校長室より
(校長室より) 「溝上慎一教授」(7/22)
7月17日(金)4限目に、先日お知らせしましたビデオ会議システム(Zoom)を活用した外部講師によるオンライン授業を本校で実施しました。講師は、桐蔭横浜大学学長・教授の溝上慎一先生です。私は、数年前からtulipメーリングリスト(現在は桐蔭学園トランジションセンターが運営)に参加しています。このMLからは、学校教育改革、学校から仕事、社会へのトランジション、人材開発等に関する講演会、シンポジウム、研修会等の案内が配信されています。
このたび、溝上先生が直接高校生に対し「偏差値だけではない学びと成長のための大学選びのポイント」とうタイトルで授業をします、という情報を得て申し込んだところ、快く引き受けていただきました。
授業では、事前に生徒からの質問や疑問を先生に提出し、それらに対する回答をふまえて、大学で何を学ぶのか、学びたい内容と将来の職業をどう結びつけるのか(学びたいことを学べばいい、何を学んでもどの職業にもつける)、学生の学びと成長を目指す大学の条件とは何か(学部の定員数50~100人以下、少人数教育、参加型授業【聴くだけでなく、書く、話す、発表するアクティブラーニング】を目指す学部がある)、経済的事情が許すなら、在住地域を離れた大学に進学する方がいい等々、具体的に大学選びのポイントを解説していただきました。授業を受けた生徒(普通科1年&2年)は、「大学のことがわかった」、「視野を広げて自分の将来を考えて、大学を選択したい」など、自分の進路について真剣に考える材料になったと思います。大学の先生でなければわからない情報や、大学で学ぶ内容等について、わかりやすく説明していただきました。ありがとうございました。
【8月4日11時~オンライン学校説明会について】
7月21日付上毛新聞第1面に「公立高校説明会、来月末まで中止」という記事が掲載されています。その一部を紹介します。
「大泉高が6月中旬に公開した動画は、昨年度の学校生活で実習などに取り組んだ生徒の写真を、職員がスライドショーにした。8月には同校独自に、生徒によるツルノスからの配信も企画している。」
8月4日(火)11時~、県庁の動画放送スタジオ「tsulunos」から、オンライン学校説明会、Youtubeライブ配信を公開します。ぜひご覧ください。
(校長室より) 「世界で一番しあわせな国」(7/17)
7月14日、16:40~同志社大学公開オンライン授業を見学しました。この授業は、同志社大学政策学部佐野淳也准教授が中心となり、外部講師を招いて、大学生及び一般の方に公開しているものです。この授業はYouTubeによるライブ配信されましたが、現在でも録画されたものをみることが可能です。
今回の外部講師はデンマーク、ロラン島在住の、ニールセン北村朋子さんでした。北村氏は、2011年からデンマークに移住していますが、その前は会社員、映像翻訳家をしていたそうです。デンマーク移住後は、様々なテーマ(例えば再生可能エネルギー、高福祉社会システム、持続可能な社会、教育、民主主義、スポーツと文化、復興、都市計画など)について、小中高大学生から企業、研究所、NGO、議員や大臣のみなさんと対話、連携、実践を続けています。
今回の授業のタイトルは、「デンマークの幸せで持続可能な社会づくり」というものです。デンマークについて語り、日本についてもどんな国でありたいか?といった内容を語っています。2010年の調査によれば、デンマークの世界幸福度指数は8.4点で世界第1位(とても幸せ10点、とても不幸0点、11段階で幸福度を国民に質問している)となっています。ちなみに北欧の国々やイギリスで7.4点、フランスで7.1点、欧州28カ国の平均は6.9点、日本は平均以下の6.5点だったそうです。何をもって幸せを感じるかは人によって違うかもしれませんが、デンマークの人々は、安心と責任と信頼を国や政治に対してもっているのではないか、と北村氏は述べています。①社会保障は全て税金でまかなっている、②貧富の差が少ない、③国政選挙の投票率85%以上など、福祉や政治が安定しています。そしてどんな国でありたいか、ということを多くの国民や政治家が考えていると指摘しています。日本の幸福度はどうしたらあがるのでしょうか? 授業の最後で北村氏はこのようなメッセージを残しています。
「政治と民主主義を選び、育てるのは、私たち市民の仕事
のびのびした社会になるように、我が子のように
みんなで手塩にかけて育てていこう。
(校長室より) 「オンライン、学べるもの」(7/7)
6月22日から、本校は通常登校となり、全生徒の登校が始まりました。毎日の検温、手洗いの励行、マスク着用、3密の回避などのコロナ対策は必要になりますが、直接教師と対面する授業や実習等を見学してみると、生徒の表情を直接見ながら行う授業も大切だな、と感じます。
7月3日付け朝日新聞では、オンライン授業についての特集が掲載されました。教育研究者の鈴木大裕氏は、こう述べています。「『やっぱりな』。休校を機に進むオンライン化の議論は僕にとって、残念な意味で予想通りでした。オンライン学習そのものはツールに過ぎず、よくも悪くもないと思ってます。問題は議論の前提にある【学び】の観念が、余りにも貧弱なことです。重視されているのは、受験をゴールととらえた【お勉強】ばかり。」学校は人を育てる場所であり、授業はその一部にすぎない。受験準備のためのオンライン授業に疑問を呈しています。
