(校長室より) 「女性学のススメ」(10/15)
10月10日、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏による、上記タイトルの講演が館林市文化会館で開催されました。主催は館林女子高校で、高校生と一緒に講演を聴くことができました。その内容は、女性学とは何か、学問は何の役にたつのか、といった大変興味深いものでした。
上野氏は「従来、男性が関心を払わず、学問として価値がないと思われてきた【女性】を研究の対象にしてきた。」と自らの履歴を話し、「女性学」は何の役にたつのかと言われながら、女性の経験の言語化と理論化に努めてきたことを説明しました。その成果として、性的な嫌がらせ・からかいが「セクハラ」、つきまといが「ストーカー」などとして認知されてきたことを挙げています。学問とは、今まで誰も研究しなかった分野や、誰も疑問にしていない新たな対象を見つけ、「何故?」という疑問を徹底的に考え抜いた上で発信していく必要がある、として学問の厳しさを述べました。
また上野氏は今春、東京大学入学式の祝辞で学内での性差別を非難し、合わせて「受験勝者」の社会的責任を説明しています。その一部を紹介します。
「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公平に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。」(中略)「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。」
社会における女性をはじめとしたマイノリティに対する優しさの欠如を東大生に指摘しています。この祝辞はニュース等で話題になりました。社会的弱者やマイノリティに対する不当な差別をなくすために、教育関係者も差別の事実を認識した上で教育活動をしていく必要があります。