校長室より
(校長室より) 「エドテック」(12/18)
12月16日付日本経済新聞に、【「エドテック」花盛り】、という記事が掲載されています。「エドテック」とは教育(education)とテクノロジーを組み合わせた造語です。テクノロジーの力で教育環境が変わっていく動き・トレンドをさします。記事によれば、教育現場をテクノロジーで変えるアイデアを、大学生や高校生といった「学ぶ側」から生みだそうとする動きがあるようです。
11月4日、東京都内で開かれたエドテックの国際イベントで、マラソンのように長時間続けてアイデアを練る「アイデアソン」に高校生が挑みました。
グーグル賞を受賞したのは、政府が導入を進める「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)が実際の授業では定着していない、という問題意識で挑んだチームです。彼らは授業を活性化するため、AI(人工知能)を使った即興劇を授業にとりいれるアイデアを披露しました。
アマゾン賞は「日本の高校生は学力が高いのに大学生になると低下する」ことを課題に掲げたチームが受賞しました。その解決策として「AIのサポートを受けながら生徒が中心となり授業を行い、自らが考え主体的に行動できる力をやしなう」ことを主張しました。
経済産業省や文部科学省が後援するこの国際イベントは、今年で3回目となり参加者は3000人を超えたとのことです。
教師から一方向の講義をだまって受け、たとえわからなくても他者と話すことなく授業が終わるまで座っている、という授業を高校生は求めていません。「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業の実現」については、文部科学省だけでなく、多くの高校生も求めていることがわかります。
(校長室より) 「読解力」15位(12/10)
12月4日付朝日新聞によれば、世界の15歳を対象に3年ごとに3分野の力を調べる学習到達度調査(PISA)で、日本は2018年度の「読解力」の平均点が落ち、順位も前回の8位から15位に下がりました。コンピューターを使い、ネット上の多様な文章を読み解く力や、根拠を示して考えをまとめる自由記述形式が弱い、思考力や表現力が伸び悩んでいる、と指摘しています。調査方法が前回、紙からコンピューターを使う形となり、測る力が今回、ブログや電子メールなどを対象とした「デジタル読解力」へと変わった影響も大きいとの指摘もありました。また大量の情報から必要なものを選び出したり、情報を疑ってみたり、自分の考えを表現したりする力も不足していると述べています。
2020年度に始まる大学入学共通テストで導入予定の、国語と数学での記述式問題について、実施を延期する方向で調整に入ったとの記事が、各新聞で報道されています。採点者の質の確保や自己採点の不一致率の高さなどが課題となっているようです。記述式の導入は「生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進む」「より主体的な思考力・判断力の発揮が期待できる」などが期待されていましたが、指摘されている問題がクリアできなければ、延期となるようです。
大学入学共通テストにおける記述式問題の導入が仮に延期されても、自分の考えを表現する記述力や「デジタル読解力」はこれからの時代に必要な能力です。朝日新聞の記者が、数年前にPISAの担当者に言われたことを最後に紹介します。
「学校で優等生だったのに就職後はさえない人がいる。それは何故なのか。」「細かな知識はネットで得られる。知識よりも知恵を出して事態を突破する力が求められています。」(12月4日付天声人語より)
(校長室より) 英語民間試験見送り(12/5)
大学入試センター試験に代わり、2020年度に始まる予定の大学入学共通テストにおいて、地域や所得による不公平が生じる可能性を問題視された英語民間試験の導入が延期となりました。11月27日付毎日新聞で、関西学院大准教授寺沢拓敬氏はこのように述べています。
「文科相は検討会議を設け、今後1年間で4技能をどう評価するか検討するといいます。しかしそもそも【学習指導要領が4技能を育てようとしているのだから、それを入試で評価せよ】という考え方は正しいのでしょうか。まずは高校の授業で適切に評価すべきで、【話す力】【書く力】が入試で測りにくいなら、調査書で見てもよい。いきなり入試につなげるのはジャンプしすぎです。」
寺沢氏は、英語力を伸ばす処方箋として、以下のことを指摘しています。①クラスの規模を小さくする。②4技能指導になじみのない教師に研修機会や授業準備の時間を与える。③教員養成の段階で指導力を育てる。いずれもお金と時間がかかる政策ですが、高校の授業においても、時間をかけて少しずつ改善をしていく必要があります。
