校長室より

(校長室より)  「餞(はなむけ)の言葉」(3/4)

 3月2日、本校にて、第107回卒業証書授与式が挙行されました。新型コロナウイルスの全国的流行による感染拡大防止のため、例年より規模を縮小し、保護者は各家庭1名、1、2年生は不参加での実施となりましたが、本校を巣立つ149名の生徒たちを、心を込めて見送ることができました。式辞にて餞(はなむけ)の言葉を3つほど述べたのでそれを紹介します。
 「一つ目は、学び続けてほしい、ということです。『学ぶ』というのは、希望する学校や企業に合格するためだけに行われるものではありません。自分を成長させ、他人を幸せにするためにするものです。愚痴やいいわけをいう人は成長できません。自分のまわりの人や社会を幸せにするために、自分の意志で新しいことを吸収して、自分を成長させてください。
 二つ目は、夢を持ち続けてほしい、ということです。みなさんにとって魅力的な大人とはどんな大人でしょうか。子どもたちは、夢にむかって走り続ける、そんな大人にあこがれます。それはプロスポーツ選手やオリンピック選手だけではありません。『大人になっても夢を追い続ける』ということを、子どもたちに見せてあげられる、そんな大人になってください。
 三つ目は、自分自身の人生の正解をみつけてほしい、ということです。今までの学習では、問題に対して解答が用意されていました。しかし社会にでると、正解のない問題ばかりがふりかかってきます。何が正しいか、何が幸せか、自分で考えなくてはなりません。こうすれば幸せになれる、という解答がないのです。自分自身の人生の正解をみつけて、幸せになってほしいと願っています。」
 卒業生のみなさん、保護者の皆様、ご卒業おめでとうございます。

(校長室より)  「違う」から友達になる(2/7)

 2月3日付上毛新聞のU22投稿欄に、ヴー・フォン・タオ(22才)さんの上記タイトルの文章が掲載されています。彼は2016年~日本に留学し、大学に通っています。日本で異文化に触れることは楽しいのでは、と思う人がいるかもしれませんが、彼の場合は出会った人の考え方、価値観をつい真似してしまい、自分の価値観を忘れてしまいそうになることもあったそうです。そして日本人と同じように生きて、ストレスがたまり、それが苦痛になりました。彼は、このように述べています。
「だから、ある時、その考えを捨て、自分なりに生きることにした。すると、だんだん自信が持てるようになり、多くの人の前でも自分の考えを伝えるようになった。自分を出すことで、友達が少なくなってしまうかもしれない、と不安だったが、そうではなかった。自分なりに生きることで、本当の友達ができたと思っている。」
 先日、フレディみか子氏の作品、「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」を読みました。彼女の中学生の息子さんを主人公にして、英国南部のブライトンという町の、多様な人種や格差のある生徒が集まる中学校での生活を描いたものです。様々な価値観をもつ生徒の中で、息子さんが孤軍奮闘して成長する姿が描かれています。様々な人種や多様な価値観のある人々と、学校生活をともにするのは、決して楽なことではありませんが、彼は自らの意志でその生活に飛び込んでいきます。
 これからの時代は、多様な人々と協働できる能力が必要です。子どもたちは、ヴー・フォン・タオさんや、ブライトンで頑張っている中学生のように、文化や価値観の違う人々と出会い、自分を成長させてほしいと思います。

(校長室より)  「英語能力指数」(1/22)

 来年度予定されている大学入学共通テストで、英語の民間試験活用が、見送られました。しかし英語の「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能をバランスよく勉強することが否定されたわけではありません。これら4技能を総合的に学ぶことは、これからの時代に必要とされています。
昨年12月18日付読売新聞に「英語能力指数、日本53位」というタイトルの記事が掲載されました。世界で留学などの教育事業を展開する「EFエデュケーション・ファースト」が、2019年の英語能力ランキングを発表しました。英語を母国語としない100カ国・地域のうち、日本は前年より4つ順位を下げて53位となったそうです。1位オランダ、2位スウェーデン、3位ノルウェー、4位デンマークとヨーロッパ諸国が上位に並びますが、5位シンガポール、6位南アフリカと続き、37位韓国、40位中国です。1位~14位は「非常に高い」、15位~29位は「高い」、30位~46位は「標準的」という評価になり、日本は47位以下で「低い」という評価になります。評価対象国は、昨年に比べ12カ国増加し、受験者数も100万人増え、約230万人になったそうです。
 日本の英語能力レベルをあげるにはどうすればいいか。1月14日付朝日新聞で、英国語学評価テスト学会創設者のバリー・オサリヴァン氏はこのように述べています。
「中国では国が開発した4技能テストを毎年150万人が受けており、AI採点などの技術が発達しています。こうした仕組みや研究を改良すれば、少ないコストで、2024年度から(国際基準の統一テストを)実施できるでしょう。他国の例などについて知見があるので、求められれば新制度作りに喜んで協力します。」
 今年度のセンター試験は、55万人7699人が受験しました。同様に英語の4技能テストも、センター試験と同様に、全国の高校生が受験できるようなものにしてほしいと思います。

