校長室より

(校長室より)  「主体的に学ぶ」(8/20)

 7月、主体的に生きてほしい、という話を生徒たちにしました。8月12日付日本経済新聞の池上彰氏のコーナー「若者たちへ(池上彰の大岡山通信)」で、「主体的に学び、自ら発信」というテーマの記述がありましたので、その一部を紹介します。
「ユニークだったのは授業のあり方に関する発表でした。【主体的に参加するには】【どうすれば面白くできるか】という問題定義がありました。(中略)ある学生は、課題を克服するために【授業で質問しよう】と提案しました。きっかけは【パックン】の愛称で知られるパトリック・ハーラン氏の講義を受講したことです。対話を通じて新たな発見が生まれ、授業が面白くなったといいます。一方的に教えられるのではなく自ら講義に参加してつくっていくこともできます。これぞ大学の学びの姿勢です。」

 この文章は、池上氏が数年前から勤めている東京工業大学にて、7月に開かれた教養卒論発表会を取り上げています。池上氏が東工大に着任したころは、学生は自分の考えを人前で伝えたり、他人とコミュニケーションしたりすることが苦手だったようです。この数年で明らかに変わったといいます。
本校においても、「主体的・対話的で深い学び」ができるような授業や実習を目指しています。生徒たちは、主体的に生きることと同時に、主体的に学ぶ手法を身につけ、自ら発信できる力を手にいれてほしいと思います。

(校長室より)  山(8/9)

8月4日付朝日新聞の投書欄のテーマは、「山」でした。「両親に教わったすばらしさ」というタイトルの文章を一部紹介します。
「山好きだった父のおかげで、子供の頃の夏の旅行は、家族で3、4泊の日本アルプスの山歩きだった。(中略)成人してからは、仕事の合間に百名山を目指すほど熱中した。今は子供と日帰りハイキングに行く程度になったが、山のすばらしさを教えてくれた両親には、本当に感謝している。」
私も、毎年夏に登山をしています。富士山や磐梯山、那須岳、燕岳、雲取山、常念岳など、百名山を目指しているわけではありませんが、登山を楽しんでいます。この投稿欄にはこんな文章もありました。
「10年ほど、東京の高尾山に登っている。初めの数年は、夫と一緒に紅葉の頃に登った。きつかったけど、ダイエットに成功したら、楽になった。近年は混雑する前の10月くらいに、一人で行く。目的は体力検査だ。」
登山をする目的は、人によって違います。家族旅行、百名山、体力検査等々、多くの人々が登山を楽しんでいます。何度登っても登山はきついですが、疲れても、疲れても、また登りたくなります。この夏も山に登り、英気を養いたいと思います。

(校長室より)  知らない世界を知ること(8/5)

7月28日付朝日新聞に、「千葉大【全員留学】を義務づけへ」というタイトルの記事が掲載されました。
「来春から千葉大が、入学者全員に【海外留学】を必修とすることを決めた。授業料も値上げする。【全員留学】は一部私立大学や国際系学部では広がりつつあるが、同大によると、国立大が大学院を含め全学で義務づけるのは初めて。」
【全員留学】は、国際教養大(秋田市)や早稲田大国際教養学部など、国際系の新学部や一部私大でも始まっています。ある大学では、新入生の入学式の日に、短期留学できる旅行の準備(荷造り)をさせて、入学式終了後すぐに海外留学に出発させるようです。千葉大学の小沢副学長は、「千葉大が今進めている教育改革の最大の目標はグローバルな社会で生きていける人材を育てること。その環境整備の柱の一つが全員留学です。在学中に最低1度、2週間から2ヶ月間、まずは海外をみて考えてほしい。」と述べています。
 本年2月、文部科学省で開催された「トビタテ!留学JAPAN」第4回留学成果発表会を参観してきました。そこでは大学生の他に高校生の発表もありました。彼らは、回りに日本人が誰ひとりいない環境に放りこまれ、言葉の壁に悩み、数日間は挫折を味わいます。しかし、このままでは何も得られないと開きなおり、何がわからないかをホストファミリーや先生や他国の学生達たちに問いながら、少しずつ自分の意見を伝えられるようになっていきます。海外では自分から前にでて積極的に発言しないと、誰も助けてくれないし、何も教えてくれません。語学力や異文化理解力だけでなく、挑戦する力やコミュニケーション力、積極性などを手に入れます。そして何よりも素晴らしいのは、彼らが同年代の海外の若者と交流し協働することで、様々な刺激を受けて将来の夢につなげていくことです。人生には多様な選択肢があることを知るきっかけになります。
留学が難しければ、ボランティアや地域貢献でもかまいません。知らない世界を知ることで、その後の人生に大きな影響を与えるはずです。
多くの高校生、大学生に海外などの未知の世界に飛び出してほしいと思います。

