2019年10月の記事一覧
(校長室より) 人生の「正解」(10/31)
10月25日付け朝日新聞の声(投稿欄)に、兵庫県に住む大学生21歳の文章が掲載されました。タイトルは「私は人生の【正解】がほしい」というものです。一部抜粋します。
「高校までは何に対しても【正解】がありました。教科書の問題は解答ページに、取るべき行動は校則に、他の細かいことはすべて先生が答えをくれました。勉強して、良い大学へ行って、素敵なパートナーを見つけることが、私にとって正しいことだと思っていました。(中略)
しかし大学や社会に出ると突然、正解のない問題ばかりが降りかかってきます。何が正しいか、何が幸せか、自分で見極めろと言われます。(中略)
幸せになることが人生の目標だとすれば、目標が何なのかわからない今、どこに向かって歩けばいいのですか。私は人生における【正解】が欲しいです。『こうすれば必ず幸せになれる』と誰かに言ってほしいです。」
先日、本校で第39回邑楽・館林地区七校合同読書会が開催されました。本校をはじめ7校の生徒が集まり、テキスト:『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜著)、メインテーマ:もしも大事な人や愛する人が、余命幾許もないと宣告されたらどうするか、という内容で活発な議論が行われました。本の中から、人生にとって大切なことは何か、幸せとは何か、という問いの答えが見つかるかもしれません。多くの高校生に本を読んでほしいと思います。
(校長室より) 「女性学のススメ」(10/15)
10月10日、社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏による、上記タイトルの講演が館林市文化会館で開催されました。主催は館林女子高校で、高校生と一緒に講演を聴くことができました。その内容は、女性学とは何か、学問は何の役にたつのか、といった大変興味深いものでした。
上野氏は「従来、男性が関心を払わず、学問として価値がないと思われてきた【女性】を研究の対象にしてきた。」と自らの履歴を話し、「女性学」は何の役にたつのかと言われながら、女性の経験の言語化と理論化に努めてきたことを説明しました。その成果として、性的な嫌がらせ・からかいが「セクハラ」、つきまといが「ストーカー」などとして認知されてきたことを挙げています。学問とは、今まで誰も研究しなかった分野や、誰も疑問にしていない新たな対象を見つけ、「何故?」という疑問を徹底的に考え抜いた上で発信していく必要がある、として学問の厳しさを述べました。
また上野氏は今春、東京大学入学式の祝辞で学内での性差別を非難し、合わせて「受験勝者」の社会的責任を説明しています。その一部を紹介します。
「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公平に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったことを忘れないようにしてください。」(中略)「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。」
社会における女性をはじめとしたマイノリティに対する優しさの欠如を東大生に指摘しています。この祝辞はニュース等で話題になりました。社会的弱者やマイノリティに対する不当な差別をなくすために、教育関係者も差別の事実を認識した上で教育活動をしていく必要があります。
(校長室より) 「よくもそんなことができる」(10/4)
9月23日、ニューヨークの国連本部で開催された気候行動サミットで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16歳)が演説しました。その内容を一部紹介します。
「よく、そんなことができますね。あなたたちは実体のない言葉で、私の夢を、私の子ども時代を奪ったのです。生態系全体が崩壊しています。私たちは、まさに大量絶滅の始まりにさしかかっているのです。そして私たちが語り合うのは、お金や、途絶えることのない経済成長のおとぎ話だけ。」(中略)
「私たちは決してあなたたちを許しません。今ここで、一線を引きます。世界は目を覚まし始めています。変化も訪れ始めています。たとえあなたたちが気に入ろうとなかろうと。」
怒りに震えたこの5分間の演説は、このサミットに参加した人だけでなく、SNSをとおして、世界中の人々に伝わりました。16歳の彼女が、自分の意見を、世界にむけて発信したことに驚きを覚えました。誰もが自分の意見を発信することができますが、その内容が多くの人に伝わったという点で、大きなことを成し遂げたと思います。彼女の意見に対して、中身がない、勉強不足だ、という反論もありますが、彼女の意見に対して、大人は真摯に受け止めて議論しなければなりません。彼女はまだ成長途中です。彼女の将来が楽しみです。
『同調圧力』望月衣塑子他著(角川新書)を読みました。この国は同調圧力が強い、それが政府やマスコミの中に存在している、という内容です。この本のあとがきに、こんな言葉がのっています。「他人の期待に沿うための人生ではなく、自分がやりたいことをやっておけばよかった。」 自分の意見をもつことは重要です。他人や周囲の考え方に振り回されるばかりでは、自分の人生を主体的に生きることは困難です。自分のやりたいことは何なのか、自分の意見は何なのか、しっかり考えてほしいと思います。