(校長室より)教育格差という言葉がなくなる制度設計を(1/10)

 新年、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
早速ですが、昨年12月24日付朝日新聞にこのような記事が掲載されました。「来年度から大学など高等教育の学費負担を減らす文部科学省の新制度で、従来なら支援を受けられたのに対象外となる新入生が出ることについて、萩生田文科相は23日、【先輩はこういう家庭環境でこうだったのに、俺はという不満はあるかもしれない】とした上で、そうした学生が出ることに対し【制度の端境期なので、ぜひご理解を】などと述べた。」
この発言に対し、池上彰氏はこのように批判しています。「これは由々しきことです。制度を変えることで支援を受けられない新入生が出ることは、制度設計の欠陥というべきでしょう。」
 教育格差という言葉があります。生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれることを指します。このような格差のない国が存在します。それはフィンランドです。フィンランドでは幼稚園から大学まで学費が無料で、貧困の中からでも大学進学のチャンスがあり、首相にもなれます。
 12月24日付毎日新聞夕刊にて、小国綾子氏がフィンランドの女性首相(34歳)をとりあげています。彼女は幼い頃に父親のアルコール依存が原因で両親が離婚、貧困を経験しました。その後、母親とその女性パートナーに育てられました。中学までの成績は振るわなかったそうですが、高校や自治体の運営する施設で自分の居場所や仲間を見つけ、親族の中で初めて大学進学を果たしました。彼女は「私を救ってくれたのは福祉制度と学校の先生」と述べています。
 日本も、教育格差、という言葉がなくなるような制度設計をしてほしいと思います。

(校長室より)  「ユーチューバー」(12/26)

 「ユーチューバー」という職業?が子どもたちの間で人気職業ランキング上位にあがっています。有名なユーチューバーになると、その広告料で相当の収入が得られるようです。さまざまなジャンルのユーチューバーが存在しますが、12月24日付毎日新聞に、教員とも塾講師とも異なる“次世代の教育者”として注目されている「教育ユーチューバー」、葉一(はいち)さんが紹介されています。葉一さんは、ユーチューブで配信する授業動画がわかりやすいとして中高生を中心に多くの登録者(約76万人)を得ています。動画数は3206本(12/25現在)、開始から7年で動画の累計再生回数は2億回を突破しています。葉一さんは、記者の質問にこのように解答しています。
 「自分が想定しているのは基礎を定着させたい子。それは、集中や継続が苦手だった中高生時代の自分だったり、塾でつまずいた子どもだったり、というイメージです。授業で【わかる】という成功体験を得ることが、【やる気】の第一歩だと思います。」「子どもの生活の中で大部分を占める時間は学校の授業です。それなのに【わからない】と思いながら過ごすのは苦痛です。(中略)【前はわからなかった問題が解けた】のも【授業中に手をあげられた】のも成功体験だと思います。【勉強を頑張って良かった】という小さな成功体験を積み重ねることが重要です。」葉一氏の動画授業は、15分以内でまとめられていて、とてもわかりやすく丁寧に作られています。
 このような授業動画は、大手教育系企業も有料で発信しています。ある講座ガイドに登録すると、小中学校の復習から、難関大学受験対策まで、5教科18科目、1万5千本の授業動画をみることができます。私も高校の授業や、英検対策講座の授業を視聴してみましたが、とてもわかりやすく作られていて、予備校等で人気を得ている講師の実力をみることができました。苦手科目を学び直したり、高校受験や大学受験の勉強に利用したり、スマホでどこでも気軽に学習ができたり、という点でこのような授業動画は今後とも増加していくと考えられます。
このような授業動画の流行に対し、学校教育はどうあるべきか、今一度立ち止まって考える必要があります。

