(校長室より) 「洗心亭」(9/1)
「【洗心亭】は、家と呼ぶにはあまりにちっぽけで粗末な野小屋に見えた。が、近づくにつれて印象は一変した。粗末は楚々に変わり、ちっぽけは慎ましさに変わった。伝統的な日本家屋の様式に則った、古いが風格のある居宅だった。誰か掃除にでも入っているのか、戸も障子も開け放たれてあった。部屋は二間のようだ。(中略)かつてこの離れ家に二十世紀を代表する建築家が住んでいた。意外性に富んだ歴史の綾が見る者に特別な感慨を抱かせるのは当然のこととして、しかしそうした経緯を知らずとも、凜とした佇まいがこの家の由緒を感じさせる。」
上記の文章は、横山秀夫氏の小説「ノースライト」(127p)に記載されている、「洗心亭」を表現したものです。「洗心亭」は、群馬県高崎市にある少林山達磨寺に現存しています。県指定の重要文化財になっており、見学することが可能です(Youtubeで配信されている動画でもみることができます)。
世界的大建築家ブルーノ・タウト氏が、1934年8月~約2年間居住したとされる建物です。
横山氏のこの小説は、大建築家ブルーノ・タウト氏の物語を背景に、様々な人間関係(家族関係)をからめ、人の善良さ、思いやり、優しさが表現されます。一家はどこへ消えたのか? ブルーノ・タウト氏と椅子の関係は? ミステリー、仕事へ復活、家庭崩壊からの立て直し等、様々な要素をからめた感動の物語です。そしてブルーノ・タウト氏の建築物を、自分の目で確かめたくなります。素晴らしい物語でした。