校長室より
(校長室より) 「空気」を読んでも従わない(9/20)
岩波ジュニア新書で、鴻上尚史氏の著書を読みました。
「どうしてこんなに周りの目が気になるの?」
「どうしてこんなに先輩に従わないといけないの?」
「どうしてこんなにラインやメールが気になるの?」
「それはあなたが弱いからではなく、すべて理由があります。そのヒミツを知れば、あなたはうんと生きやすくなるでしょう。」
鴻上氏はまず、「世間」という言葉を説明します。「世間」とは、あなたと現在または将来、関係のある人達のことです。「社会」という言葉はその反対語で、あなたと現在または将来、何の関係もない人達のことです。「世間」に属する人達を親しく感じ、「社会」に属する人達には距離を感じるということです。
次に、外国の話になります。ほとんどの外国には「世間」はありません。欧米をはじめとしたほとんどの外国は、「社会」しかありません。つまり自分が知っている人達と知らない人達を分けないのです(中略)。外国の人が、人の頼みをにっこり笑って断れるのは、「社会」にずっと生きているからです。「社会」に生きる相手は、自分の都合で頼みごとをしてくると知っています。だから、いちいち、断ることを申し訳ないと思う必要がないのです。ですから、あなたが人の頼みをなかなか断れないのは、あなたが弱いからではないのです。
この後は、相手が世間なのか、社会なのかを判別する。空気を読んでも従う必要はない。年上がエラいとは限らない。世間はイケニエを必要とする時がある。世間はなかなか変わらない、などの記述が続きます。世間という日本的な考え方を理解すると、世界の国々のように、「世間」や「社会」に身をまかせないで、戦う必要があることがわかってきます。
最後の方で、このような記述があります。
この国は同調圧力が強い国です。同調圧力に負けないでちゃんと生きていくためには、知恵をつけることです(中略)。あなたの「世間」や「空気」との戦いを心から応援します。自分の人生を決めるのは、自分であって、「他の人がどう評価するか」ではないからです。
(校長室より) 「イチロー選手」(9/12)
9月3日付、内外教育(時事通信社)のラウンジ欄に、イチロー選手のことが掲載されました。「野球の魅力とは?」という質問に、このように答えています。
「団体競技なんですけど、個人競技なんです。それが面白い。個人としても結果を残さないと生きていくことはできない。本来はチームとして勝っていけば、チームのクオリティは高い。でも決してそうではない。あとは同じ瞬間がないこと。必ずどの瞬間も違う。これは飽きが来ないですね。」
この回答を聞いて、筆者は、教職にもあてはまると感じたそうです。
「教職は学校という場を舞台とした組織専門職であると考えてきた。しかし、普段の教育活動は、教室を場とした個人の営みであるとも考えられる。(中略)同じ学年に同じ単元を教えても、教室で繰り広げられる状況に同じ瞬間はない。よい授業をしようと思えば、不断の相違工夫が求められ、教職は生涯、試行錯誤の繰り返しである。常に自分との闘いをしてきたに違いない名選手の一言は、心にストンと落ちた。」
話は変わりますが、先日、河合塾が主催する「対話のひろば、第6回イベント」に参加しました。今回のテーマは、「対話を通して、思考力・判断力・表現力を測る問題をつくろう!-地理編-」というものです。参加者は、高校教員のほかに、文部科学省の教科調査官、大学教授、塾の教員等様々な職にある方で、40人が集まりました。第一部は河合塾講師の佐藤裕治先生が、地理の入試問題を紹介しながら、問題作成のポイント等について解説していただきました。第二部は、集まった先生方がいくつかの素材をもとに、グループで問題作成にチャレンジしました。地理を専門としている先生方が集まり、いい問題とはなにか、学力の識別力があるか、独自性はあるか等々、議論を重ねることができました。よい授業、よい問題を作成するために、全国の先生方が頑張っている様子をみることができ、刺激を受けました。まさに教員という仕事は、生涯、試行錯誤の繰り返しであることを実感した、楽しいイベントでした。
(校長室より) 「新入生の窓口相談AIで」(9/9)
9月2日付日本経済新聞の教育欄に、上記タイトルの記事が掲載されました。芝浦工業大学が新入生の窓口相談を効率化するために、スマートフォンで質問を送れば人工知能(AI)が自動応答するシステムを開発したそうです。村上雅人学長は、このように述べています。