(校長室より)  「エドテック」(12/18)

 12月16日付日本経済新聞に、【「エドテック」花盛り】、という記事が掲載されています。「エドテック」とは教育(education)とテクノロジーを組み合わせた造語です。テクノロジーの力で教育環境が変わっていく動き・トレンドをさします。記事によれば、教育現場をテクノロジーで変えるアイデアを、大学生や高校生といった「学ぶ側」から生みだそうとする動きがあるようです。
11月4日、東京都内で開かれたエドテックの国際イベントで、マラソンのように長時間続けてアイデアを練る「アイデアソン」に高校生が挑みました。
グーグル賞を受賞したのは、政府が導入を進める「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)が実際の授業では定着していない、という問題意識で挑んだチームです。彼らは授業を活性化するため、AI(人工知能)を使った即興劇を授業にとりいれるアイデアを披露しました。
 アマゾン賞は「日本の高校生は学力が高いのに大学生になると低下する」ことを課題に掲げたチームが受賞しました。その解決策として「AIのサポートを受けながら生徒が中心となり授業を行い、自らが考え主体的に行動できる力をやしなう」ことを主張しました。
 経済産業省や文部科学省が後援するこの国際イベントは、今年で3回目となり参加者は3000人を超えたとのことです。
 教師から一方向の講義をだまって受け、たとえわからなくても他者と話すことなく授業が終わるまで座っている、という授業を高校生は求めていません。「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業の実現」については、文部科学省だけでなく、多くの高校生も求めていることがわかります。

(校長室より)  「読解力」15位(12/10)

 12月4日付朝日新聞によれば、世界の15歳を対象に3年ごとに3分野の力を調べる学習到達度調査(PISA)で、日本は2018年度の「読解力」の平均点が落ち、順位も前回の8位から15位に下がりました。コンピューターを使い、ネット上の多様な文章を読み解く力や、根拠を示して考えをまとめる自由記述形式が弱い、思考力や表現力が伸び悩んでいる、と指摘しています。調査方法が前回、紙からコンピューターを使う形となり、測る力が今回、ブログや電子メールなどを対象とした「デジタル読解力」へと変わった影響も大きいとの指摘もありました。また大量の情報から必要なものを選び出したり、情報を疑ってみたり、自分の考えを表現したりする力も不足していると述べています。
 2020年度に始まる大学入学共通テストで導入予定の、国語と数学での記述式問題について、実施を延期する方向で調整に入ったとの記事が、各新聞で報道されています。採点者の質の確保や自己採点の不一致率の高さなどが課題となっているようです。記述式の導入は「生徒の能動的な学習をより重視した授業への改善が進む」「より主体的な思考力・判断力の発揮が期待できる」などが期待されていましたが、指摘されている問題がクリアできなければ、延期となるようです。
 大学入学共通テストにおける記述式問題の導入が仮に延期されても、自分の考えを表現する記述力や「デジタル読解力」はこれからの時代に必要な能力です。朝日新聞の記者が、数年前にPISAの担当者に言われたことを最後に紹介します。
 「学校で優等生だったのに就職後はさえない人がいる。それは何故なのか。」「細かな知識はネットで得られる。知識よりも知恵を出して事態を突破する力が求められています。」(12月4日付天声人語より)

(校長室より)  英語民間試験見送り(12/5)

 大学入試センター試験に代わり、2020年度に始まる予定の大学入学共通テストにおいて、地域や所得による不公平が生じる可能性を問題視された英語民間試験の導入が延期となりました。11月27日付毎日新聞で、関西学院大准教授寺沢拓敬氏はこのように述べています。
 「文科相は検討会議を設け、今後1年間で4技能をどう評価するか検討するといいます。しかしそもそも【学習指導要領が4技能を育てようとしているのだから、それを入試で評価せよ】という考え方は正しいのでしょうか。まずは高校の授業で適切に評価すべきで、【話す力】【書く力】が入試で測りにくいなら、調査書で見てもよい。いきなり入試につなげるのはジャンプしすぎです。」
 寺沢氏は、英語力を伸ばす処方箋として、以下のことを指摘しています。①クラスの規模を小さくする。②4技能指導になじみのない教師に研修機会や授業準備の時間を与える。③教員養成の段階で指導力を育てる。いずれもお金と時間がかかる政策ですが、高校の授業においても、時間をかけて少しずつ改善をしていく必要があります。
 文部科学省は公立中高の英語教育に関する調査を公表しています。2017年度の中学3年で英検3級以上の英語力を持つ生徒は40.7%、高校3年で準2級以上の生徒は39.3%となっています。両方とも目標の50%には届いていません。何故子供たちは英語の4技能を学ぶ必要があるのでしょうか。それは大学入試を利用するしないに関わらず、グローバルなこの社会で活躍するために、多様な人々と協働できる能力を身につけるために、必要と思われる技能だからです。