(校長室より)  「7つの習慣」(7/30)

今回は、本の紹介をします。タイトルは「7つの習慣」(ティーンズ)、ショーン・コビー著作です。この本の元になっているものは、スティーブン・R・コビー氏の著作「7つの習慣」で、全世界で販売部数3000万部を記録した本であり、20世紀に最も影響を与えたビジネス書の1位に輝いています。これは、そのビジネス書を、中学生~高校生向けにわかりやすくしたもので、「7つの習慣」を様々な生活シーンの中で取り入れることで、将来に向けた正しい「選択」ができるように書かれたものです。
7つの習慣とは、①主体的になる、②終わりを考えてから始める、③一番大切なことを優先する、④Win-Winを考える、⑤まず相手を理解してから、次に理解される、⑥シナジーを創り出す(チームで協働して結果を出す)、⑦自分を磨く、となります。これら一つ一つについて、自分、親、友達、学校の先生等、それぞれと関わる場面を具体的にふれながら説明がなされます。今回は、この本で指摘されている2つの視点を紹介します。
1つ目は、自己信頼口座(残高)という視点です。これは、第1の習慣に入る前に、私的成功を勝ちとる方法として紹介されています。自分自身を信頼するために何をすればいいのでしょうか。①自分に約束したことを守る、②小さな親切をする、③自分に優しくなる、④正直になる、⑤自分を再新再生する(自らをリフレッシュし、生まれ変わらせる)、⑥自分の才能を開発する、これらを実行すれば自分自身への信頼残高を増やすことができます。ちなみにこの残高を減らす行為は、自分に約束したことを破る、内にこもる、自分を痛めつける、嘘をつく、自分をすり減らす、自分の才能をないがしろにする、となります。
2つ目は、人間関係信頼口座(残高)という視点です。これは、第4の習慣に入る前に、公的成功を勝ち取る方法として紹介されています。他人からの信頼を得るために何をすればいいのでしょうか。①約束を守る、②小さな親切、③誠実、④人の話に耳を傾ける、⑤謝る、⑥見通しをはっきりさせる、これらを積み重ねれば、信頼を得ることができます。他人からの信頼を失う行為は、約束を破る、人と関わらない、うわさ話と裏切り、人の話をきかない、横柄な態度をとる、物事をうやむやにする、となります。
多くの中学生、高校生に本書を読んでほしいと思います。

(校長室より)  「主体的に生きる」(7/23)

7月19日(金)1学期終業式にて、私から2点ほど生徒に話をしました。
1つめは、命と時間の話です。私は、本年1月、前任校に勤務していましたが、ある朝、小学部の児童が自宅で亡くなりました。朝、お母さんが気づいた時にはすでに亡くなっていたそうです。彼女は障害をもっていましたが、1~2学期はほとんど休まず元気に学校に登校していました。学校が大好きでした。彼女の人生は11年間でした。時間にすると約10万時間です。みなさんがもっている命(時間)は、あと何時間ありますか? たとえば、明日、命を失うと仮定すると、残りの人生はあと24時間程度です。30日後に命を失うと仮定すると、720時間ありますが、3分の1は寝ていますからあと480時間程度です。平均寿命というのがありますが、あくまで平均なので、みなさんがもっている残りの時間は誰にもわかりません。そして死ぬまでの時間は確実に減っていきます。時間を無駄に過ごすことは、命を無駄にすることと同じです。3年生は進路実現のため、夏休み39日間、1日1日が重要な時間となりますが、同様に1・2年生にとっても時間(命)を大切に使ってほしいと思います。
2つ目は、主体的に生きてほしいということです。この言葉は言い換えると、自分の道は自分で決めて生きる、ということです。あなたの未来は、誰が決めるのでしょうか。友達、両親、学校の先生でしょうか。自分の進むべき方向が明確でないと、まわりの人と同じような選択をすることが多くなります。まわりの人が正しい行き先を知っているのでしょうか? 先のことなんて、誰にもわかりません。人と同じことをやっても、あなたに合う保証はありません。20歳のとき、30歳のとき、どんな未来が待っているかなんて、誰にもわからない。だから、どの道が自分にとって一番いいか、自分で判断して、自分の道を決めてほしい。もし決まっていなければ、この夏、徹底的に考えてください。残された時間は限られています。残された時間は、確実に減っていきます。限られた命、限られた時間を大切にして、自分の進むべき道を考えてほしいと思います。