「最近は、AIの発達でチャットボットと呼ばれる対話型回答システムが登場している。学生が日常的に使っているスマートフォンなどで簡単なキーワードを入力すれば、最適な情報またはそのアクセス方法を自動応答で得られる。窓口で繰り返される単純な質問は、チャットボットで解決できるのではないかと考えた。(中略)今年3月にチャットボット【SIT-bot】が完成、4月から実際にLINEを使って窓口業務に投入した。導入2ヶ月で1万件を超える質問が寄せられ、学生の評判は上々である。(中略)SIT-botの導入で、単純作業は機械に任せ、教職員はより創造性の高い仕事に取り組めるようになった。さらに、蓄積される学生からの質問は、学生の要望や知りたいことを把握する上で極めて参考になり、これを分析すれば、さらなる業務改善や学生サービスの充実につながるはずだ。」
上記の内容は、「AI」が労働者(教職員)と共存していることを示しています。ビッグデータの処理能力という点で、人間はAIにはかないません。単純作業にも音をあげません。これからの子どもたちは、将来このような「AI」と共存して働くことになります。データ処理や単純作業はAI(機械)にまかせ、創造性の高い仕事や、困難な課題に取り組める人材を、これからの社会は必要としています。
(校長室より) 「平塚農業高校」(9/2)
8月19、26日の2週にわたって、日本経済新聞の教育欄に神奈川県立平塚農業高校園芸科学科がとりあげられました。抜粋して紹介します。
「この日収穫する野菜や果物は約10種類。それぞれに大きさや色の濃淡を見ながら、収穫のタイミングを探る。校内で開く市場で販売するため、見定める表情も真剣だ。『これ大きいよねー』取ったばかりのピーマンを見せ合うと笑みがこぼれた。」(8/19)
「梅雨の時期は虫がつきやすく、無事に実らせるまでが大変だ。(ビワの収穫では)うっかり落とさないよう注意が要る。丹精込めて育てた農作物を『おいしい』と言って食べてもらえると、農業に就きたい思いが強くなる。」(8/26)
本校農業科の生徒たちも、夏休みの期間中、担当を決めて実習を行い、農作物を、丹精込めて育てています。農作物の生育に夏休みはありません。本校では、春に続いて、秋にも【泉農フェア】が実施されます。丹精込めて育てた農作物で、地域の人々に喜んでもらおうと、生徒たちは今日も授業・実習に取り組んでいます。
(校長室より) 「アクティブラーナー」(8/27)
「双方向型学習へ転換を」、8月19日付日本経済新聞で総合研究大学院大学学長の長谷川真理子氏はこのように主張しています。
「これまで、日本の大学の授業といえば、週に1回、90分の講義を通年で行うというのが普通だった。たいていは大人数の講義である。まずはこれを変えるべきだ。質問と討論による、教員と学生との間、また学生同士の間のより密接な相互作用が必要である。(中略)18歳人口の半分が大学に進学するようになれば、学生の知的レベルにはかなりの幅ができよう。それでも、どんなレベルの学生であれ、高校までの受動的な学習を転換し、自分で調べて考え、議論する、という態度を身につけることはできるはずだ。それによる到達点は、学生によって異なるだろうが、そのように主体的に考えるという環境は、すべての大学生に与えられるべきであり、大学で過ごした人間はそこが違うという付加価値が見えるようになるはずだ。」
長谷川氏の指摘する双方向型学習とは、新学習指導要領でも取り上げられている、アクティブ・ラーニングの視点をもった授業(学習)のことであり、「主体的・対話的で深い学び」のことです。高校においても、このような学習は必要とされています。具体的にはどのような授業(学習)なのでしょうか。実際の授業をwebページで見ることが可能です。
数年前から「Find!アクティブラーナー」という、webページの会員になりました。このwebページでは、「生徒の主体性を引き出したい全ての教員・親の皆様に、授業動画・ニュース・教材を提供する、日本で唯一のプラットフォームです。」と紹介されています。このページでは2000以上の授業・講義を見ることができ(会員のみ、一部無料コンテンツあり)、その数は日々増え続けています。このサイトの理念は、「すべての子どもたちをアクティブラーナーに」というものです。ぜひこの動画を多くの先生方や保護者の方に見てほしいと思います。
(参照webページ https://find-activelearning.com/ )