(校長室より)  武井壮(11/25)

 百獣の王、武井壮氏に注目しています。武井氏はTVタレントとして活躍していますが、その経歴や発言は、様々なメディアにとりあげられ、誰もが武井氏を認め、そして他の人に勇気を与える存在になっています。
武井氏は、中学で野球、高校でボクシングに取り組んでいましたが、大学時代に短距離走を始め、大学3年次に十種競技に転向します。大学卒業後、第81回日本陸上競技選手権大会十種競技において優勝します。100m走ベスト記録の10秒54は、2015年まで十種競技・100mの日本最高記録でした。
 卒業後は陸上をやめ、プロゴルファーやプロ野球選手を目指しましたが、2003年(30歳)のころから芸能活動を始めました。当初はタレントとしてなかなか売れず、2004年から2013年まで家なし生活をしていました。武井氏は、売れているタレントや芸人さんは何故面白く、たくさんの仕事に恵まれているのかを、その話術や生活態度等を中心に一生懸命に研究したそうです。

 11月20日付毎日新聞の赤坂電視台の欄に、武井壮氏の発言が掲載されていますので一部紹介します。
「毎日3時間、自分自身をアップデートしています。体力トレーニング1時間、知らないことの勉強1時間、楽器やゲームなど未経験の技術習得1時間が日課で、忙しくても必ず続けています。その理由は、昨日テレビに写った自分はもう消費された自分。それと同じ体力と知識と能力のまま、翌日カメラの前に立つのが嫌なんです。少しでも成長した自分をお見せすることが、視聴者の皆さん、スタッフ、番組関係者など、今の僕に大きな価値を与えてくれている方々への恩返しだと思っています。」
 武井氏は、SNSでこんなことも言っています。
「オレは鍛えるのが好きなんじゃなくて成長するのが好きなんだ。その手段として鍛えるってのがひとつあるからやる。それ以外も成長できるならなんでもやってやる。成長は1番の娯楽だ。」「誰かに楽しんでもらわなきゃ価値がないと気付いてから少しずつ成長できたと思う。」
 武井氏の言葉は、多くの人を勇気づけます。

(校長室より)  ヨーヨーで世界つかむ(11/20)

 11月18日付日本経済新聞の「先輩に聞く」欄に、ヨーヨーパフォーマーのBLACKさんが紹介されました。BLACKさんは、世界的サーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」への出演を志し、会社員の職をなげうって日本を飛び出しました。ヨーヨーとカタカナ英語を武器に夢を実現し、その活躍ぶりは2020年から始まる小学生向け英語教科書で「世界に活躍する日本人」として紹介されています。
 BLACKさんは、青山学院大学在学中にヨーヨーの世界チャンピオンになります。大学卒業後、システムエンジニアとして就職しましたが、毎日終電で帰るような仕事で、肉体的にも精神的にもつらい日々が続いたそうです。なんとかこの状態から抜け出し、自分に自信を与えてくれた、ヨーヨーによるパフォーマーへの夢を捨てきれず退社し、シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けます。26歳からバレエを始め、体を滑らかに動かす技術を習得することで、芸術性の向上に努め、無事にオーディションに合格します。
 BLACKさんは、中学生の時にヨーヨーと出会い、練習すれば上達するということがとても嬉しく、学校が終わるとすぐに家に帰り、壁を傷だらけにして1日6~8時間練習に没頭したそうです。BLACKさんは夢中になれるものを中学生の時に発見し、紆余曲折はありながらも、それを現在の仕事にすることに成功しました。

 この記事は最後にこのように述べています。
「チャンスはたまにしか訪れず、待っている時間のほうが断然長い。人生が前に進まず止まってしまっているように感じることもある。それでも自分は何に幸せを感じるか。どんな日々を過ごしたいのか、ということを明確にイメージできれば、周りから愚かな選択だと言われようとも、人生の選択に迷わないはずだ。」

