ歩くグルメ番組となっています。主人公の『それにしても腹がへった』というセリフを聞くだけで、心が和みます。主人公が食べるメニューは、本当においしそうなのですが、食べ物以上に、主人公を演じている俳優、松重豊氏の存在が、この番組の魅力になっています。

『PHP』(PHP研究所発行)という月刊誌の6月号に、松重豊氏が掲載されていました。タイトルは【グイグイいくだけが人生じゃない】というものです。松重氏はこんなことを言っています。

「俳優という仕事は、たしかにいろいろな経験ができます。すごい人に会えたり、ふつうの人が行けない場所に行けたりする面白さがある。役を通していろんな人の人生を知ることができるのも楽しいなと思います。でも画家や音楽家、小説家のように、自分の感情や思いを発して、それが作品になる人たちとは全く違う職業なんです。(中略)自分を入れ物だと思って、出来事をまず素直に受けとめてみると、案外マイナスな出来事の中にもプラスの面を見つけることがあります。それに気づけたら、人生は深みを増していくと思うんです。ぐいぐいいくだけが、いい人生じゃない。流れに身をゆだね、受け身で生きる。ひかえめな姿勢によって見つけることができる楽しみもあるんじゃないかと僕は思います。」

現在、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、多くの人々の在宅時間が長くなっています。案外マイナスな出来事の中にもプラスの面を見つけることがあります、と松重氏が述べています。いままで目をそむけてきた分野(読書、トレーニング、料理等々)へチャレンジしてみると、新たな楽しみがみつかるかもしれません。

(校長室より)  「農業クラブ全国大会」(5/7)

 4月28日付けで、全国農業高等学校長協会、日本学校農業クラブ連盟から、本年10月に予定されていた、第71回日本学校農業クラブ全国大会 令和2年度静岡大会の中止について連絡がありました。

農業クラブとは、全国の農業高校をはじめ、高等学校の農業に関する学科や総合学科で学ぶ生徒によって、高校ごとに組織されているもので、関係する生徒全員が加入しています。この全国大会には、平板測量競技会や農業鑑定競技会の他に、各都道府県大会(6~7月)や各ブロック(関東地区等全9地区)大会で、最優秀賞に輝いた代表生徒及びグループが、全国大会に出場し、意見発表・プロジェクト発表の各3部門で発表します。昨年10月に開催された第70回南東北大会には、私も本校農業クラブ役員とともに参加しました。この大会に出場して優秀賞を受賞した本校生徒(グリーンサイエンス科3年)の意見発表も、大変素晴らしい出来でしたが、各ブロック代表の発表もなかなかのものでした。

このような意見発表やプロジェクト発表は、農業クラブに加入している各学校で開催されます。本校では、校内発表大会を例年6月に予定しています。各部門別の学校で代表者を選び、7月に開催予定の群馬県大会に出場します。本年は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う臨時休業で、例年どおりに実施することは難しい状況となっていますが、このように自分で学んだこと、研究したこと、体験したことを、他者に話したり、大勢の前で発表したりするという活動は、先生や教科書に教えられる知識や情報を、頭の中にいれるインプットだけでは得られない学力が身につきます。得られた知識や情報を再構築して、自分の言葉で発信する(アウトプット)ことで、知識や情報の定着・活用が図られることになります。

【学びを結果に変えるアウトプット大全】の著者、樺沢紫苑氏はこのように述べています。「成長するためには、インプットとアウトプットをどんどん繰り返す必要がある。インプットとアウトプットをセットで行うことにより、螺旋階段を上るように少しずつ成長していく。」「インプットはただの【自己満足】にすぎない。【自己成長】はアウトプットの量にこそ比例する。」

生徒自らが、アウトプットすることによって成長できる、このような全国大会が中止になるのは大変残念ですが、新型コロナウィルスの感染拡大が収束した後、生徒が活躍できる多くの大会が実施できることを願っています。

(校長室より)  「オンライン授業」(5/1)

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、群馬県立学校では、臨時休業が5月末まで延長されることになりました。各学校では、webページでの連絡、一斉メール配信、教育支援アプリケーション等を活用して、生徒への連絡、動画配信、課題の配信・提出・解説、質問への回答等を行い、生徒の自宅学習が進められています。

4月27日付日本経済新聞で、欧米や中国で日常となりつつある「オンライン授業」をとりあげています。東京にある私立の中高一貫校では、あらかじめ各家庭の通信環境を確認、生徒は入学時にタブレット端末を購入し、4月から、全教科での遠隔(オンライン)授業を始めています。このようなオンライン授業では、パソコンやスマートフォンを使って、セミナーやミーティングをオンラインで開催するためのアプリケーション「Zoom」を使用しています。

この学校では、こうしたオンライン授業を始めるにあたり、様々な問題点が指摘されました。

「対面授業と同じことを遠隔で実施するという発想ではうまくいかない。」

「15分が限度であり、長時間の連続した講義はさける。」

「通信が途切れる可能性や双方向での会話ではタイムラグが生じることもあるため、対面授業と同じスピード感で進めることもできない。」

このような双方向のオンライン授業システムを取り入れている全国公立の小中高は、現在約5%ほどです。オンライン授業で音楽や体育実技など、全ての学習活動が可能となるとは考えられませんが、学校での授業が再開できない現状では、こうした取組にも注目し、インターネットを使った授業についてさらに検討していく必要があります。