「教える」を学ぶ(7/8)

7月1日(月)に太田市立休泊小学校における、生物生産科の「草花栽培交流」が行われました。またグリーンサイエンス科は学校付近の幼稚園のこどもたちと、6月のジャガイモほり、11月のサツマイモほりが予定されています。他にも食品科学科のパン作りなど、太田市内の中学校、館林特別支援学校、太田高等特別支援学校との交流も予定されています。
このような交流は、本校の生徒が普段学んでいる知識・技術をどのように伝えるか、ということを主眼としており、資材の準備や会場設営、司会進行、技術支援等を生徒が主体となって行っています。
6月23日付朝日新聞の教育欄「いま子どもたちは」のコーナーで、高校生「教える」を学ぶ、と題して特集が掲載されています。京都市立塔南高校の2007年にできた教育みらい科の生徒は、近隣の小学校を訪ねて授業を行うそうです。ある生徒はこんな感想を述べています。「自分がよく知っていることでも、知らない人に教えるのは本当に難しい。授業本番までにいろんなことを学んで工夫しないと」
アメリカ国立訓練研究所の研究によれば、平均学習定着率がラーニングピラミッドに表現されています。これによれば、講義を受ける5%、読む10%、視聴する20%、実演してもらう30%、議論する50%、自分で体験する75%、他人に教える90%、となります。他人に教えることは、学んだことを定着させる最高の方法となります。
 本校生徒も、本校で学んだ知識・技術を他者に教えることを通じて、知識・技術を定着させると同時に、自分たちで協働して考える力を身につけてほしいと思います。

(参考、ラーニングピラミッド)


(校長室より)  「マンダラチャート」(6/27)

6月14日付内外教育(時事通信社)で、曼荼羅図を使った目標管理が紹介されました。曼荼羅図とは平安密教で宇宙の真理を表す仏の配置図のことですが、この図を、大リーグのエンゼルスで活躍している大谷翔平選手が、高校1年生の時、野球部監督のアドバイスを元に活用しました。
 これは目標管理シート、通称「マンダラチャート」と呼ばれます。大谷選手の場合は、中央に「ドラフト1位8球団」という最終目標を置きました。その周囲に8つの中目標を置きます。具体的には①からだ作り、②コントロール、③キレ、④メンタル、⑤スピード160キロ、⑥変化球、⑦人間性、⑧運、というものです。「人間性」や「運」を中目標においていることに驚きました。さらに8つの中目標に具体的な行動目標を位置づけます。「運」における具体的な行動目標は、あいさつ、ごみ拾い、部屋掃除、道具を大切に使う、審判さんへの態度、プラス思考、応援される人間になる、本を読む、の8つです。誰もがいますぐできる行動目標ですが、それを運に結びつけている大谷選手の人間性を垣間見ることができます。
遠大な目標は達成が難しいですが、今すぐできる身近な行動目標をクリアして、満足度を高めながら、大きな目標に近づいていく、大谷選手はこのようにして、夢を実現しています。
本校は、「地域社会に貢献できる人間を育成する」という教育目標を実現するため、どのような資質・能力を身につけさせるかといった具体的な指標「グランドデザイン」の作成を検討しています。同様に、この大泉高校版「マンダラチャート」を試作してみようと考えています。みなさんも、目標を達成するために、「マンダラチャート」を作成してみてはいかがでしょうか。
(マンダラチャートについては、以下のページを参照してください。)
http://u-note.me/note/47502826

(校長室より)  「学び直し」(6/19)

前回、「自己教育力(学び続ける力)」について述べました。今回は「学び直し」について述べたいと思います。
日本経済新聞に、テレビでも活躍している池上彰氏の【池上彰の大岡山通信】が毎週月曜日に掲載されています。6月17日「学び直しが育む」というタイトルで池上氏はこんなことを述べています。