(校長室より)  読書の意義(11/8)

11月4日付日本経済新聞に、文字・活字文化のありかたを考えるシンポジウム「スポーツが開くことばの世界」についての記事が掲載されました。10月3日に開催されたこのシンポジウムには、元陸上選手の為末大氏、作家の堂場瞬一氏、慶応義塾大学教授の今井むつみ氏がスポーツと読書の関係について話しています。その中で、読書の意義について、このように述べています。
今井氏「読書を介して、書いてあったことを覚えている必要はありません。昔読んだ本で、わくわくした感じは覚えている。知識が豊かになることが一番ではなくて、やはり過程が大事なのかなと。結果として一人ではできないような物の見方ができて世界が広がる。そこが大きいと思います。」
為末氏「僕は、高校、大学、会社まで陸上で入りました。ほかの教科はひどかったですが、国語はすごく好きでした。結局、考えることは全部読書でやったような気がするんです。(中略)大量の考えが書かれた本を読むことで多面的な主観を持つことができ、それが擬似的な客観になっているのではないでしょうか。」 
堂場氏「僕は共感できない人が出てくる本が好きです。それは自分が知らないものを教えてくれるから。嫌なやつだけどこういう見方もあるんだなだとか、何でこんな嫌なことをしたのだろうかと行動の心理を読むとか、【非共感】の部分を経験できるのが読書じゃないかと思います。」
読書は、スポーツ選手に限らず、各個人が持っている世界を広げる力があると思います。
そして読書は知識のインプットになりますが、この知識や感動をアウトプットする方法があります。それが「ビブリオバトル」です。10月26日に群馬県内の高校生によるビブリオバトル大会が、群馬県立図書館にて開催されました。1人5分の持ち時間で本を自由に紹介した後、来場者からの質疑に答え、来場者が一番読みたくなった本に投票するというものです。本校からも2名参加しました。2人とも明るい笑顔で選んだ本の魅力を、身ぶり手ぶりを交えて伝えることができました。あなたもこのビブリオバトルにチャレンジしませんか。

(校長室より)  人生の「正解」(10/31)

 10月25日付け朝日新聞の声(投稿欄)に、兵庫県に住む大学生21歳の文章が掲載されました。タイトルは「私は人生の【正解】がほしい」というものです。一部抜粋します。
「高校までは何に対しても【正解】がありました。教科書の問題は解答ページに、取るべき行動は校則に、他の細かいことはすべて先生が答えをくれました。勉強して、良い大学へ行って、素敵なパートナーを見つけることが、私にとって正しいことだと思っていました。(中略)
 しかし大学や社会に出ると突然、正解のない問題ばかりが降りかかってきます。何が正しいか、何が幸せか、自分で見極めろと言われます。(中略)
 幸せになることが人生の目標だとすれば、目標が何なのかわからない今、どこに向かって歩けばいいのですか。私は人生における【正解】が欲しいです。『こうすれば必ず幸せになれる』と誰かに言ってほしいです。」
 先日、本校で第39回邑楽・館林地区七校合同読書会が開催されました。本校をはじめ7校の生徒が集まり、テキスト:『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜著)、メインテーマ:もしも大事な人や愛する人が、余命幾許もないと宣告されたらどうするか、という内容で活発な議論が行われました。本の中から、人生にとって大切なことは何か、幸せとは何か、という問いの答えが見つかるかもしれません。多くの高校生に本を読んでほしいと思います。

(校長室より)  「女性学のススメ」(10/15)

 10月10日、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏による、上記タイトルの講演が館林市文化会館で開催されました。主催は館林女子高校で、高校生と一緒に講演を聴くことができました。その内容は、女性学とは何か、学問は何の役にたつのか、といった大変興味深いものでした。
 上野氏は「従来、男性が関心を払わず、学問として価値がないと思われてきた【女性】を研究の対象にしてきた。」と自らの履歴を話し、「女性学」は何の役にたつのかと言われながら、女性の経験の言語化と理論化に努めてきたことを説明しました。その成果として、性的な嫌がらせ・からかいが「セクハラ」、つきまといが「ストーカー」などとして認知されてきたことを挙げています。学問とは、今まで誰も研究しなかった分野や、誰も疑問にしていない新たな対象を見つけ、「何故?」という疑問を徹底的に考え抜いた上で発信していく必要がある、として学問の厳しさを述べました。

