(校長室より)  「チャップリンとヒトラー」(6/23)

6月10日に紹介した中田敦彦氏“YouTube大学“で上記タイトルの著書(大野裕之著)をとりあげた動画をみました。ヒトラーは、歴史を学習した者なら誰でも知っている、ユダヤ人大量虐殺を実行した最も憎まれた独裁者です。かたやチャップリンは、映画界において最も愛された喜劇王です。この両者は生まれた年は同じですが(1889年4月)、まったく違った人生を送ります。ヒトラーは青春時代、アーティストとしても軍人としても成功しませんでしたが、悪魔的にうまい演説を武器に、政治家の道を駆け上がります。チャップリンは人種問題や国家にかかわらないやり方で、映画界でコメディアン(俳優)として成功します。成功した後チャップリンは、今までの映画作りには避けてきた人種・政治問題を真正面から取り上げ、政治家ヒトラーが、将来とんでもないこと(強制収容所、虐殺等)を起こすことを予言しつつ、権力者(ヒトラー)を弱者(貧しい人たち)がおちょくる(あざ笑う)映画【独裁者】を制作します。この政治的な映画制作には多くの人々が反対しましたが、チャップリンは自分の信念に基づいて映画制作を強行します。この映画の主人公はユダヤ人の床屋です。彼は捕まり”強制収容所“に入れられます(映画制作時、ドイツに強制収容所はありませんでした)。そこを脱出した後、国境付近で捕まりそうになりますが、ドイツ軍服を着ていたので”ヒトラー“に間違われます。最後のシーンで、兵士たちを前に主人公(床屋)が演説をするシーンがあります。このシーンの撮影日は、ヒトラーがパリを占領する前日だったそうです(1940年)。その演説の一部を紹介します(最初、床屋は自信なさそうに登場します)。

 

「悪いが私は皇帝になりたくない。支配するよりも、人々を助けたい。ユダヤ人も黒人も白人も、お互い助け合わねばならない。他人の幸せを願い、憎みあってはいけない。地球には全ての人を包む豊かさがある。人生は自由で楽しいはずなのに、貧欲が心を支配し、憎悪をもたらし、悲劇と流血を招いた。スピードも役に立たず、機会は貧富の差を広げた。知識を得た人間は、優しさをなくし、心のかよわない思想で、人間性が失われた。知識より大切なのは、思いやりと優しさ。それがなければ機械と同じだ。航空機やラジオで人々が近づき、それで世界をひとつにできる。私の声が世界中に伝わり失意の人々にも届いている。彼らはこの歪んだ支配体制の犠牲者である。人々よ、希望を捨てるな!

貧欲が招いた不幸も、人として生きる不安も、独裁者の死とともに消える。そして民衆は政権を取り戻す。兵士よ、良心を失うな! 独裁者に惑わされるな! 君たちは支配され、まるで家畜のように扱われている。彼らの言葉を信じるな! 彼らには血も涙もない。君たちは機械ではなく人間なのだ。人を愛する心を持て! 愛があれば憎しみは生まれない。」

 

 コロナ禍によって、世界は危機的状況にあります。それとは別の理由で暴動や爆撃等の事件が起こっています。このチャップリンの言葉に耳を傾けてほしいと思います。

 

 映画「独裁者」床屋の演説シーン

https://www.youtube.com/watch?v=biAAmqaMCvo