文部科学省は公立中高の英語教育に関する調査を公表しています。2017年度の中学3年で英検3級以上の英語力を持つ生徒は40.7%、高校3年で準2級以上の生徒は39.3%となっています。両方とも目標の50%には届いていません。何故子供たちは英語の4技能を学ぶ必要があるのでしょうか。それは大学入試を利用するしないに関わらず、グローバルなこの社会で活躍するために、多様な人々と協働できる能力を身につけるために、必要と思われる技能だからです。
(校長室より) 武井壮(11/25)
百獣の王、武井壮氏に注目しています。武井氏はTVタレントとして活躍していますが、その経歴や発言は、様々なメディアにとりあげられ、誰もが武井氏を認め、そして他の人に勇気を与える存在になっています。
武井氏は、中学で野球、高校でボクシングに取り組んでいましたが、大学時代に短距離走を始め、大学3年次に十種競技に転向します。大学卒業後、第81回日本陸上競技選手権大会十種競技において優勝します。100m走ベスト記録の10秒54は、2015年まで十種競技・100mの日本最高記録でした。
卒業後は陸上をやめ、プロゴルファーやプロ野球選手を目指しましたが、2003年(30歳)のころから芸能活動を始めました。当初はタレントとしてなかなか売れず、2004年から2013年まで家なし生活をしていました。武井氏は、売れているタレントや芸人さんは何故面白く、たくさんの仕事に恵まれているのかを、その話術や生活態度等を中心に一生懸命に研究したそうです。
11月20日付毎日新聞の赤坂電視台の欄に、武井壮氏の発言が掲載されていますので一部紹介します。
「毎日3時間、自分自身をアップデートしています。体力トレーニング1時間、知らないことの勉強1時間、楽器やゲームなど未経験の技術習得1時間が日課で、忙しくても必ず続けています。その理由は、昨日テレビに写った自分はもう消費された自分。それと同じ体力と知識と能力のまま、翌日カメラの前に立つのが嫌なんです。少しでも成長した自分をお見せすることが、視聴者の皆さん、スタッフ、番組関係者など、今の僕に大きな価値を与えてくれている方々への恩返しだと思っています。」
武井氏は、SNSでこんなことも言っています。
「オレは鍛えるのが好きなんじゃなくて成長するのが好きなんだ。その手段として鍛えるってのがひとつあるからやる。それ以外も成長できるならなんでもやってやる。成長は1番の娯楽だ。」「誰かに楽しんでもらわなきゃ価値がないと気付いてから少しずつ成長できたと思う。」
武井氏の言葉は、多くの人を勇気づけます。
(校長室より) ヨーヨーで世界つかむ(11/20)
11月18日付日本経済新聞の「先輩に聞く」欄に、ヨーヨーパフォーマーのBLACKさんが紹介されました。BLACKさんは、世界的サーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」への出演を志し、会社員の職をなげうって日本を飛び出しました。ヨーヨーとカタカナ英語を武器に夢を実現し、その活躍ぶりは2020年から始まる小学生向け英語教科書で「世界に活躍する日本人」として紹介されています。
BLACKさんは、青山学院大学在学中にヨーヨーの世界チャンピオンになります。大学卒業後、システムエンジニアとして就職しましたが、毎日終電で帰るような仕事で、肉体的にも精神的にもつらい日々が続いたそうです。なんとかこの状態から抜け出し、自分に自信を与えてくれた、ヨーヨーによるパフォーマーへの夢を捨てきれず退社し、シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けます。26歳からバレエを始め、体を滑らかに動かす技術を習得することで、芸術性の向上に努め、無事にオーディションに合格します。
BLACKさんは、中学生の時にヨーヨーと出会い、練習すれば上達するということがとても嬉しく、学校が終わるとすぐに家に帰り、壁を傷だらけにして1日6~8時間練習に没頭したそうです。BLACKさんは夢中になれるものを中学生の時に発見し、紆余曲折はありながらも、それを現在の仕事にすることに成功しました。
この記事は最後にこのように述べています。
「チャンスはたまにしか訪れず、待っている時間のほうが断然長い。人生が前に進まず止まってしまっているように感じることもある。それでも自分は何に幸せを感じるか。どんな日々を過ごしたいのか、ということを明確にイメージできれば、周りから愚かな選択だと言われようとも、人生の選択に迷わないはずだ。」