 また上野氏は今春、東京大学入学式の祝辞で学内での性差別を非難し、合わせて「受験勝者」の社会的責任を説明しています。その一部を紹介します。
「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公平に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。」(中略)「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。」
 社会における女性をはじめとしたマイノリティに対する優しさの欠如を東大生に指摘しています。この祝辞はニュース等で話題になりました。社会的弱者やマイノリティに対する不当な差別をなくすために、教育関係者も差別の事実を認識した上で教育活動をしていく必要があります。

(校長室より)  「よくもそんなことができる」(10/4)

 9月23日、ニューヨークの国連本部で開催された気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16歳)が演説しました。その内容を一部紹介します。
「よく、そんなことができますね。あなたたちは実体のない言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪ったのです。生態系全体が崩壊しています。私たちは、まさに大量絶滅の始まりにさしかかっているのです。そして私たちが語り合うのは、お金や、途絶えることのない経済成長のおとぎ話だけ。」(中略)
「私たちは決してあなたたちを許しません。今ここで、一線を引きます。世界は目を覚まし始めています。変化も訪れ始めています。たとえあなたたちが気に入ろうとなかろうと。」
 怒りに震えたこの5分間の演説は、このサミットに参加した人だけでなく、SNSをとおして、世界中の人々に伝わりました。16歳の彼女が、自分の意見を、世界にむけて発信したことに驚きを覚えました。誰もが自分の意見を発信することができますが、その内容が多くの人に伝わったという点で、大きなことを成し遂げたと思います。彼女の意見に対して、中身がない、勉強不足だ、という反論もありますが、彼女の意見に対して、大人は真摯に受け止めて議論しなければなりません。彼女はまだ成長途中です。彼女の将来が楽しみです。

 『同調圧力』望月衣塑子他著(角川新書)を読みました。この国は同調圧力が強い、それが政府やマスコミの中に存在している、という内容です。この本のあとがきに、こんな言葉がのっています。「他人の期待に沿うための人生ではなく、自分がやりたいことをやっておけばよかった。」 自分の意見をもつことは重要です。他人や周囲の考え方に振り回されるばかりでは、自分の人生を主体的に生きることは困難です。自分のやりたいことは何なのか、自分の意見は何なのか、しっかり考えてほしいと思います。

(校長室より)  「授業動画」(9/27)

先日、「Find!アクティブラーナー」という、webページのことを書きました。このページでは会員になると2000以上の授業、講義、講演をみることができます。この動画は、保護者や教員等教育に関係する社会人用のものと考えられますが、児童生徒用授業動画はさらに進んでいます。
9月27付読売新聞に、「授業動画で受験勉強」という記事が掲載されました。記事によれば、学校外の勉強などで、スマートフォンのアプリやインターネットを利用した民間の学習サービスが広がってきているとのことです。都合のいい時間に授業の配信動画を繰り返し見たり、講師にオンラインで遠隔指導を受けたり、スタイルは様々です。記事では徳島県の私立高校に通っていた高校生が、今春早稲田大学政治経済学部に合格した事例が掲載されているので紹介します。
「受験勉強で頼りにしたのは、教育アプリの【スタディサプリ】だ。月額980円(税別)で5教科18科目の授業動画計約4万本(1本15分程度)が見放題になる。(中略)現代文や英語、日本史の授業動画を繰り返し見ることで「基礎固め」ができ、高校で受ける模試で自分の課題を見つけた。『わからないところは何度も授業動画で確認した。有名講師による授業はポイントが押さえられ、理解しやすかった。』(中略)この教育アプリは、大学受験生のほか、小中学生や社会人向けの授業動画もあり、全体の有料会員(昨年度)は約84万人に上る。」

予備校の衛星中継による授業や授業動画は以前からありましたが、このように自分の学力や目的に合わせて、様々な授業動画がみられるこのサービスはこれからも増加していくと考えられます。個々の進度に応じた学習を効率的にできる利点はありますが、児童生徒の自己管理能力も問われることになります。
こうした個々に合わせた講義形式の授業を児童生徒がみられるようになると、学校の授業はどうしたらよいでしょうか。答えはすでにでています。知識をインプットするだけではなく、その知識をどう使うのか、どのようにアウトプットするのか、書いたり話したり議論したり、能動的な活動を取り入れて、講義だけでは得られない思考力・判断力・表現力、あるいは主体性をもって、多様な人々と協働できる能力を身につけることができる、そんな授業が必要となります。