「最近、社会人の学び直しなどを意味する『リカレント教育』が話題になっています。私たちは何歳になっても、学ぶ意欲があれば、新しい世界や仕事の機会を広げられるでしょう。(中略)いま、ジャーナリストとしての活動の傍ら、東京、名古屋、長野の大学を中心に講義を受け持っています。大教室を眺めていると、何人ものシニア層の学生を見かけます。若者たちと一緒に、朝からメモを取る姿も珍しくなくなってきました。」

 中学生や高校生たちにとって学ぶことは、つらいこともあるのではないかと思います。しかし社会人になり働きはじめてからも、学び直すこと、学び続けることは必要です。業務に必要な資格試験や語学の習得が必要になることもあります。さらに予測困難なこれからの時代に、学ぶことをやめてしまったら、時代に取り残されるだけでなく、自分が知っている狭い世界に閉じこもり、人生をつまらないものにしてしまうかもしれません。
 生徒たちにも、学び直すこと、学び続けることの大切さを教えていきたいと考えていますが、われわれ大人たちも、学び直すこと、学び続けることを実践しなければなりません。池上氏はこんなことも述べています。
「学ぶことは自分の知らない世界を知り、自らの人生を広げてくれるきっかけになるということです。何歳になっても、好奇心を持ち続けられれば、きっと心の若さをもたらしてくれるでしょう。」

(校長室より)  「自己教育力」(6/3)

現在本校では、教育目標や教育課程の編成についての基本的な方針を、地域の方々や保護者と共有するために、グランドデザイン(教育目標や育成を目指す資質・能力など学校教育活動全般の構想を示したもの)の策定を検討しています。その中で、生徒に身につけさせたい資質・能力のひとつに、「自己教育力(学び続ける力)」というものをとりあげたいと考えています。

近年様々な著作やメディアでの発言で話題を呼んでいるメディア・アーティスト落合陽一氏は『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』という著書の中で、こんなことを述べています。
「学び続ける上で大切なのは、【自分は何かを知らない】ことを常に理解することです。今、自分が知っていることは絶対ではなく、他の人のほうが 正しいことを言っているかもしれない、という前提に立って思考することです。自分の専門も含めて、どの分野に対しても【自分は何かを知らない】【だから、もっと学ぼう】という意識を持ち続けることです。(中略)
自分が正しいと思っていることは、次の日には変わっているかもしれないという意識も大事です。時代が変われば平衡点は変わる。格差社会といわれますが、ゲームの変化点にチャンスはつきものです。(中略)自分の基準をもって、考えはその時代にあっているか、自分のやっていることはこれからの時代に求められているかを考え見極めるということです。」

予測が困難なこれからの時代に求められる教育について、新たな発想を生み出す力、課題を発見し解決する力、困難な状況を乗り越える力は、知識を学ぶだけでは身につきません。生徒自身が、主体的に学び続け、自分たちで答えをみつけていく、こうした自己教育力が、自分の生きがいになり、地域社会の発展に寄与することにつながります。生徒は、自己教育力(学び続ける力)を身につけてほしいと思います。

(校長室より)  「深い学び」(5/24)

5月17日付け内外教育(時事通信社)に、「深い学びをはじめよう」という東京学芸大学名誉教授児島邦宏氏の文章が掲載されました。一部抜粋して紹介します。

 

「主体的・対話的で深い学び」の中で、主体的な学びや対話的な学びの取り組みは進んだが、深い学びの取り組みは遅々としているようだ。(中略)

学びの結論を学びの過程・脈絡、根拠と結びつけて、それぞれの学びの中で、注意深く、批判的に検討していくことが何より重視される。何が「正解」かは判然とせず、むしろ「なるほどそういうことだったのか」という「納得解」、「これが最もふさわしい」という「最適解」へと導かれる。総合的な学習でその一端を試行したものの、教科横断的な本格的な取り組みは、「深い学び」に始まるといってよい。この未知への決断が、今、促されている。

 

教師が今ある知識を生徒に伝達して、正解がある問いに対して解答する力は与えられますが、新しい未来を切り拓くための正解のない問いに対して、協働して課題を解決する力は身につきません。探究的な学習で、未来につながる、新しい知識や考え方を吸収しながら深く学び、さらに各自の自己教育力を高めることにつながるのだと思います。

本校においても、普通科における総合的な学習・探究、農業科における課題研究等でこのような探究的な学習に取り組んでいます。各教科の学習においても、こうした「深い学び」に結びつくような学習を進めていく必要があります。