また米スタンフォード・オンラインハイスクール校長の星友啓氏は、オンライン授業の可能性について、こう述べています。「導入したのがオンラインの【反転授業】です。授業で講義を聴いて、授業外で課題を解く従来型を逆転。前もってビデオ教材などで学んでからオンライン授業に臨み、グループワークやディスカッションで効果的に学びを深める。これによって授業の中から共に学ぶコミュニティが生まれてきます。オンラインでは生徒や教師が分断されやすい。意識的に学校でのコミュニティ強化を図るのが成功の鍵です。」
本校においてもオンライン授業(試行)を実施しました。来週の7月17日には、外部講師によるオンライン授業を計画しています。テーマは、「偏差値だけではない、学びと成長のための大学選びのポイント」というものです。外部講師が、直接来校しなくても本校生徒に対しての授業が可能となる、まさにオンライン授業ならではの試みです。授業実施後、内容等について報告させていただきます。
(校長室より) 「日本語教育とオンライン学習」(7/1)
6月29日付上毛新聞に、「日本語教育は今」という特集で、本校生物生産科1年生の記事が掲載されました。紹介された生徒は、日本国籍を持っていませんが、大泉国際交流協会の学習支援を受けて、今春本校への合格を果たしました。生徒は日本語による日常会話に問題ありませんが、「漢字の読み書きが苦手。もっと勉強したい」と、意欲的に学習しています。この生徒が学習に頑張っている姿は、他の生徒のいい刺激になると思います。
他国の大学の学生とオンラインでともに学ぶ海外連携型協働学習(COIL)について、6月29日付日本経済新聞が取り上げていました。関西大学の池田佳子教授は、このように述べています。
「世界中の大学の国際教育にブレーキがかかっている。新型コロナウィルスの感染拡大で3月から【世界同時鎖国】の状態が続き、米国ではカリフォルニア州を皮切りに、各州の大きな大学が軒並み秋学期もオンライン教育を続けることを決めた。(中略)この状況下で海外連携型協働学習への注目度が高まっている。学生が海を隔てた同世代の仲間とICTツールでつながり、4~8週間かけて一つのプロジェクトに取り組む教育手法だ。」
本校でも試行的にオンラインHR・授業を行いましたが、オンライン学習のメリットは、リアルタイムでありながら、空間の制約を超えるところにあります。「どことでも」「どこからでも」リアルタイムの授業、講義を受けることが可能であり、日本や世界のどこにいても、ICTツールが使用できる環境下であればオンライン学習、協働学習が可能になるということです。
(校長室より) 「チャップリンとヒトラー」(6/23)
6月10日に紹介した中田敦彦氏“YouTube大学“で上記タイトルの著書(大野裕之著)をとりあげた動画をみました。ヒトラーは、歴史を学習した者なら誰でも知っている、ユダヤ人大量虐殺を実行した最も憎まれた独裁者です。かたやチャップリンは、映画界において最も愛された喜劇王です。この両者は生まれた年は同じですが(1889年4月)、まったく違った人生を送ります。ヒトラーは青春時代、アーティストとしても軍人としても成功しませんでしたが、悪魔的にうまい演説を武器に、政治家の道を駆け上がります。チャップリンは人種問題や国家にかかわらないやり方で、映画界でコメディアン(俳優)として成功します。成功した後チャップリンは、今までの映画作りには避けてきた人種・政治問題を真正面から取り上げ、政治家ヒトラーが、将来とんでもないこと(強制収容所、虐殺等)を起こすことを予言しつつ、権力者(ヒトラー)を弱者(貧しい人たち)がおちょくる(あざ笑う)映画【独裁者】を制作します。この政治的な映画制作には多くの人々が反対しましたが、チャップリンは自分の信念に基づいて映画制作を強行します。この映画の主人公はユダヤ人の床屋です。彼は捕まり”強制収容所“に入れられます(映画制作時、ドイツに強制収容所はありませんでした)。そこを脱出した後、国境付近で捕まりそうになりますが、ドイツ軍服を着ていたので”ヒトラー“に間違われます。最後のシーンで、兵士たちを前に主人公(床屋)が演説をするシーンがあります。このシーンの撮影日は、ヒトラーがパリを占領する前日だったそうです(1940年)。その演説の一部を紹介します(最初、床屋は自信なさそうに登場します)。
「悪いが私は皇帝になりたくない。支配するよりも、人々を助けたい。ユダヤ人も黒人も白人も、お互い助け合わねばならない。他人の幸せを願い、憎みあってはいけない。地球には全ての人を包む豊かさがある。人生は自由で楽しいはずなのに、貧欲が心を支配し、憎悪をもたらし、悲劇と流血を招いた。スピードも役に立たず、機会は貧富の差を広げた。知識を得た人間は、優しさをなくし、心のかよわない思想で、人間性が失われた。知識より大切なのは、思いやりと優しさ。それがなければ機械と同じだ。航空機やラジオで人々が近づき、それで世界をひとつにできる。私の声が世界中に伝わり失意の人々にも届いている。彼らはこの歪んだ支配体制の犠牲者である。人々よ、希望を捨てるな!
貧欲が招いた不幸も、人として生きる不安も、独裁者の死とともに消える。そして民衆は政権を取り戻す。兵士よ、良心を失うな! 独裁者に惑わされるな! 君たちは支配され、まるで家畜のように扱われている。彼らの言葉を信じるな! 彼らには血も涙もない。君たちは機械ではなく人間なのだ。人を愛する心を持て! 愛があれば憎しみは生まれない。」
コロナ禍によって、世界は危機的状況にあります。それとは別の理由で暴動や爆撃等の事件が起こっています。このチャップリンの言葉に耳を傾けてほしいと思います。
映画「独裁者」床屋の演説シーン