(校長室より)  「空気」を読んでも従わない(9/20)

岩波ジュニア新書で、鴻上尚史氏の著書を読みました。
「どうしてこんなに周りの目が気になるの?」
「どうしてこんなに先輩に従わないといけないの?」
「どうしてこんなにラインやメールが気になるの?」
「それはあなたが弱いからではなく、すべて理由があります。そのヒミツを知れば、あなたはうんと生きやすくなるでしょう。」
鴻上氏はまず、「世間」という言葉を説明します。「世間」とは、あなたと現在または将来、関係のある人達のことです。「社会」という言葉はその反対語で、あなたと現在または将来、何の関係もない人達のことです。「世間」に属する人達を親しく感じ、「社会」に属する人達には距離を感じるということです。
次に、外国の話になります。ほとんどの外国には「世間」はありません。欧米をはじめとしたほとんどの外国は、「社会」しかありません。つまり自分が知っている人達と知らない人達を分けないのです(中略)。外国の人が、人の頼みをにっこり笑って断れるのは、「社会」にずっと生きているからです。「社会」に生きる相手は、自分の都合で頼みごとをしてくると知っています。だから、いちいち、断ることを申し訳ないと思う必要がないのです。ですから、あなたが人の頼みをなかなか断れないのは、あなたが弱いからではないのです。
この後は、相手が世間なのか、社会なのかを判別する。空気を読んでも従う必要はない。年上がエラいとは限らない。世間はイケニエを必要とする時がある。世間はなかなか変わらない、などの記述が続きます。世間という日本的な考え方を理解すると、世界の国々のように、「世間」や「社会」に身をまかせないで、戦う必要があることがわかってきます。
最後の方で、このような記述があります。
この国は同調圧力が強い国です。同調圧力に負けないでちゃんと生きていくためには、知恵をつけることです(中略)。あなたの「世間」や「空気」との戦いを心から応援します。自分の人生を決めるのは、自分であって、「他の人がどう評価するか」ではないからです。

(校長室より)  「イチロー選手」(9/12)

9月3日付、内外教育(時事通信社)のラウンジ欄に、イチロー選手のことが掲載されました。「野球の魅力とは?」という質問に、このように答えています。
「団体競技なんですけど、個人競技なんです。それが面白い。個人としても結果を残さないと生きていくことはできない。本来はチームとして勝っていけば、チームのクオリティは高い。でも決してそうではない。あとは同じ瞬間がないこと。必ずどの瞬間も違う。これは飽きが来ないですね。」
この回答を聞いて、筆者は、教職にもあてはまると感じたそうです。
「教職は学校という場を舞台とした組織専門職であると考えてきた。しかし、普段の教育活動は、教室を場とした個人の営みであるとも考えられる。(中略)同じ学年に同じ単元を教えても、教室で繰り広げられる状況に同じ瞬間はない。よい授業をしようと思えば、不断の相違工夫が求められ、教職は生涯、試行錯誤の繰り返しである。常に自分との闘いをしてきたに違いない名選手の一言は、心にストンと落ちた。」
話は変わりますが、先日、河合塾が主催する「対話のひろば、第6回イベント」に参加しました。今回のテーマは、「対話を通して、思考力・判断力・表現力を測る問題をつくろう!-地理編-」というものです。参加者は、高校教員のほかに、文部科学省の教科調査官、大学教授、塾の教員等様々な職にある方で、40人が集まりました。第一部は河合塾講師の佐藤裕治先生が、地理の入試問題を紹介しながら、問題作成のポイント等について解説していただきました。第二部は、集まった先生方がいくつかの素材をもとに、グループで問題作成にチャレンジしました。地理を専門としている先生方が集まり、いい問題とはなにか、学力の識別力があるか、独自性はあるか等々、議論を重ねることができました。よい授業、よい問題を作成するために、全国の先生方が頑張っている様子をみることができ、刺激を受けました。まさに教員という仕事は、生涯、試行錯誤の繰り返しであることを実感した、楽しいイベントでした。

(校長室より)  「新入生の窓口相談AIで」(9/9)

9月2日付日本経済新聞の教育欄に、上記タイトルの記事が掲載されました。芝浦工業大学が新入生の窓口相談を効率化するために、スマートフォンで質問を送れば人工知能(AI)が自動応答するシステムを開発したそうです。村上雅人学長は、このように述べています。
「最近は、AIの発達でチャットボットと呼ばれる対話型回答システムが登場している。学生が日常的に使っているスマートフォンなどで簡単なキーワードを入力すれば、最適な情報またはそのアクセス方法を自動応答で得られる。窓口で繰り返される単純な質問は、チャットボットで解決できるのではないかと考えた。(中略)今年3月にチャットボット【SIT-bot】が完成、4月から実際にLINEを使って窓口業務に投入した。導入2ヶ月で1万件を超える質問が寄せられ、学生の評判は上々である。(中略)SIT-botの導入で、単純作業は機械に任せ、教職員はより創造性の高い仕事に取り組めるようになった。さらに、蓄積される学生からの質問は、学生の要望や知りたいことを把握する上で極めて参考になり、これを分析すれば、さらなる業務改善や学生サービスの充実につながるはずだ。」
 上記の内容は、「AI」が労働者(教職員)と共存していることを示しています。ビッグデータの処理能力という点で、人間はAIにはかないません。単純作業にも音をあげません。これからの子どもたちは、将来このような「AI」と共存して働くことになります。データ処理や単純作業はAI(機械)にまかせ、創造性の高い仕事や、困難な課題に取り組める人材を、これからの社会は必要としています。

(校長室より)  「平塚農業高校」(9/2)

 8月19、26日の2週にわたって、日本経済新聞の教育欄に神奈川県立平塚農業高校園芸科学科がとりあげられました。抜粋して紹介します。
「この日収穫する野菜や果物は約10種類。それぞれに大きさや色の濃淡を見ながら、収穫のタイミングを探る。校内で開く市場で販売するため、見定める表情も真剣だ。『これ大きいよねー』取ったばかりのピーマンを見せ合うと笑みがこぼれた。」(8/19)
「梅雨の時期は虫がつきやすく、無事に実らせるまでが大変だ。(ビワの収穫では)うっかり落とさないよう注意が要る。丹精込めて育てた農作物を『おいしい』と言って食べてもらえると、農業に就きたい思いが強くなる。」(8/26)
 本校農業科の生徒たちも、夏休みの期間中、担当を決めて実習を行い、農作物を、丹精込めて育てています。農作物の生育に夏休みはありません。本校では、春に続いて、秋にも【泉農フェア】が実施されます。丹精込めて育てた農作物で、地域の人々に喜んでもらおうと、生徒たちは今日も授業・実習に取り組んでいます。

(校長室より)  「アクティブラーナー」(8/27)

 「双方向型学習へ転換を」、8月19日付日本経済新聞で総合研究大学院大学学長の長谷川真理子氏はこのように主張しています。
「これまで、日本の大学の授業といえば、週に1回、90分の講義を通年で行うというのが普通だった。たいていは大人数の講義である。まずはこれを変えるべきだ。質問と討論による、教員と学生との間、また学生同士の間のより密接な相互作用が必要である。(中略)18歳人口の半分が大学に進学するようになれば、学生の知的レベルにはかなりの幅ができよう。それでも、どんなレベルの学生であれ、高校までの受動的な学習を転換し、自分で調べて考え、議論する、という態度を身につけることはできるはずだ。それによる到達点は、学生によって異なるだろうが、そのように主体的に考えるという環境は、すべての大学生に与えられるべきであり、大学で過ごした人間はそこが違うという付加価値が見えるようになるはずだ。」
長谷川氏の指摘する双方向型学習とは、新学習指導要領でも取り上げられている、アクティブ・ラーニングの視点をもった授業(学習)のことであり、「主体的・対話的で深い学び」のことです。高校においても、このような学習は必要とされています。具体的にはどのような授業(学習)なのでしょうか。実際の授業をwebページで見ることが可能です。
数年前から「Find!アクティブラーナー」という、webページの会員になりました。このwebページでは、「生徒の主体性を引き出したい全ての教員・親の皆様に、授業動画・ニュース・教材を提供する、日本で唯一のプラットフォームです。」と紹介されています。このページでは2000以上の授業・講義を見ることができ(会員のみ、一部無料コンテンツあり)、その数は日々増え続けています。このサイトの理念は、「すべての子どもたちをアクティブラーナーに」というものです。ぜひこの動画を多くの先生方や保護者の方に見てほしいと思います。
(参照webページ https://find-activelearning.com/ )